タクシードライバー、昼勤でも儲かる?

公開日:2024/09/19 14:43


タクシードライバーの仕事と一口に言ってもいくつかある勤務形態によって、働き方も収入も変わってきます。また同じ勤務形態であっても、営業方法によって大変さが変わってきますし、収入もそれに伴って変化します。


最も稼げるやり方というのはある程度共通認識としてありますが、人によってはそういった働き方が合わないこともあります。そのため、無理がたたって体調を崩したり、場合によっては違反や事故を起こしてしまったりすることもあります。そうなってしまうと、収入としては大きなマイナスを抱えてしまうことになります。そんな中で昼日勤は最も手軽で無理がなくできる働き方です。


一方で、稼ぐという意味では他の働き方よりも不利だといえます。といっても、これも考え方次第です。負担の小さい働き方でしっかり続けるほうが、中長期的には稼ぎが大きくなることも想定できるからです。この記事では、昼日勤の働き方を確認したあと、昼勤務で稼いでいくために必要なこと考えていきます。


 昼日勤とは何か


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昼日勤とは、文字通り昼間にタクシー乗務をする勤務方法です。朝出庫して、夕方以降に帰ってくる勤務スタイルなので、一般的な昼勤の仕事と同じサイクルで働くことになります。月の乗務回数はフルタイムの場合には22回から26回くらいになると思います。26回だと体力的にかなり大変なので、24回くらいになることが多いでしょう。となると月の休日が6〜7日ということになります。昼勤の場合には、土日は休むということも相談しやすいのではないかと思います。


ただ会社によっては、シフトがしっかり組まれていて動かせないこともあります。このあたりは、会社が所有しているタクシーの台数とドライバー数の関係で決まります。昼日勤よりも、夜日勤を希望するドライバーのほうが多いため、昼は比較的融通が利きやすいのではないかと思いますが、会社によってまったく事情が異なります。


勤務の流れとしては、まずは出庫時間が決まります。出庫時間は早朝から10時くらいまでが一般的です。私がいた会社はある程度自分の裁量で決められましたが、シフトで決まっている場合もあると思います。朝8時に出庫した場合には、おおむね16時くらいまで乗務をして帰庫します。帰庫したあとは、精算作業をして、洗車をします。9時間の乗務をして、乗務中に1時間休憩を挟みます。つまり、出庫から9時間後に車庫に戻ってくる計算になります。


休憩は、どこでも好きなところでとることができます。ファミリーレストランで食事をしたり、公園の脇に駐車して昼寝をしたり、場合によってはデパートやスーパーで買い物をすることもできます。休憩時間に何をするかは労働者が自由に決められるため、会社からうるさく言われることはありません。


ただ2つ注意点があります。1つは、駐車違反です。タクシーの駐車違反は、運転手の違反となり違反点数が加点され、罰金も科されます。これだけでも大打撃なのですが、スピード違反と駐車違反は、東京の場合には、タクシーセンターから会社にもペナルティが加えられます。このペナルティが増えすぎると「優良タクシー会社」の認可が下りなくなり、都内各地にある「優良」専用乗り場に入れなくなるのです。


違反したドライバーだけではなく会社ごと禁止されます。「優良」専用乗り場には銀座や空港なども含まれるため、営業上の大問題です。そういった背景から、駐車違反やスピード違反をすると、会社からこっぴどく怒られることになります。コインパーキングなどにいれることで違反を切られるリスクを回避することはできますし、路上駐車するときでも、駐停車禁止の標識をしっかり見ておくことは必須です。また念のため、車から遠く離れず、できれば見える場所にいるようにすることが大事です。


もう1つの注意点は、乗務中の飲酒です。飲酒運転が駄目なのは当たり前なのですが、出庫時と帰庫時にアルコール検査が入るので、確実にバレます。なお気をつけておくことがあります。お酒を飲んでいなくても、アルコールが含まれている食品や飲料はあるということです。酒税法上、アルコール度数が1%以上のものはお酒という表示になります。逆に言うと0.9%が含まれていてもお酒ではないということになります。


栄養ドリンクや漬け物、チョコレート、場合によっては卵焼きなどにもアルコールは含まれているようです。なので、帰庫直前の食事を間違うと、アルコールが検出されてしまうことがあります。お酒に弱い方は食事にも注意してください。



 昼日勤は稼げるかどうか


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さて、いよいよ昼日勤が稼げるかどうかを解説します。まずは夜日勤と比較した場合ですが、基本的には夜日勤よりも稼ぎは小さくなりますというのも、タクシーのお客さまは昼よりも夜のほうが長い距離を移動する傾向があるからです。また、22時から翌朝5時までは「青タン」と呼ばれる割増料金が適用され、運賃が2割増しになります。ということは、同じペースでお客さまを乗せ続けたとしても、深夜のほうがずっと効率がいいわけです。


昼にロング(長距離乗車)のお客さまは、ほとんどいらっしゃいませんが、夜だと1万円を超える「万収」がざらにあります。調子のいい日だと3回あてることもあります。私の場合は3回が最高記録ですが、夜の繁華街が得意なドライバーの中には、4回、5回とあてたことがある人もいるでしょう。


「万収」までいかずとも、おおむね5000円以上の売上は「ミドル」と呼ばれて、こちらもドライバーとしては嬉しいお客さまです。「万収」は、遠方地まで飛ばされて次の営業がスムーズにできないことがあるため、「ミドル」のほうが好きというドライバーもいます。


高単価のお客さまについて書いてきましたが、それでは最低料金のお客さまについてはどう考えているのでしょうか。近距離のお客さまでも、感謝とともにご乗車いただくのが職業意識として当たり前です。近距離のご利用をした方がいるからこそ、タクシー業界全体の売上はあがっていきます。1人なら500円でも、1万人いれば500万円になるからです。また、流し営業をしているときのお客さまは、単価が低くてもありがたいと感じます。


一方で、タクシー乗り場に1時間並んで500円であった場合には、正直いって辛さを感じます。というのも、歩率が50%の場合、1時間の収入が250円ということが確定してしまうからです。お客さまがせっかく選んでくれたのに失望してしまうのは申し訳ないという理由で、乗り場に並ばないといっているドライバーを知っています。


ただ乗り場に並ぶことに特化したドライバーの場合は、500円であっても1000円であっても1500円であっても、特に気にすることなく淡々と営業をして、乗り場に戻っていきます。高収入が得られるわけではないので、ドライバー間ではあまり話題になりませんが、地域社会の足となる大切な営業スタイルです。


乗り場といっても、夜の繁華街では、高単価のお客さまを期待することができます。特に銀座の乗り場は花形で、毎乗務ごとに銀座に向かうドライバーも多いです。もっともコロナ禍でだいぶお客さまが減ってしまい、昔ほど高単価が連発するという状態ではなくなってしまいました。経営者や、大企業の役員などのエグゼクティブが集う街であったので、コロナ禍が完全に収束しない限りは昔のようには戻らないかもしれません。あるいはもう二度と元には戻らず、また違った方向へと成長していく可能性もあります。銀座の動向は、タクシードライバーにとって大きな関心事の一つです。


 売上対決 昼日勤vs夜日勤


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昼日勤の場合には夜の銀座で営業することはできません。高単価が出るかどうかについては、営業回数で補う方法があります。単価が低くても何度もお客さまに乗って頂いていればいいという考え方です。


タクシー業界では、営業を釣りにたとえることがあります。お客さまを魚にたとえるのは問題もあるかと思いますが、ドライバー目線でタクシーの営業を理解するためには有用です。夜の高単価狙いは、大物の釣りにたとえられます。大きな魚を狙ってポイントを絞り込みますが、周囲にも大物狙いのライバルがいると苦労します。というのも、大物の魚はあまり数がいないからです。一方で、昼の営業は、小物の数釣りにたとえられます。1尾1尾は小さいのですが、その代わり数を釣ることができます。


大物釣りの場合に重要なのは、知識や経験に基づいてただしいポイントを見極め、釣れなくても根気強く待つことです。小物釣りに大切なのは、手返しよく釣り続けることです。もちろん、大物をガンガン釣り上げる凄腕の釣り師もいますし、何も魚が釣れないボウズをよく出してしまう釣り師もいます。何のことやらわからない方もいるかもしれませんが、昼と夜はまったく違う営業の仕方になるということがわかっていただけたかと思います。


昼日勤でもかなり稼ぐドライバーはいます。それは数釣りを極めた釣り師にたとえられます。場合によっては夜の大物狙いの釣り師よりも、釣果をあげることがあります。しかし、夜の大物狙いの達人は、大物を多数釣り上げていくので、そういう釣り師には勝てません。というわけで、夜日勤と昼日勤を比べた場合には、夜日勤のほうが稼げます。どのくらい差があるかというと、達人同士で比べた場合には1.5倍くらいの差になるかなと思います。


具体的に考えていきましょう。夜日勤の場合には平均で5万円(税抜き)を超えてくる達人がいます。仮に5万円として、歩率は60%としましょう。とすると、1乗務あたりの収入は3万円となります。乗務回数は22〜26回程度なのですが、24回としましょう。そうすると月収は72万円です。年収換算をすると864万円なのでかなりの高収入です。とはいっても、バブルのころならいざしらず、コロナ禍の東京でここまでの売上をあげるのは難しいかもしれません。


といってもコロナ禍でも月の売上が100万円を超えてくるドライバーは実在します。100万円の売上があるということは、月収は60万円ということになります。年収換算で720万円です。誰にでも出せる数字ではないのですが、コロナ禍でもコンスタントに実現させるドライバーはいるので、体力や運転に自信があれば目指してみるのもいいと思います。


さて肝心の昼日勤の場合はどうでしょうか。著者の周囲に昼日勤をしているドライバーが多くなかったので少し調べてみましたが、平均で4万円を超えてくるドライバーはいるようです。最近はアプリ配車が発達しているので、お客さまを見つけやすいというのもあるのかもしれません。4万円をコンスタントに超えられるようならば、月の売上は100万円を超えます。つまり、上述した夜日勤のドライバーと同じく、月収60万円、年収720万円を達成することができます。


無線配車に強い大手タクシー会社で、かつ、月24回の乗務を確実にこなせる体力があれば達成できるかもしれません。タクシーの仕事だけではないですが体力は重要です。体調不良で休んだり病欠になったりすると、収入減になります。有給休暇を使うこともできますが、普通の仕事とは違って、少し歩率が下がってしまうこともあります。


夜日勤ほどではないですが、昼日勤でもかなり稼ぐことができることがわかりました。ただ、昼でも夜でも月24回前後乗務をする必要があります。本気で稼ぐなら26回までは乗れるはずです。そうなると、体力的にはかなり条件が厳しくなります。生活のすべてをタクシー乗務に集中させるくらいの覚悟が必要になるでしょう。特に夜日勤の場合には、友人と遊ぶこともなかなか難しくなります。もっとも同じ夜日勤のタクシー仲間を見つければ問題ないのですが。


 まとめ


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  • 昼日勤とは、朝から夕方までタクシーに乗る仕事
  • 昼間は長距離乗る酔客がおらず、割増料金もないため回数を稼げるかが勝負
  • 体力があれば昼日勤でも稼げるが、夜日勤のほうがより稼げる


今回は昼日勤についてお伝えしました。タクシードライバーの多くは隔日勤務で、特に稼ぎたい人は夜日勤を選ぶことが多いです。よって、昼日勤を選ぶのは、主婦の方や、近場でのんびりやりたい60歳以上のドライバーが多い印象です。


しかし今回検討してみてわかったのは、稼ぐために昼日勤をするという選択肢もあるということでした。もしかしたら隔日勤務よりも稼げるかもしれません。ただ、勤務時間は変わらずとも出勤回数が倍増するので、体力、気力が問われる働き方といえます。

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