働きやすいタクシー会社ってどんなとこ?

公開日:2024/09/20 02:53


タクシー業界は特殊な世界で、タクシードライバーの働き方も特殊です。なので、世間一般における働きやすさとタクシー会社の働きやすさは異なります


世間一般における働きやすさとは人間関係が良好かどうか、福利厚生が整っているかどうか、有給休暇が取りやすいかどうか仕事内容が楽しめるどうかなどで決まるようです。女性の場合には、産休が取れるかどうか、育児両立できるかどうかなども重要になってきます。女性ドライバー特有の事情については各社の方針によるので何とも言えませんがタクシー業界は、大手を中心に女性ドライバーが働きやすい環境を整備する方向に動いています。


平成から令和にかけてタクシー女性ドライバーが増えている?』という記事にもまとめていますので、参考にしてください。


この記事では、著者がタクシードライバーとして働きながら同僚や同業の仲間に聞き取りしたことを書いていこうと思います。



 働きやすさ① 事故や違反の際のケア


名称未設定


最初に、業界特有のものを書いていこうと思います。タクシードライバーをやっていく中でもっともシビアなアクシンデントが、違反事故です。違反については完全自己責任となります。免許証の点数が加点され、6点以上になった時点で免許停止処分、あるいは免許取り消しになってしまいます。免許停止は1度目であれば、講習を受ければすぐに乗務することができます。もっとも、大きな違反をしてしまった場合には停止期間が長くなります例えば、50km/h以上の速度超過の場合12点が加算され、一発で免許停止処分になります。その期間は、初回の違反だったとしても90日間です。講習を受ければ半分の45日まで停止期間が減免されますが45日間は働けないことになります。こうなると、タクシードライバーは仕事ができません。

急いでいるお客さまから「運転手さん、もっとスピード出して!!」と言われることは毎乗務のようにありますが、スピード違反は非常に厳しい罰則があるので法定速度の厳守は絶対です環状七号線などではスピードが出しやすい区間でも50キロ制限ということがあり気をつけないと30キロ以上オーバーしてしまいます。そういう場所に限って覆面パトカーが潜んでいるものでもしも捕まってしまうと一発免許停止です。


少し前置きが長くなりましたが交通違反はどのタクシードライバーにとっても致命的なものです。1年間無事故無違反ならば点数はゼロに戻りますが、その間にまた違反してしまうと累積していき、いつか免許停止処分になってしまいます。「違反などしなければいい」と言われてしまうとその通りなのですが、タクシードライバーはお客さんの指示に従ってよくわからない道を走ることも少なくありません。突然お客さんに「ここ右に曲がって!!」と言われて曲がると右折禁止で御用になる、ということもあります。


さて、ここが大事なポイントなのですが、もしも違反が積み重なって乗務できなくなってしまったときタクシードライバーはどうするのでしょうか。
この対応は、会社によって異なります厳しく叱責され、始末書を書かされた上で免許停止期間は放置される、ということもあります。


一方で、停止期間中に内勤や洗車などの仕事を割り振られたりアルバイトを斡旋してもらえたりすることがあります。そこまで面倒をみてくれなくても優しくしてくれるだけでも随分とマシだと思いましょう。タクシードライバーは、戦場で闘っています。いざというときに会社がタクシードライバーの側に立ってくれるのか、それとも会社の利益だけを考えてドライバーを責め立てるのかは、非常に大きな問題です


事故についても同様で会社側とすると保険の手続き相手側とのやりとり、場合によっては警察への対応など
非常に労力がかかります。もちろん、車両の修理代は保険でまかなわれるのですが、事故が多い場合には契約更新の場合に等級が下がり、
保険料が値上げしてしまうという問題があるようです。また、修理中の車両は営業できないため、事故が起きると会社への損害も少なからずあります。そんな時に、叱責と始末書のみならず、罰金を支払わされる場合もあります。会社によっては、修理費などを負担しないといけないこともあります。


このあたりの事情は、会社の方針と雇用されるドライバーの考え方次第になって来るので気にしておく必要があるでしょう。事故時の対応が多少悪くても歩率が高く、稼ぎやすい会社のほうが良いというドライバーもいます。一方で、多少稼ぎが悪くてもいざというときの安心感がある会社が良いというドライバーもいます。こういった側面について気になる方は直接問い合わせてみてください。


 働きやすさ②人間関係


名称未設定


人間の苦悩の多くは人間関係から生まれるといわれています。タクシードライバーの場合も同様ではありますが、基本的には人間関係の苦しみからは切り離されている職種です。上司と同僚はいますが出庫してしまえば一人で営業をするので接触する時間は非常に短いのです。著者の場合では、上司と話すのは朝礼前の挨拶くらいで、同僚でも一度も会話をしたことがない人もたくさんいます。上司や同僚と一緒に仕事をする機会はほとんどないため協調する必要もありません。

同僚との接点で唯一あるのが相番洗車の問題です。大抵の会社では、タクシーを2人のドライバーで交互に使いますがこのときペアになる相手のことを「相番」と言います1人のドライバーが乗務をして帰ってきたあと、洗車をして相番のドライバーに受け渡します。相番が一日乗務したあと、帰庫して洗車してからタクシーを戻します。タクシー会社としては、車両を常に動いている状態にするのが理想です。そのための効率的なシステムとして相番が使われています


ここで問題になってくるのが相番となるドライバーとの相性です。顔を合わせることは、ほとんどありません。自分が使っていないときにタクシーに乗っているだけです。だから、毎回綺麗に洗車してくれて余計なことは何も言わないのが筆者にとっては最高の相番といえます。


一方で、厄介な相番とはどんな人でしょうか。一番多いのが、洗車をちゃんとしないドライバーです。車体が汚い、ゴミが残っているなどは論外です。車内の拭き方が甘かったりシーツの張り方が甘かったりする場合も乗務前にこちらの手間が増えることになってしまうので正直いって苛立ちます。燃料を満タンにして車庫に戻すのが基本ですが入れ忘れてしまうドライバーもいます。燃料が少ない状態で戻されている車に乗る場合、乗務前にスタンドに寄る必要があるので面倒です。


個人的に一番厄介だと感じているのはこちらに対してクレームが多い相番です。例えば、洗車ひとつとっても、どの程度まで綺麗にするのかはドライバーの裁量に任されています。人によっては、文字通りチリ1つ残らないほど掃除をしていないと気が済まないあるいは毎回ホイールを外して洗うべきだ、と考えるドライバーもいますそういったドライバーの相番になった場合たとえ自分が綺麗に洗車をしたと思っていても毎回のように内勤を通してクレームを伝えられるということもあります。こうなると非常面倒です。こういう場合には、休日に会社まで行き、洗車の仕方を教わったりあるいは相番を変えてもらったりする必要があるでしょう。こうして、相手に振り回されることも厄介ですが、あなた自身も「厄介な相番だ」と相手に思われないよう最低限のマナーくらいは覚えておかなければなりません


とはいえ、同僚とはその程度で済む人間関係しかありません。会社の飲み会や集まりなどがあるにしても強制参加という話は聞いたことがありません


タクシードライバーの悩みでよく聞くのは内勤職員の人間関係です。これは③で後述する「稼ぎやすいかどうか」と関係してくるのですが、会社の求めるドライバー像とミスマッチが起きたときに、内勤の職員との摩擦が起こることがあります。内勤の事情としては、ノルマが設定されることもあるでしょう。そうしたときに、より売上があがるようにドライバーにプレッシャーをかけることがあります。


このような場合、ドライバー自身が売上を可能な限り高めたいと思っている場合ある種のプレッシャーも追い風にできることでしょう。売上をあげていないと居づらくなる雰囲気の会社もあると聞きますし、ドライバーに厳しいノルマが求められることもあります。しかしながら、ドライバーが稼ぐためには、そうしたノルマを軽々と超えていく必要があります。もしあなたが「売上はあまり気にせず、のんびり働きたい」と考えている場合、こうした部分で摩擦が起こる可能性があります


極端な例ですが月収30万円以下でもいいのでのんびり働きたいドライバーと月収50万円以上をコンスタントに稼ぎたいドライバーがいるとします。会社側としては、一日の稼ぎが大きくなくてもコンスタントに長く務めてくれるドライバーを優遇するのかそれとも一日の稼ぎを最大化したいのかでドライバーへの接し方が変わってきます後々でストレスを溜めないためにもこのあたりの事情を面接の時などにあらかじめ確認しておくのがよいでしょう。


働きやすさ③ 稼げるかどうか


名称未設定


タクシードライバーになるときに一番考えるのは、稼げるかどうかです。あるいは、稼がなくても居心地が良いかどうかです。


稼ぐために必要な条件は各種あります。都内各地に専用乗り場があることや、無線アプリでの配車のお客さまが多いことなどが挙げられます。これらをすべて備えている大手のタクシー会社のほうが有利とされていますが、もちろんドライバーとして求められるサービスの水準も高く研修期間も長い傾向にあります。


無線やアプリによる配車は空車時に突然入ってきます。最近は様々なアプリが開発されていてそれぞれ基準があるので一概には言えませんが基本的には無線が入った場合には拒否できないことになっています。とはいえ、お客さまに既に乗車していただいて、ルートなどを相談している状況に無線が鳴ることもあります。そういう場合はもちろん乗車しているお客さまが優先されます無線やアプリによってタクシーを呼ばれる場合には運賃に加えて迎車料金が発生することになりますし利用するのはある程度長距離を移動されるお客さまであることが多いです。

そのため、稼ぎたい場合には無線を活用することも大切になってきます。もちろん、無線に頼らず自力である程度稼ぐドライバーもいます。
営業所の位置も重要です。タクシーで稼ぐためには都心まで営業に行くことが不可欠です。そのため、営業所の位置が郊外で都心から遠い場合には大きなロスが発生しますタクシードライバーの勤務時間は法律で厳しく制限されているため営業所から営業場所までの移動時間が長いと非効率的になります。


あるいは、自宅と営業所の位置を考えてみましょう。営業所が自宅から近い場合には通勤時間が少なくなるため勤務が楽になります。よほど体力が余っていて長距離を通勤したいというなら話は別ですがそんな人はなかなかいないでしょう。


タクシードライバーは心身ともにハードな仕事です。通勤時間は、働きやすさを考える上で仮眠スペースシャワー浴室の有無などといった会社の設備と並ぶくらい非常に重要です。個人的には、早朝まで勤務したあとに朝からビールを飲むことができるのが特別な贅沢だと思っているので居酒屋があるかどうかも大切です。筆者はこのような楽しみを大切にしていますがそういうお店があるとせっかくの収入が減ってしまうので何もない街のほうが良いという考え方もあります。


こういった点も含めて、働きやすい職場は人それぞれだと言えます。タクシードライバーという仕事の特性を理解した上で自分が何を大切にしているのかよく考えてから会社を選ぶのがよいでしょう。


まとめ


名称未設定


  • 罰則を受けた場合、どのくらいバックアップしてくれるのかは会社によってそれぞれ
  • しっかり稼ぎたいか、のんびり働きたいか、会社の待遇をあらかじめ確認しておく
  • 好待遇で高スキルを求められる大手、通勤時間の長さ、退勤後の楽しみなど、自分にとって大切な点は何か


働きやすさという言葉は世間一般で広く使われますが、タクシードライバーの場合は随分と特殊な事情に基づいて決まっていきます。定期的に転職していくホッパーのような人もいますし同じ会社にずっと在籍している人もいます。このあたりはドライバーの性格にもよるのですが、肉体的に楽とはいえない仕事なので精神的に安心できる会社が一番お勧めです。​​

0