タクシー転職に失敗しないための豆知識!

公開日:2024/12/25 21:27

タクシードライバーになってみようと思い立ってみたものの、実際に働きはじめるとどうにも合わずにすぐに退職してしまうケースがあります。タクシードライバーになるためには、二種免許を取得したり、東京都の稼げるエリアで営業するためには地理試験、法令試験を受けたり、各種の研修を受ける必要があります。せっかく、苦労してタクシードライバーになったのに、すぐにやめてしまうと大きな無駄ができてしまいます。この記事では、タクシー転職に失敗しないための豆知識をお届けします。



 運転適正があるかどうかが最重要


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タクシードライバーの仕事は、タクシーを運転し、お客さまにご乗車いただき、目的地まで迅速かつ安全にお届けすることです。タクシードライバーとして稼げるかどうかを考える場合には、どうやってお客さんを見つけるかにフォーカスすることになりますが、すべての基礎は運転です。「タクシードライバーに転職したものの失敗した」という場合、一番どうにもならないケースは運転への適性がなかった場合です。プロレーサーのように特別な技術を求められることはありませんが、運転について求められるハードルは決して低くありません。


まず絶対に必要な適正としては、ちゃんと運転ができることです。まっすぐ進んで、しっかり曲がれることが重要です。そんなことは誰でも当たり前にできるとお思いになるかもしれませんが、運転が荒い、雑、下手ということに関するクレームは少なくありません。つまり、プロのタクシードライバーでも、まっすぐ進む、しっかり曲がるということが出来ていない場合があるということです。急加速、急ブレーキをしてしまったり、左右の車間が甘く、お客さまに恐怖心を与えてしまったりすると、ドライバーとしての評価が下がってしまいます。評価が下がると、クレームが増え、内勤の職員に注意される機会も増えるため、快適なタクドラ生活が送りづらくなってしまいます。


例えば、運転していてカーブに差しかかったとき、客さまに不安を与えないように、横Gをなるだけ発生させないように曲がる必要があります。もちろん、内輪差を考えずに曲がって内側をこすってしまうのは論外です。論外とは言いましたが、日常茶飯事でもあります。というのも、タクシードライバーをしていると、深夜に住宅街の細い路地を走ることはよくあるからです。下町や世田谷区の住宅街には信じられないほど細くて通過が難しい道路もあります。


著者が走ったところでは、ミラーを折りたたんでも左右5ミリずつくらいしか余裕がなかったこともあります。そして、恐ろしいことに帰り道はそこをバックで走らせつつ、交差点へと突入していくことになりました。北新宿の路地では、段々と道が細くなっていってついに通過できなくなり、かなりの長い距離をバックする羽目になったこともあります。こういうケースでいちいち車体をこすっていると営業になりません。


ちなみにですが、ガードレールや民家の壁にこすってそのまま車を出してしまうと当て逃げ」となってしまうので、必ずその場で警察に電話して一報を入れる必要があります。当て逃げは刑事罰を受けるとがあり、危険防止措置義務違反として1年以下の懲役または10万円以下の罰金、報告義務違反は3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金です。また、壁やガードレールなどに破損がみられた場合には、民事で賠償責任を問われることになります。さらに、危険防止措置義務違反として5点、安全運転義務違反として2点が加点されます。7点は1発で免許取り消しです。とはいっても、対物ならまだいいですが、対人の場合にはさらに深刻なことになります。


無事故・無違反はタクシードライバーが絶対に遵守しなければいけないものですが、長時間ハンドルを握っていると不測の事態が訪れることがあります。誰もいない道路で車を走らせることは誰でもできますが、深夜の酔っ払いだらけの狭い繁華街で、歩行者や食品配達の自転車や無理矢理路上駐車している黒塗りの車などを、かわしながら走らせるのは決して簡単ではありません。


路上をスケートボードする人を見つけたり、殴り合いの格闘をしている人たちの横をすり抜けたりする必要があります。「いやいや、そんな難しい運転はできないよ」と思う方もいるかもしれません。著者の場合も最初はそう思っていました。ただ、幸運なことに運転への適性はあったようです。夜の繁華街や、見知らぬ住宅街を走る経験をもっている人は、あまりいないのでらこればっかりはやってみないとわかりません。


中には、夜の繁華街には行かないことを決めるタクシードライバーもいます。売上は稼ぎづらいですが、そのぶん、トラブルも少なくなります。もう一点、長時間の運転に適性があるかどうかも大切です。運転時は集中する必要がありますが、その集中力がどれだけ持続するかが重要になってきます。長距離トラックの場合も長時間運転する必要はありますが、高速道路や幹線道路を直進するような運転が多いです。


方でタクシードライバーは、繁華街や住宅街などの細かい道を運転していきます。このあたりも、どちらに適性があるかの問題です。著者はトラックについては未経験でしたが、タクシードライバーとして街を走っていると、様々な変化に気づけるのが面白いところだと思っています。時間とともに移ろっていく街の表情を見ながら、どうやって車を走らせて売上を考えるのか、そこがタクシードライバーの腕の見せ所です。こういった働き方を楽しめるかどうかも、重要な物差しになることでしょう。


 タクシードライバーは接客業


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「雲助」という言葉があります。これは江戸時代の駕籠かきなどに見られた無法者のことで、要するにぼったくりの運送業のことを指します。かつて、タクシードライバーにも雲助のような人が多く、苦情が殺到する時期もあったと聞いています。態度が悪かったり、運賃を余計に取られたり、あるいは交通マナーが悪かったりしました。しかし、幸いにもこういったドライバーは減ってきています。この点については、タクシー業界が反省したようで、現在では研修に力を入れている会社が多いのです。


単に接客するのではなく「接遇」という用語を使っています。「接遇」というのは、お客さまに対しておもてなしをすることを目指すという意味があり、「接客」の上位概念といえます。大手グループの中には、ホテルマンと同じように、話し方だけではなく、車外でお客さまを待つ場合の手の位置まで指導されることがあります。高齢のドライバーの中には、雲助世代の生き残りのような、煮ても焼いても食えないような強者も残っていますが、若いドライバーは礼儀正しい人が多いです。この点についても、やはり適性が求められます。


タクシードライバーは、お客さまを背中に見ながら会話をしていきます。声が小さくて聞こえづらく感じさせてしまったり、こちらとしては意図していないのにぶっきらぼうに思われたりすることもあります。なので、運転をしているとき以外は全身をお客さまのほうに向けて、しっかり目を見て、受け答えをする必要があります。これが基本なのですが、お客さまのほうにも一筋縄ではいかない方もいます。泥酔して会話がうまくできない方や、突然怒り出す方がいます。2万円近いロングのお客さまだと喜んだのもつかの間、政治関係のネガティブな会話に1時間付き合う羽目になったこともあります。「羽目になった」などと言ってはいけないのですが、タクシードライバーの仕事ではそう思ってしまうこともあります。


政治や宗教の話題は、こちらが意見を言わないようにしつつも、受け答えしなければならないのでなかなか難しいところです。「お客さま、政治の話はやめてください」とぴしゃりといってしまったら、お客さまはきっと怒ることでしょう。場合によってはクレームになるかもしれません。もちろん、こちらも人間なので、あまりにも酷い場合にはやんわりと言うことも必要となるでしょうが、当たり障りがないようにやりすごしつつ、お客さまには快適だと思ってもらえるのが一番です。こういったことを言うのははばかられるのですが、実際の問題としてタクシードライバーに嫌がらせがしたいとしか思えないお客さまもいます。もっとも、そんなお客さまは滅多におらず、1000人に1人もいないと思います。


そして、しっかりと接遇をすれば、トラブルはほとんど生まれません。万一「嫌な思いをした」と感じたときがあったとしても、お客さまを安全に運び、ご降車いただければ仕事はおしまいです。なので、そこは耐えつつ、しのぎつつ、被害を最小限にして終わらせることが必要です。少し極端な例を書きましたが、密室でお客さまと接する仕事なので、色々な経験をします。時には極端な事例もあります。そういったことが一度でもあったらもう駄目、というドライバーもいます。このあたりはある種の人生経験がある人のほうが有利です。


 地図を読むのが好きかどうか


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最後に、もう一つ大切なのが、地図を読むのが好きかどうかです。要するに、道を覚えられるかどうか、ということに繋がってきます。稼げないドライバーは、都心から離れた地元の駅の乗り場に並び続けます。これを「着け待ち」と言うのですが、このルールについてはまた別の機会に解説しています。もっとお客さんがいるところまで行かない理由を聞き取りしてみると、一つには「都心の道が覚えられないから」と言うのです。確かに道を覚えるのは大変です。ナビゲーションシステムがいかに発達していても、最低限の道は覚えていないと営業になりません。特定の駅でだけ営業していれば、その周辺だけ知っていれば事足ります。


しかし、都心で営業する場合は、覚えなければいけない道が格段に多くなります。「都心」と言われているのは、中央区、港区、千代田区の3区です。それに加えて、渋谷区、新宿区なども激戦区です。このあたりでお客さまを見つけると、自宅までお帰りになることがよくあります。ということは、東京の中心部から四方八方に広がっていく道を、すべて覚えなければならないということになります。もちろん、すべての道を完璧に覚えることは、不可能に近いです。


しかし、それに近い状態のドライバーは少なからずいます。最初からすべてを把握するのは不可能なので、お客さまに質問しながら、よく使う道についてはしっかり覚えていくことが必要です。いくつか例を出すと、渋谷のセルリアンタワーの脇を抜けて蛇崩と呼ばれている道へと入っていくルートとか、東京駅八重洲口の地下駐車場から首都高速へ入っていくルートとか、西麻布交差点から表参道のほうまで斜めに抜けていく裏道、などが挙げられます。お客さまに聞く場合にも、聞く態度が重要です。「そんな道は知らないよ、どうやって行くんだよ」などとぶっきらぼうに聞いてはいけません。


ただ、お客さまにヒアリングをすると、そういうタクシードライバーに遭遇したことがあると教えていただけることがあります。「申し訳ございません。わたくし不勉強なもので、抜け道がわからないのですが、教えていただいてもよろしいでしょうか」と丁重に聞けば、大抵の場合は大丈夫です。道を知るのは、一生がかりの仕事とすら言えます。タクシードライバーの場合は、右左折や転回ができるかどうか、どの車線の進行が速いのかなども把握する必要がありますし、取り締まりが多い場所についてもよく把握していないと大変な目にあいます。都心は、交通違反を非常に厳しく取り締まっています。疑問点がある場合や、新しい道を見つけた場合には、すぐに解決していく必要があります。


そこで、最初にお話しした「地図を読むのが好きかどうか」ということが、とても重要になってくるのです。地図を読んでいると、抜け道を見つけたり、大きな会社を見つけて営業ルートが開拓できたりして、問題解決以外にもメリットとなる部分が大きいのです。このように、地理が好きな方にとって、タクシードライバーは非常に面白い職業だと言えます。一方で、「地図なんて見たくない、大嫌い」という方には、タクシードライバーへの転職は失敗のリスクが高いので、あまりおすすめはできないということになるでしょう。


 まとめ


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  • タクシードライバーとは、単に運転するだけの仕事ではなく、お客さまを安全かつ迅速に目的地まで運ぶ接客業
  • タクシー転職には「基本的な運転適性、長距離運転への適性、接遇への意識、地図を読むのが好きかどうか」の4点が重要
  • 特別な技術は必要ないが、お客様に求められるハードルは決して低くない

この記事では、いいことだけではなく悪いことも含めてタクシードライバーの仕事をご紹介しました。酔ったお客さんに絡まれるということは、どうしてもあります。しかし、それは町にとって必要な仕事です。酔ったお客さんは、理性を保てるギリギリの限界を超えて、安全な家へと戻るためにタクシードライバーにお金を払い、命を預けているのです。お客さまとの会話で困ることはありますが、やはりやっていることは人助けです。色んなことがありますが、こちらが恐縮するほど感謝してくれるお客さまに出会えることもあります。酔ったお客さんに色々言われますが、家の前で奥様に感謝されることもあります。お客さまにご乗車いただく仕事なので大変なことも多いですが、とてもやりがいのある仕事です。

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