ハイヤーとは? タクシー運転手との違いとは?

公開日:2024/09/14 00:40


世間一般においてハイヤーとタクシのイメージはまったく違うと思います。ハイヤーのドライバーは黒塗りの高級車VIPを送迎するお仕事なので、ビシッとスーツを着こなし、髪の毛もしっかり固めて、白い手袋をしています。運転手もハイクラスな雰囲気を求められるのですタクシードライバーというと、駅でお客さんを待っていたり、酔っ払いに絡まれながら夜の街で奮闘したりという苦労するイメージがある方も多いでしょう。服装は人それぞれで、個人タクシーまでいれると様々な服装のドライバーがいます


でも実は、必要な免許が同じで、所属している会社も同じことがあります。この2つの仕事は同じ業界に分類され、ハイタク業界などといいます。研修もある程度共通しています。ハイヤーのほうが高いレベルのホスピタリティが求められることから少しハードルが高いのですが、収入も上かというとこちらはケースバイケースです。


 ハイヤーとタクシー、利用方法の違い


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利用者の立場からみてみると、タクシーは駅前や路上などで捕まえて、目的地まで乗っていくものです。一方でハイヤーについては、事前に予約をして乗車することになります。距離や時間に応じて料金が変わっていくことになりますが、その料金システムは会社によって様々です。ただ、お迎え先まで移動する時の料金と、お送り先から営業所まで戻る際の料金がかかることもあるので、その点は確認が必要です。タクシーとは異なり、用途や車種、あるいは利用の頻度によっても料金が変わってくることもあります。このあたりの設定は会社によって異なります。


ハイヤー空港への送迎や、ゴルフ場への送迎に利用されることもありますし、役員車社用車として利用される場合もあります。この場合には、かなりの高頻度で利用する契約となります。具体的な会社名をあげますと日本交通の場合では、平日の5日間、8時間利用する場合には、月あたり20日として、税抜きで60万円という見積もり例が掲載されています。ただこれはあくまでも一例で、具体的な料金については、ケースバイケースとなります。オーダーメイドで運転手付きの車を雇うことができるサービスだからです。


基本的には格式の高い車種が用いられることが多く、黒塗りのセンチュリーレクサスクラウンマジェスタシーマなどが利用されることが多いです。多人数で利用する場合には、アルファードハイエースなどが配車されることもあります。用途と時間や距離に合わせて価格を相談して決められるところが高級個別輸送機関といえます。


タクシーの場合には、耐久性重視の車両が利用されます。というのも、タクシーは1回の乗務あたり300km程度走ることが普通だからです。つまり年間180回の乗務に対応するとした場合、50000キロちかい走行距離になります。一般車両の場合には、年間で10000kmくらいが標準であることを考えると大きな差があります。ただ、タクシーの場合には定期的な検査が義務づけられていることもあり、30万キロ以上走行しても現役であることはよくあります


営業方法も、言わずもがなではありますが、街の中にタクシーを繰り出していってお客さまを探します。予約することも可能ですが基本的には必要なく、道路やタクシー乗り場で空車を見つけて利用することになります。ハイヤーとは違い、タクシーは公共交通機関と言えます。


 ドライバーの待遇にも差がある?


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ドライバーの働き方もタクシーとは大きく異なります。最大の違いは、勤務時間であるといえます。タクシーは公共交通機関の一種であり、競合となる電車やバスが動いていない深夜帯稼ぎどきとなります。従って、ドライバーも、深夜に精力的に営業することが求められます。もちろん、昼間だけ営業する昼日勤という勤務の仕方もあるのですが、売り上げを伸ばすのは難しいです。長距離を移動するお客さまは、電車やバスを利用するため、タクシーのお客さまは短距離を移動することがほとんどです。タクシーは歩合制であるため、売り上げが伸びないと収入も伸びません。


一方で、貸し切りとなるハイヤーの場合には、深夜帯の利用はあまりありません。朝から昼の時間帯の仕事が多く、土日よりも平日のほうが多いのが特徴です。従って、ドライバーの勤務時間も、平日のデイタイムに合わせたものとなります。タクシーでは売り上げを伸ばしにくいものの、高級貸し切りサービスであることから、売上額はある程度確保できます収入がどの程度あるのかについてですが、これはタクシー以上に会社によってシステムが異なるようで一概には言えません。


ただ一例として、2022年11月現在のkmタクシーの採用情報をみてみると、月収28万5000円が保証されると書かれています。その他に、各種評価制度、年に2回の臨時給などがあるそうです。最低補償額で計算した場合には、年収は342万円となります。同じくkmタクシーの採用情報によると、年収500万円を超えるドライバーも多いとのことです。日本交通の採用情報をみてみると「正社員として雇用され、174200円の給与に加えて乗務手当が発生する」となっています。ただし、乗務開始から1年間は、月給 28万円の最低保証となるそうです。単純計算で年収336万円が保証されています。こうみてみると、あまり稼げないのではないかと思われるかもしれませんが、これはあくまでも最低保証です。


日本交通のサイトでは、入社1年目の平均給与年収が490万円で、入社2年目は530万円になると書かれていました。最低補償額との差がどうしてうまれるかについては、どのくらい仕事をしたかによります。つまり、タクシーと同じく歩合性となっていて、売り上げが大きければ給与水準も高くなり、売り上げがあまりない場合には最低保障給に近づいていくということになります。


ではどうやって売り上げをあげていくのかについてですが、決して金額の安くない貸し切りでの利用サービスとなるため、お客さまがドライバーに要求する水準も高まっています。もし、気に入っていただけたら指名されることもあるでしょう。仮に週5でご利用になる社用車のドライバーとして指名された場合には、毎週安定して仕事をすることができるはずです。逆に、どの現場にいっても、お客さまに信頼していただけない場合には、安定して売り上げを作ることができなくなります。単発での依頼も多数あるはずなので、まったく仕事にならないということはないと思いますが、収入が不安定になる可能性があります


勤務時間については、同じく日本交通のサイトによると、基本は8時半出勤で17時15分でとなっています。シフト制で月あたり21〜23回の乗務があるということです。ここを読む限りは、普通のシフト制の仕事と変わりません。ただしこの常務数は、タクシードライバーよりも多くなります隔日勤務の場合、朝8時に出庫した場合は、翌朝の4時まで運転をすることになります。そして2日分まとめて働くことから、月の乗務回数は11〜13回です。そういう意味ではハイヤーのドライバーは勤務時間が安定していて働きやすいのではないかと思います。


一昔前はややブラックなところもあったと聞くハイタク業界ですが、業界全体でタクシードライバーへの待遇をよくしていこうという試みもあり、非常にホワイトになっています。そのため、17時15分までしか勤務できないという要望を出せば、多くの会社では通るのではないかと思います。


一方で、そういった勤務の仕方が一番稼げるのかというとそうもいかないかもしれません。タクシーも、ハイヤーも、お客さまにご乗車いただくことで運賃をいただく乗り物です。従って、17時15分までの勤務で稼げるかどうかは、その時間までのお客さまがどれだけいるかにかかっています。17時15分に勤務を終えるということは、お客様の御用が15時から16時くらいには終わるということを意味しています。そういうケースでは、17時15分に退社することも可能でしょう。


一方で、18時まで使いたいというお客様がいた場合、勤務時間を延長して対応することになります。もし、それができなければ、他のドライバーに仕事を譲る必要があります。とすると、売り上げがあがらず、収入も増えないということになっていきます。実際に16時頃までに終わる案件がどの程度あるのかは会社によって大きく異なると思います。お客様の中にはアフター5の時間帯を中心に使いたい方もいるでしょうし、場合によっては深夜や早朝のご利用もあると思います。その場合も誰かが対応する必要があります


そして、どんな案件でも柔軟に対応できるドライバーのほうが収入が増えやすくなる傾向はあるように思いますこのあたりは、会社によってお客様の傾向も異なると思いますので、実態としてどういう労働時間になりやすいのか、あるいは、どの程度稼ぎたいのかを伝えた上で、担当者としっかりと話し合う必要があります


 求められる資質や技術


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ハイヤーのドライバーに求められる適性について考えてみます。同じ2種ドライバーの仕事なので、タクシーと共通する部分は多いのですが、特に強調されるのは安全性です。


一般のお客様に乗っていただくタクシーなら事故を起こしてもいいということはもちろんありませんが、ハイヤーのお客さまは政治家、芸能人、大企業の役員や重役など社会的なステータスが高い方が多いです。そのため、事故を起こしてしまうと、信用が毀損され、大口の取引がなくなってしまう可能性があります。だから、タクシー以上全運転を徹底する必要があります。ただ、タクシーの場合とは異なり、急いでいるお客さまは多くないため、余裕をもってしっかり運転できる計画を立て、安全に最大限配慮をする必要があります。


社用車として利用していただく場合には、アポイントの時間に遅れないように配慮する必要があります工事などによって通行止めになっている道を把握しておらず、回り道をした結果、時間に遅れるということは許されません。お客さまを遅刻させてしまうことで、お客さまが頭を下げなければいけなくなってしまうからです。道路の状況渋滞しやすい箇所抜け道などをしっかり把握しておく必要があります。入る車線を間違えて右左折をしそこなうことは、タクシーの乗務では時折あって、その際は平謝りをすることになるのですが、そういったことも許されないので、しっかりと道を調べておく必要があります


タクシーの場合は、どこへ行くのかはお客さま次第で、知らない道を運転することもありますが、基本的にはお客さまが事前に目的地を指定していることが多いため、しっかりと調べておく必要があります。タクシーよりも、ミスが許されない仕事というとしっくりくるかもしれません。


接客についても高級ホテルのホテルマンのようなハイレベルなものが求められます。最初に書いた通り、スーツをビシッと着用し、髪はセットし、白い手袋をつけます。黒塗りで綺麗に洗車された車の横で、背筋を伸ばしてお客さまを待っているスーツのドライバーをよく見かけると思います。タクシードライバーにも髪型や服装の規定はありますが、基本的には会社の規定によるため、著者は編み込みをしている男性のドライバーにも会ったことがあるくらいです。個人事業である、個人タクシーのドライバーには金髪の方もいます。


しかしながら、ハイヤーでは許されません。誰がどうみても不快感を覚えず、上質なサービスの担い手であると認識される服装や振る舞いが必要です。もっともこれも会社次第で、ラフな格好で対応する会社もあるかもしれませんが、ハイヤーのドライバーのほとんどはホテルマンのように振る舞うことを求められます。


お客様の多くは、教養高く情報感度が高い方です。そのため、運転手も、知的な会話ができることが求められることがあります。また、ハイヤードライバーは本を読み、最新のビジネスの流れなども理解しておく必要があります例えば「円安についてどう思いますか?」と聞かれた時に、「物価が高くて困りますよ。今の政権は本当に国民のことを考えていない」という紋切り型の回答をするのではあまり喜んでいただけません


円安でダメージを受けるかどうかは業種によると言っているアナリストがいました。そして、長期的にみると日本経済にとってはポジティブな影響があるという分析でした。過渡期を耐えられる体力があるかどうかが鍵になるのかなと感じています」などと答えます。


お客様にもよるのでこの回答がベストかどうかは一概には言えませんが、円安という問題に関心をもっていることは伝わりますし、お客様が思考するためのキーワードをいくつか提示していることから、お役に立てる可能性もあります


もっとも私は、ハイヤーの研修を受けたことがないので、実際にこういう会話をしてもいいのかどうかは把握していません。逆にタクシードライバーの場合は「いやー、こんだけ物価あがると困っちゃいますよね。いま、牛丼屋いっても700円くらいかかりますよ!!」みたいな言動が適切だと感じることが多いです。


お客様がどういう雰囲気の会話を望んでいるかは、背中ごしに感じる必要はあるのですが、タクシーでは大衆的な会話が好まれるのに対して、ハイヤーはタクシーとは異なる、知的で上質な会話が望まれる傾向にあります。もちろん、一切会話をする必要がないと考えているお客様も多いです。お客様のために、安全に運転をするという意味では変わりませんが、求められるサービスや金額に差があります


 まとめ


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  • ハイヤーは完全予約制のオーダーメイドサービスで、公共交通機関の一種であるタクシーとはお客様のご利用方法が異なります。
  • ハイヤーもタクシーも同じ2種免許のドライバーが担当しますが、求められるサービスが大きく異なります。
  • それに伴って適正も変わってくるため、どちらが向いているかはよくよく検討するとよいでしょう。


ハイヤーとタクシーは兄弟のようなもので、あわせてハイタク業界と言われています。使う免許も技術もおおむね同じなので、働き方として両者が選択肢に入ってきます。一方で、ハイヤーの勤務条件は、タクシーとは随分と異なるものとなるが想定されます。また、働き方や収入なども会社や営業所によって大きく異なってくるため、事前によく調べた上で、担当者としっかり相談しましょう。​​



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