タクシー会社に入社して合わない場合はすぐにやめられる?

公開日:2024/09/19 09:37


タクシー業界に興味を持ってやってみようと思った方で、一度入ると抜けづらい業界だったらどうしようかと二の足を踏んでいる方もいるかもしれません。もちろん、やめるつもりで始める人はいないと思いますが、なにぶん特殊な仕事なので、やってみるまで自分に合うかどうかはわかりません。タクシー業への転職自体は、人手不足が叫ばれているので、比較的容易にできます。現代では、様々な業種において人手不足と言われていますが、たとえばコンビニの店員などは、外国人労働者が雇用されることがあります。


一方で、タクシーの場合には、高い運転技術と接客レベルが求められるため、外国人労働者もいるにはいるのですが、極めて少数です。特に難しいのが、日本語をかなり使いこなせないと2種免許の筆記試験や、タクシーセンターの法令テスト、地理テストなどに合格することが難しいことでしょう。地名は漢字ばかりなので、日本語を母語としていないと難易度は跳ね上がります。また、若い働き手が積極的に選ぶ仕事ではなく、一度どこかに就職してから転職してくることがほとんどです。従って、タクシー業界は、「超売り手の転職市場」と言えます。さらに、タクシードライバーの数自体もこの10年で10万人ちかく減少し、28万人程度になっています。比較的離職率が高い業界とも言われているため、「超売り手」の傾向はしばらく続くはずです。


というわけで、業界に入ることは比較的容易にできます。ただやめたいと思ったときにやめられるのかは気になるところでしょう。インターネットで調べてみると、タクシードライバーは時間が自由になる、高収入が期待できる、対人ストレスが小さいなどのメリットを目にすることがありますが、一方で体力的にきつい、思うように稼げないなどのデメリットを挙げる人もいます。もしも合わなかったときにスムーズにやめられるかどうかは非常に重要で、一度契約すると数年やめられないなんてことが万一あると本当に辛いことになってしまいます。結論から言うと、タクシードライバーは正社員であり、労働関係の法令のとおりいつでもやめることができますしかし、タクシー業界特有の事情なども確かにあるため、この記事でしっかりと説明していきたいと思います。


 タクシー会社に入社して合わない場合はすぐにやめられる


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まず前提として、日本では仕事が合わないと思ったときは退職することができます。労働者の退職については民法第627条によって定められています。これは日本の法律で定められた労働者の権利であるため、やめられないという状況は発生しません。法的には最短で2週間とされていますが、1ヶ月前に言うのが一般的です。タクシードライバーの場合には、「今日から乗務しない」と主張すれば、働くことがありません。乗務しなければ欠勤の扱いになるため、給与も発生しないため、会社としても強く言うこともないでしょう。だから、タクシーに乗る意志がなくなればやめることができます。ただし注意点もあります。


まずは一般的な話ですが、突然出勤しなくなってはいけません。いわゆる「バックレ」です。アルバイトの場合にはよく聞く話ではありますが、タクシードライバーは正社員として雇用されることもあり、即日退職を行うと「違法行為」となり、損害賠償請求を受けたり、懲戒解雇を与えられたりする危険があります懲戒解雇になってしまうと、次の転職先にも相手先に伝える必要があり(そうしないと経歴詐称になってしまう)、非常に印象が悪くなります。他にも離職票が出るのが遅くなったり、年末調整の書類がなかなか出してもらえなかったりという小さな嫌がらせを受けるリスクもあります。そういう会社がタクシー業界にあるかどうかはわからないですし、私が聞いている限りはないような気がしていますが、やめる際には職場への感謝の気持ちを持ってしっかりと挨拶して筋を通すことが大切です。


ただ、心身が弱ってタクシーに乗れないときなどは、会社のほうも無理矢理に乗せることはできません。なので、この先続けられないことを伝えて、タクシーも乗れないという希望もしっかり話したあと、会社の指示を待ちましょう。あと2ヶ月だけ乗ってほしいなどという要望をもらうこともあるかもしれませんが、個人的には乗りたくないのに乗っても良い結果は出ないと思います。交通事故などの危険のある仕事なので、体調不良時はもちろん、モチベーションが十分ではないときは乗るべきではないと考えています。ただ、連絡しないで乗らないというのはやはり社会人としては問題なので、しっかりと連絡をしましょう。


タクシー業界は横のつながりがしっかりしています。というのも、台数管理や法令の遵守、社会に迷惑をかけないようにするための自主ルールの設定など、横の連絡をする機会が多いからです。なので、問題を起こしてタクシー会社をやめて、次のタクシー会社に行こうと思うと、思わぬところで繋がっていてすべてバレてしまうということがあります。タクシー業界だけではないのですが、退職者を減らすことを目的として、退職時に研修費用などの返還を求められることがあります。ただ、労働基準法においては、退職時に金銭を求める契約を結んではならないということになっています。したがって、そのような契約は無効なのですが、実際問題としては、会社と揉めてしまうと苦労するのは自分です。退職時の条件があるかどうかは、入社前にしっかりと確認しておくべきです。


実を言うと、退職時に免許の取得費用などを返還するシステムをとっているタクシー会社をいくつか知っているのですが、そういった会社がブラックなのかというと実はそうでもなく、働きやすさに定評がある会社でした。良くも悪くも古い体質の業界なので、正社員として安定して働けるというメリットともに、若干古いシステムが残っていることもあります。退職時のペナルティがあるから悪い会社とは言えないので、入社前にペナルティの有無などを含めてよく話をしていく必要があります



 タクシー会社をやめたくなる理由


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タクシードライバーをやめたいと思う理由は人それぞれですが、ある程度共通しています。もちろん、やめるつもりで就職する人はあまりいないと思いますが、あらかじめよくある退職理由を知っておくと対策もしやすくなるのではないかと思います。


私の実感として一番あるのが、体力的にキツくてやめてしまうパターンです。体力といっても、マラソンを走ったり、重いバーベルをあげたりという能力は必要ありません。立ち仕事ではないため、立ち続ける必要もありません。タクシードライバーに必要な体力はずばり睡眠時間です。タクシーの仕事は、深夜から早朝に及ぶことがあります。なので、夜起きていられることは必須の能力になっています。例外として昼間だけ勤務する「昼日勤」の場合には、朝乗務して夕方頃までなので、一般的な睡眠サイクルをとることができます。安定はしていますが、一番稼げる時間帯である深夜から早朝に乗務できないため、稼ぎは大きくありません。深夜に乗務するための勤務シフトは、いわゆる夜勤専門の「夜日勤」と、昼夜を通して2日分一気に働く「隔日勤務」があります。「夜日勤」の場合は、一般的な夜勤の仕事と一緒で、昼間寝て夕方ころに出勤する形です。この場合には、夜型で生活できる適性が必要です。問題は、特殊な勤務形態である「隔日勤務」です。出庫の時間が朝6時の場合には、乗務は最長でも翌2時までです。午前に出庫する場合は、一般的に早番といわれます。出庫の時間が15時の場合には、乗務は最長で翌11時までとなります。こちらは遅番と言われています。


隔日勤務」では、ほとんど丸一乗務するので、最初は勤務時間の長さに驚きますが、慣れてくると休み所もおぼえてくるので体の負担は思ったより大きくありません。しかしながら、タクシーの仕事をしていると、毎日同じ時間に眠ることができなくなります。結果、睡眠リズムは崩壊します。それが積もり積もると、段々と体調が良くなくなってきてしまい、休みの日はずっと眠っているのに回復しないと訴えはじめます。かくいう私も、最初のうちはタクシーのリズムになれずに体調を崩していました。


昼過ぎに出勤の準備をしはじめて、タクシーに乗って帰ってくるのが翌日の昼。それから食事をして、ビールを飲んで、眠るわけですが、昼間の睡眠はどこか落ち着かないのか3,4時間で目が覚めます。そのあと、少し自由に過ごして夜にまた寝ます。朝起きて、家族と朝食をとったあと、また仮眠してから出勤するというのが私のパターンでした。ご覧のとおり、寝てばかりです。


さらにタクシー乗務中も、21時から22時と4時から6時ころの3時間は寝ます。乗務中に眠くなってしまうと非常に危険なので、少しでも眠気があるなら公園の脇や駐停車できるポイントなどに行き、仮眠をとります。それでもまだ眠かったので、私の場合には、タクシードライバーとしての体力はギリギリだったと言えます。徹夜あけでもピンピンしていて、そのまま飲みに行く人もいますが、とても真似ができません。タクシー乗務中だけではなく、乗務後のプライベートな時間に、どれだけ動ける体力があるかで、日々の充実感はだいぶ変わってくるはずです。


体力が足りないと訴えるドライバーの中には、乗務は問題なくできているけど、プライベートに時間を割く体力がないと訴える人もいます。それ以外にも、座っている時間が長いことから腰を痛めてしまったり、視力が低下して夜の運転が厳しくなったりすることもあります。このように体力面で問題が出てしまう方もいますが、個人的な意見としては、睡眠サイクルにさえ慣れたら問題なく乗務できると思っています。かくいう私も、3ヶ月くらい乗務して慣れてからはとても楽になりました。腰痛については、自分にあったクッションや、休憩時間の体操などである克服しました。


もう1つのパターンは、接客が苦手でやめてしまうパターンです。私の場合はまったく苦にならなかったので、体力面でややきついと感じたときでも続けられました。しかし、ドライバーの中には、「話しかけられたくない」とか「酔っ払いが嫌い」という人もいます。特に酔客の対応が苦手だと、トラブルも起きやすく、後処理にも時間がかかってしまいます。心ないことを言われることもあります。


例えばですが「おい!!なんで信号守るんだよ!!赤でも行けよ!!」などと後ろから大声で言われることもあります。もちろん、それは酔っ払って言っているだけなので、うまくいなして、目的地までお連れする必要があります。酔っ払って日常的なやりとりがうまくできない状態になってしまっても、座っているだけで家の前まで連れて帰ってくれる安心安全な乗り物がタクシーです。だから、高額の運賃を支払っていただけます。私の場合はそう考えていたので「いやいや、最近は厳しくてぶつけると捕まっちゃうんですよ−」などと煙に巻くようなことを言っていなします。酔っ払っているお客さんはスイッチが切れるとそのままぐったり眠ってしまうので、寝る前に住所を確実に聞いておいて、あとはご自宅の前で起きていただければ、お仕事終了です。


あとは、免許の点数を失ってしまい、続けられなくなるケースがあります。6点までは免許停止ですが、何度も免許停止を続けていると次第に運転できない期間が長くなっていきます。また、免許取り消しまでいってしまうと、再び取り直さなければいけなくなります。乗務ができなくなった場合、運行管理者の資格を取得して内勤に転じることができる場合もありますが、ポストに空きがある場合に限られています。収入が思ったよりも安定しないでやめるという方もいます。いわゆる稼げる営業ができない場合にこういったことになりやすいです。ゲームのような感覚で、仲間と競いながら営業成績をあげていくようなスタイルのドライバーは成功しやすいようです。


 まとめ


名称未設定

  • タクシー会社は普通の企業と同じように労働関係法に基づいて退職することができる
  • ただし、タクシー業界特有の社内規定などがないかはよく確認する必要がある
  • タクシードライバーが退職する主な理由として、睡眠が不規則になることに伴う疲労の蓄積があげられる


タクシードライバーは、とても良い仕事です。誰かに命令されることもなく、自由自在に街中を走り抜けることができます。また、プライベートでも自由な時間が多く、趣味や副業などを上手にこなすドライバーも多いです。一方で、特殊な勤務時間を求められる仕事なので、万人に向いているわけではありません。運転が好きかどうか、ゲームのように仕事が楽しめるか、睡眠がある程度不規則になっても耐えられるか。また、不規則なリズムに家族が耐えられるかなどが、仕事を続けていく上で重要です。​​

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