ドライバーをやるなら知っておきたいタクシー乗り場のルールについて

公開日:2024/09/19 13:41


ほとんどの駅にはタクシー乗り場があり、何台もタクシーが待機列を作っています。駅以外でも空港バスターミナル、ホテル劇場などにも乗り場があります。タクシードライバーを始めてみると、乗務に慣れるまでは「乗り場への入構禁止」と言い渡されることがあります。その期間は1ヶ月であったり3ヶ月であったりとまちまちですが、会社に禁止されるかは別として不慣れなうちは乗り場に入らないほうがいいというのは常識になっています。ここでは、乗り場に入るということがタクシー乗務において、どういう意味合いがあるのかを説明した上でそのルールについて解説していきたいと思います。



 着け待ち営業は上級者向け


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タクシードライバーの営業スタイルは、大きく分けて2つあります。1つは「着け待ち」営業です。「着け待ち」というのは、特定の場所にタクシーを停めてお客さんを待つことです。路上に停車してお客さんを待つことに加えて、タクシー乗り場に並ぶことも着け待ちに分類されます。タクシーの仕事というと、乗り場に並ぶことをイメージする方も多いと思いますが、あくまでもスタイルの1つです


着け待ち営業では、ひたすら待ち続けることが求められます。お客さんが来ないときは、2時間、3時間と待つこともあります。そんなに長時間待っていると売上は立ちませんから、途中で列を抜けて離脱するドライバーもいます。しかし、乗り場によっては前後ともに、空車タクシーに挟まれて動けなくなることもあります。こういう状態で延々と時間が過ぎていくことを「塩漬け」と言います。


タクシー営業においては、車輪を止めてその場に停車し続けると「休憩を取っている」と見なされることがあります。車にもよりますが、タクシーにつけられた機材が自動的に「休憩」と判断して乗務記録としてつけてしまいます。すると、一日の休憩時間が膨大になってしまい、場合によっては収入が減ってしまうこともありますこのあたりは会社によりけりなのですが著者が知っているケースだと、休憩時間が多すぎる場合には歩率が下がったり1乗務とみなされず0.5乗務扱いになったりします。0.5乗務というのは、わかりやすく言うと早退扱いです。


塩漬け」にはならずとも、1時間以上待ってショートのお客様というケースはよくある話です。タクシードライバーの収入は、お客様から頂いた運賃の50%から60%程度が相場です。そのため、1時間並んだにもかかわらず、売上420円で、収入が252円ということもあります。


乗り場の選択、着け待ちする場所の選択には経験が必要です。どの場所に、どんなタイミング、お客さんが来るのかを見極めないといたずらに時間を使ってしまいます。その待ち時間を英会話の練習などをするなど、有効活用するというドライバーもいるかもしれませんが、個人的にはお勧めできません。いつお客さんが来るかわからない路上で、他のことに集中するのは困難だからです。


一方で、着け待ちは疲れづらいというメリットもあります。なので、比較的年長者が多い個人タクシーの場合には、特定の場所でずっと待ち続けるスタイルを取ることが多いです。個人タクシーというのは、法人タクシーを10年以上務めるなど条件を満たした場合になることができる個人事業形態のタクシーです着け待ちの良いポイントには、個人タクシーが気長に待ち続けていることが多いです。


もう1つの営業形態が「流し」です。こちらは着け待ちを行わず、ひたすら路上を走り続けてお客さまを探すスタイルです。お客さまが駅からタクシーを使うとは限りません。むしろタクシーの需要は、駅から遠い場所に発生します。15分後の電車に乗らないといけないのに、駅まで歩くと20分かかってしまうという状況ではタクシーを捕まえるしかありません。そういう状況においては、路上に出てタクシーを探し、手を上げて止めることになります。


こういったお客様を探すのが「流し」のドライバーです。「流し」のテクニックについては割愛しますが、最大のメリットは道を覚え街を知ることができることです。特に道を覚えることは、タクシードライバーの最重要ミッションです。道を知らないと、お客さまにも不信感を持たれてしまいますし、場合によってはクレームになってしまいます。とはいってもわからない場合には素直に聞くしかないのですが、それでも限度というものはあります。


「船堀街道から奥戸街道に入ってください」と言われてわからない場合はありますが「外苑西から靖国道路に入ってドン・キホーテの反対側まで」と言われてわからないドライバーは、場合によっては怒られてしまいます。余談ですが、外観が目立つためか、ドン・キホーテの位置はお客様との会話で、よく使うので、覚えておいたほうがいいです。


「着け待ち」の場合は道を覚えていないと怒られてしまうことが多いです。新宿駅に着けておいて新宿区役所の場所がわからないというのでは、お客さまが呆れてしまうのももっともです。一方で「流し」の場合には言い訳がたちます。「申し訳ございません。いつもこのあたりで営業しておらず……。」というと、丁寧に道を教えてくれるお客様がほとんどです。


「流し」のデメリットとは、とにかく疲れることです。目も疲れるし、身体も疲れます。最後には脳も疲れてきます。そのため、「流し」のドライバーは適切に休憩をとる必要があります。


このように、乗り場を使う営業スタイルは上級者向けだと言えます最初のうちはひたすら流して疲れたら休むスタイルを取るべきです。なので、乗り場の使い方については少しずつ覚えていけばいいのですが、乗り場をうまく使うと営業が効率化するのも事実です。


 覚えておきたいタクシー乗り場の基本ルール


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一般の乗り場については、ただ並べばそれでよし、です。前のタクシーが動いたら一つ前に進み、一番前まで進んだらお客さまに乗って頂きます。タクシードライバーとしては、ただそれだけなのですが、お客さまのほうは列の2番目、3番目のタクシーを選ぶことがあります。よくあるのが、最新型のジャパンタクシー、7人乗りのアルファードを希望される場合です。


もしも、自分の車が先頭ではないのに選ばれた場合には、特に気にすることなく発車していいのですが、銀座の乗り場などのルールが厳しいところでは前の車に一声かけるほうがよいタクシーセンターで教わりました。


気をつけないといけないのは最後尾がどこまで並んでいいのかということです。乗り場によっては5台まで、8台まで、信号の手前まで、などのローカルルールが決まっています。また、並び方、進む順番が複雑な場所もあります。初めての乗り場にいった場合には、車を降りて先輩ドライバーにローカルルールを聞くのが無難です。というのも、もしも間違えて前の車を追い抜かしてしまうことなどあると、怒られる可能性があるからです。ローカルルールについてはインターネットを検索しても見つかりません。現場で聞くか、会社の同僚に聞く以外の方法はありません。


 特別な乗り場について


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乗り場には2種類あります。普通の乗り場優良タクシー乗り場です。普通の乗り場についてはローカルルールを聞き込みつつ並べばいいのですが、優良タクシー乗り場についてはタクシーセンターが定めたルールに従わないと、会社が罰則を受けることがあります。


優良タクシー乗り場というのは、公益財団法人タクシーセンターが認定したドライバーおよび事業者のみが入構できる乗り場のことです。銀座の乗り場など、稼ぎやすい乗り場が該当するため、優良の認定がもらえないと売上が伸ばしづらくなります。


特に銀座の乗り場については、平日22時から翌日1時までは1から11号まである乗り場以外で、お客さまを乗せると厳しく罰せられますこっそりやればバレないと思うかもしれませんが、タクシーに取り付けられたGPSと計器によって後から発覚してしまいます。このルールを破ると、会社が優良事業者から外されてしまい同僚全員に大きな迷惑をかけてしまいます。特に、最大の激戦区である銀座のルールは非常に厳しい扱いとなっています。


他にも東京駅八重洲口では鍛冶橋通りを右左折して、入構ルートに入ることができません。と言われても何のことやらわからないかもしれませんが決まったルートから入構しないと罰せられる乗り場があるということです。正確にいうと、終日において入路指定・待機禁止」であり鍛冶橋交差点を有楽橋方向から直進して乗り場へ入構」することと東京高速道路下以降は待機禁止」です。


 稼げる乗り場、稼げない乗り場の見分け方


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最後に、どの乗り場が稼げるのか、稼げないのかを見分ける方法についてお話します。実際に稼げるかどうか快適かどうかは、ドライバーの営業スタイルにもよるので、最終的には何度か並んでみて確かめるしかありません。


例えば著者が好きな乗り場は、東京駅八重洲口です。こちらは、列の進行が遅いという特徴があります。1台進むと1台分進むのではなく、横に何台も並んでいるため、5台が進行したあと1台分進みます。なので、サイドブレーキを引いて、ニュートラルにギアをいれ考え事をしたり、調べ物をしたりすることができます。また、東京駅は大きなターミナル駅なので、ロングのお客さまも多いです近場のホテルや会社に行く方も多いのですが、平均単価は高めです。その分、列も長いのでのんびりやりたいときに並ぶようにしています。


乗り場を見分ける基準は3つ。高所得者がいるか高速道路の乗り口が近い個人タクシーがいるかどうかです。高所得者が待っている可能性が高いのは都心のビジネス街です。あるいは、大田区の田園調布のような高級住宅街を狙う手もあります。ただし、住宅街から他の土地に長距離を移動するお客さまは、それほど多くはありません。近くに行ったときに覗いてみて、列が短いようなら並ぶという程度が良いと思います。タクシードライバーは、お客さまが何を求めているかを常に考えながら営業をする必要があります。


需要が発生するストーリーを意識しないと稼ぐことができません。従って、稼げる乗り場だから並ぶという思考停止は、やめたほうがいいです。気候・天候、時間、交通状態、ニュースなどに気を配りながら、どこで需要が発生するかを仮説思考的に考えるのが、稼ぐドライバーです。


その中でも常に意識しておきたいのが高速道路の位置です。高速道路をご利用のお客様は遠距離まで行くことが多いです。都内の短い移動で高速を使う方もいますが、それでも5000円くらいにはなることが多いです。場合によっては2万円、3万円越えもありえます。そういったお客さまは普段から同じルートを使うこと多く、どの乗り口を使ってどこで降りるかを指定される場合があります。今回は乗り場の話です。乗り場を選ぶのであれば、高速道路をどこで乗ってどこまでいくかを意識する必要があります。


最後に、どういうタクシーが着け待ちしているかどうかも、観察しておく必要があります特に個人タクシーがいるかどうかは重要なポイントになります。個人タクシーの資格を取るためは、10年以上ドライバーをしているベテランである必要があるため、まったく稼げない場所にはあまりいません。とはいっても地元の駅で細々と営業している個人タクシーもいます。個人タクシーは営業時間を自分で決められるので、朝と夕方のラッシュだけに絞って営業しているドライバーもいます。なので、法人タクシーのドライバーとしては参考にならない部分もあります。


一方で、都心で個人タクシーがたくさん止まっているポイントはロングが出る可能性が高いです。例えば、深夜の霞ヶ関では個人タクシーが行列を作っています。霞ヶ関といえば官公庁が並んでいる場所で、終電後まで仕事をしている官僚ターゲットにしています。霞ヶ関近郊に住宅はないため、ある程度遠くまで帰宅するお客さまを乗せられる可能性が高いポイント。なので、ロングが引ける可能性は非常に高いのですが、一方で長時間並ぶ覚悟をする必要もあるので稼げる場所かどうかの判別は難しいところがあります。


一晩並んでお客さまにご乗車いただけない日を、個人タクシードライバーはボウズ」などと言うことがあります。「ボウズ」というのは釣り用語で、一匹も魚が釣れない日のことを指します。以上のようなポイントを基準に自分にとって稼ぎやすい乗り場を探していくのも、自由な仕事であるタクシードライバーの楽しさの一つです。


 まとめ


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  • 「流し」で道を覚えて、慣れてきたら乗り場をうまく使って「着け待ち」スタイルへ
  • 乗り場はルール厳守、先輩や同僚に聞いて覚える
  • お客さまのニーズを常に考えて、稼げる乗り場を見極める


とても便利なタクシー乗り場ですが、思考停止で並ぶだけでは効率的な営業はできませんドライバーによっては、まったく並ばないということもありますし、そういう人のほうが売上が高い傾向にあります。


一方で、流れが良い時間帯を見極め、うまく使うことで長い営業時間のほどよいアクセントにすることもできます。ロングが出やすい乗り場もあって、そういう場所で並んでいる間ワクワクすることもあります。著者も考え事をしたいときは銀座1号に並んで、ゆっくりとメモを取っていることもあります。タクシードライバーは自由な仕事です。乗り場に並ぶのも、並ばないのも自由です。

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