就職、転職するなら?現役ドライバーが教える東京の大手タクシー会社 ベスト5

公開日:2024/09/19 07:35


タクシー業界に興味をもち、転職する前に業界研究してみようと思う方は多いと思います。ただ、調べてみたところで、特殊な業界でもあって、なかなか実態がつかめないことがあります。実際、著者も転職前に調べてはみようとは思ったのですが、結局あまり調べないうちに近所にある親切にしてくれた会社に入ることにしました。この選択は間違っていなかったと思うのですが、あとから別の会社やグループに入っておく選択肢もあったなぁと何度か思ったのも事実です。


具体的にどういう点で他社に惹かれたのかというと乗れる車種無線やアプリによる配車の多さ専用乗り場の有無などの稼ぎやすさに関すること、職場環境アクセスなどの働きやすさなどです。幸い著者の場合は問題がなかったのですが、社風が合わないというケースもあります。そういった細かいポイントもとても大切なのですが、ここでは東京のタクシー会社やグループの特徴を紹介したいと思います。グループというのは、別の会社が集まって、無線配車やアプリ配車などを共有することです。専用乗り場も共有できるはずです。

大まかな分け方としては「四社」といわれる大手の会社とそのグループがあります。日本交通国際自動車(km)大和交通帝都交通の4つの会社とその関連会社です。この「四社」のことを、1文字ずつ取って、「大日本帝国」と呼ぶことがあります。


他に東京無線という大きなグループがあり、日の丸交通という準大手会社もあります。それ以外にもタクシー会社は多数あるのですが、この文章の目的は大きな傾向をつかむことなので割愛させていただきます。



 四社の筆頭・日本交通


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タクシー業界に強い影響力を持つ川鍋一朗さんの強烈なリーダーシップとともに、東京のタクシー会社の中で頭一つ抜けた存在になっているのが日本交通です。行灯に桜のマークが入っていることが特徴で、タクシードライバーには「」と言われることもあります。1928年に川鍋秋蔵が、ハイヤーの個人営業を開始し、次第に規模を大きくしていきました。1940年にタクシー営業をはじめ、1945年の敗戦後には、政府の指導によってタクシー会社は1000台ずつの車両を持つ4つの会社へと統合されました。これが現在まで続く、大手4社の源流となります。


従業員数は10914人(2022年5月現在、連結)、売上高は業務提携会社を含むと975億1100万円(2022年5月期)です。ハイヤーは1594台、タクシーは7029台です。この台数は、業務提携しているグループ企業のものも入っているようですが、東京を走っている法人タクシーは約3万台なので、その4分の1弱を占めていると考えると、規模の大きさがわかります。


本社は千代田区紀尾井町ですが、タクシードライバーにとって重要なのは営業所です。タクシーについては、板橋、赤羽、千住、品川、新木場、三鷹、葛西の7カ所です。


ドライバー間の噂話を含めて日本交通の話をすると、稼ぐには最適な会社だといわれています。というのも、川鍋会長肝いりのプロジェクトであったタクシーアプリ「GO」が大成功を収めたからです。無線配車を含めると、1乗務あたり10回前後の配車があることも多いと聞きました。流しでお客さまを見つけるよりも、無線配車の単価は高めなことが多い。平均単価を仮に3000円とすると、10回で30000円。タクシードライバーの取り分は18000円となります。この無線配車の強さが日本交通のアドバンテージだと推測できます。


他グループのドライバーとしてはうらやましく思っていました。ただ、美味しい話というのはなかなかないもので、日本交通では接客に求められる水準も高く、売上ノルマも高いと言われています。超能力者レベルの異次元の実力をもつドライバーも多数いるため、そこと比較されることに厳しさを感じることもあるかもしれません。


稼げるけどきついというイメージがドライバーの中ではあります。ただ日本交通の本体ではなく、業務提携しているグループ会社の場合には社風がそれぞれ違うと思われます。そこでグループ会社を狙うドライバー仲間もいました。何にせよ、東京でタクシーをはじめるなら日本交通について知って、自分が日本交通に合うかどうかを検討することからはじめるのは、一つの定石と言えるかもしれません。


 覇権を争う国際自動車(km)


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かつて日本交通と並んで2強として君臨していたkm(ケーエム)ですが、最近は日本交通の勢いに押され気味だと、タクシードライバー仲間で話すことがあります。実際に、タクシーはグループ会社も含めて4349台と、日本交通の7029台よりも少なめです。売上高は約370億円(2022年3月期)です。とはいっても、日本交通を除くと最大手であり、稼ぎたいドライバーにとってもお勧めの会社です。


ドライバーから見た相違点としては、日本交通の「GO」アプリに対して、「S.RIDE」と「フルクル」で対抗している点です。「S.RIDE」は迎車料金を必要とするアプリで、「GO」と似た性質をもっています。現在の利用者数は「GO」のほうが多いようですが、「S.RIDE」も対抗馬として気を吐いています。2022年10月に前年度から2倍まで利用者数が増えたことが発表されています。配車アプリをめぐる争いはいまだ決着がついていないと見るべきかもしれません。


また、迎車料金を必要としないアプリ「フルクル」も独自の地位を築いています。こちらは、普通にタクシーを乗るのと変わらない価格で、タクシーを呼べるので好評を博しています。大通りから一本入った住宅街など、前をタクシーが通過することはあまりないが近くをよく通っている場所などでは、非常に便利です。一方で、そもそもタクシーがあまり走っていない場所では利便性が大きく下がるため、アプリや無線による配車を使うほうが確実です。


 タクシードライバーが働きやすい?大和自動車交通


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四社の1つである大和交通は、上記2社よりも規模は小さいものの、都内を歩いていると頻繁に車両を見かけるタクシー会社です。タクシードライバーが働きやすい会社を作ると言うことをモットーにしているらしく、ドライバーの中では大和温泉と呼ばれることもあります。温々と快適な環境で働けるという意味です。日本交通、kmとはまた違った位置取りの大手タクシー会社といえます。


日本交通やkmの本体(グループ会社ではないという意味)においては、ノルマが厳しいという話を伝え聞くことがあります。一般にタクシードライバーのノルマには、乗務回数(わかりやすくいうと勤務日数)のノルマと、1回の乗務たりの売上ノルマ、他に細かいところでいうとハンドル時間のノルマなどがあります。ハンドル時間というのは、会社によっても異なるようですが、エンジンをかけて車輪を動かしている時間のことです。つまり、15分以上車輪が動かない場合には休憩扱いとなり勤務時間とみなされないということです。


タクシードライバーには、ハンドル時間とは勤務時間であり、タクシードライバーには勤務時間が一定以上求められます。これは労働法上当たり前ともいえるわけですが、「着け待ち」という止まったままお客さまを待つスタイルもあるので、一概にさぼっているとも言えません。なので、一定の売上をあげれば、ハンドル時間のノルマが免除される会社もあります。このあたりは会社によりけりで、ある程度専門知識をつけた上で、担当者に詳しく問い合わせる必要があります。


説明が長くなりましたがノルマという意味においては、大和自動車は少し優しい設定になっているとタクシードライバー間ではいわれています。ただ、楽して稼げるということではありません。どちらかというと、どの程度稼ぐか、どの程度攻めるかを、個人の裁量で決められると考えるほうが正解です。


大和自動車の事業所は江東区猿江、北区豊島、足立区千住関屋町、立川市富士見町、西東京市泉町です。立川市と西東京市は、営業区域が異なるため、東京23区で営業することは基本的にはできないので注意が必要です。業員数はグループ企業もいれて2983名(令和4年3月31日現在)、タクシーの台数は2178台です。


 銀座に専用乗り場アリ!帝都自動車交通


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帝都自動車も戦前から続く歴史のある会社です。ホームページのトップページに、不動産賃貸物件、レンタル収納スペースなどの不動産県連事業についてのリンクがあるのがひときわ目を引きます。従業員数は2000名で、タクシーの台数はグループ会社を含めて1183台と、四社の中では一番小規模です。営業所は、墨田区押上、大田区大森、板橋区大山、荒川区西日暮里です。


京成電鉄の完全子会社であることが特徴で、そのため京成電鉄の駅は、帝都自動車の専用乗り場となっていることがあります。専用乗り場というのは、帝都自動車のタクシー以外が入られない乗り場です。四社にはそれぞれ専用乗り場がありますが、帝都自動車の乗り場でうらやましく感じるのは銀座ナインの乗り場です。


夜の銀座は、タクシーの激戦区で、遠方までお帰りになるお客さまが多い街として知られています。大量のタクシーが集まって渋滞になることが多発したため、今では平日の22時から翌日1時までは乗車禁止地域となります。指定されたタクシー乗り場以外で、お客さまを乗せると重大なペナルティが、ドライバー本人と会社に与えられます。タクシードライバーが絶対にやってはいけないことのひとつが、乗車禁止地域の違反なのです。その銀座に、帝都自動車は専用乗り場を持っています。


高級クラブが軒を並べる銀座八丁目からは少し離れていますが、お客さんは少なくないはずです。専用乗り場には帝都自動車のタクシーしか入られません。そのため、売り上げを安定させられるというメリットがあります。1号乗り場という銀座八丁目の乗り場に向かう際に、帝都自動車の乗り場を通過するのですが、そのたびにうらやましく思っていました。


 1つになった東京無線&チェッカーキャブ無線協同組合


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四社に加えて大きな無線グループを紹介します。2021年4月に、東京無線グループチェッカー無線グループが業務提携するというニュースが流れ、タクシードライバーの中で話題となりました。これまで見てきた4社とは異なり、この2つの無線グループには本体といわれる会社がありません。日本交通という会社が本体で、業務提携しているグループ会社があるという構図になっています。


一方で、東京無線とチェッカーキャブ無線には本体がありません。無線を受けて配車するという意味での本部はありますが、あくまでも協同組合をとりまとめ組織で、タクシーを所有して、タクシー会社を経営しているわけではありません。


東京無線には48社3619台のタクシーが、チェッカーキャブ無線には41社2938台のタクシーが参加していました。この2つが業務提携することで、89社、約6500台が参加する大きな無線グループになりました。東京で最も規模が大きい日本交通とそのグループのタクシーが約7000台であることを考えると、その大きさがわかると思います。大手4社においては、本体とグループ会社でドライバーの待遇や、ノルマなどの営業方針は異なることが知られています。そのため、タクシードライバーとしては、本体に入社するか、グループ会社に入社するかを検討することになります。


一方で、東京無線およびチェッカー無線のグループでドライバーをしようと思った場合には、91社から自分に適した会社を探すことになります。会社によってカラーが大きく異なるのが、この無線グループの魅力です。この記事では紹介できませんでしたが、中堅クラスのタクシー会社や、無線グループに所属しておらず、独自の営業にしている会社もあります。多種多様なタクシー会社があって、それをある程度自由に選べるのが、この世界の面白いところです。個性あふれる会社の中から自分に合う勤め先を探してみてください。


 まとめ


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  • 四社といわれる日本交通、km、大和自動車、帝都自動車をまずチェックしましょう!
  • 四社本体だけではなくグループ会社もチェックしましょう!
  • 東京無線&チェッカーキャブ無線グループや、中堅のタクシー会社、小規模なグループや会社もあります


稼ぎたい方はとりあえず大手を検討するのが定石のようになっていますが、地域に密着していて手堅く高収入を狙える会社や、ドライバーに寄り添ってくれて待遇がとても良い会社などもあります。どういった会社が快適なのかはドライバーの個性や、求めるものによって変わってきます。接客や営業成績に求められるハードルが高くてもかまわないという方は、やはり大手を検討するべきでしょう。一方で、自分に合った会社を見つけて、長く務めていきたいという方は、稼ぎ以外の面にもフォーカスをしながら、会社を探していくことが大切です。

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