面接には嫌な記憶しかなかったのですが、タクシー会社の面接はすごくフレンドリーで驚きました。とある会社の説明会に行ったときは、担当者の方が懇切丁寧に業界のことを教えてくれました。その説明の仕方から、「落とされる面接」ではなく「求められる面接」であると感じて、すごくほっとしました。「この業界は自分を必要としているんだ」と思えると心が楽になり、結局その会社には就職しなかったのですが、いくつかお話を聞いた上でタクシー業界へと入ることになりました。
入社した会社の面接も非常に良い雰囲気でした。いや、面接というよりも単にお話を聞きに行ったというだけだったのですが「あなたはもう合格なので、入りたいと思ってくれたら入れます。入れるようなら、すぐに2種免許を取りに行ってもらいます。費用はこちらで出します」と言われて、自分でもびっくりするほどのスピード感で仕事が決まりました。
その会社に入ったのは非常に良い選択だったのですが、唯一後悔しているのは、求人サイトなどでPRされている「お祝い金」の制度を使わなかったことでした。直接会社に連絡したため支給されなかったのですが、この制度を利用すれば20万円余計にもらえていたと思うと、後から悔しくなりました。タクシーに乗っているとお金のことを考えることが多いので、20万円を稼ごうと思うと、お客さまに何回乗っていただいて……、などと考えてしまうわけです。
このようにスムーズに決まることが多いタクシー会社への就職ですが、中には面接で落ちてしまうケースもあると言われています。この記事では、タクシー会社の面接についてご紹介しようと思います。
タクシー業界は、志望者にとって売り手市場なので、いくつかの条件が不適合でなければまず間違いなく入ることができます。とはいっても、それはどこかしらの会社には入れるという意味であって、会社によっては条件が厳しいところもあります。結論から言うと大手のタクシー会社は面接が厳しい傾向にあります。逆に、大手グループ企業、東京無線などの無線グループはだいぶ緩くなる傾向にあります。もしかしたらその中にも厳しい採用基準をもつ会社もあるかもしれませんが、全体としては入りやすい傾向になります。
さらに、どこのグループにも所属していない会社の場合はさらに入りやすくなるようです。本当か嘘かは知りませんが、さらに人手不足だった一昔前の面接で、健康状態だけを確認されたあと「シャツ脱いで後ろを向いて下さい。入れ墨ないですね。はい合格です」というような面接もあったと聞きました。だいぶ尾ひれはついていると思いますが、当時の面接の通りやすさを示すエピソードではないかと思います。
では、タクシー会社に入れないケースを考えてみましょう。まず、一般論として、会社に損失しか与えないような人材を採用することはありません。特に礼儀や社交性については一定以上は求められます。一定以上といっても、普通に言葉の受け答えができれば大丈夫なのですが。お客さまと会話するのも仕事のうちなので、会話ができるかどうかは大切です。私が受けた面接の場合には、ちゃんと会話ができているから大丈夫だろうという判断もあったのではないかと思います。お客さまと失礼のないように受け答えしないといけませんから、何を言っているのか聞こえないとか、受け答えが明らかに無礼という場合には不適正ということになります。
実際に、タクシードライバーをしているとお客さまの言っていることがよく聞こえなくて何度か聞き返してしまうことはよくあります。小さな声でぼそぼそっと喋る方が「そこの角を右曲がってすぐに左入って、三つ目の交差点を斜め後ろに折り返して」と言われることがあります。こうなると本当に聞き取りが難しいです。そうなった場合、お客さまに不快感を与えないようにやりとりをする必要があります。「え?なんですか?」などといったらクレームになってしまうかもしれません。
「はい、かしこまりました。まずは……、こちらの角を右折ですね。右折したあと、曲がるのは……、あちらのコンビニがみえるところを「右」でよろしいですか?」というように復唱しながら確認していきます。この場合、2つめに曲がる角が右と左が間違っているのですが、そうなるとお客さまが「いやいや、違う違う。コンビニのところを左だよ、右じゃなくて」と教えてくれます。「失礼いたしました。右折したあとに、コンビニのところを左折いたします。」こういったやりとりができるかどうかがタクシードライバーの適性として必要なので、そこは面接時に見ていると思います。こう言うとハードルが高いように思ってしまうかもしれませんが、しっかりとした研修もありますし、実際に業務をしながら覚えていくところもあるので、心配いりません。普通の会話ができれば大丈夫です。
もう1つ必要なのは、免許証が綺麗なことです。違反や事故をすることで違反点数が加点されていきます。タクシードライバーはずっと路上を運転する仕事なので、違反や事故をしてしまう可能性も高いです。そのため、プライベートでも違反ばかりしてしまう人は、タクシードライバーになるとあっという間に免許証を失います。
違反点数が6点になると免許停止処分を受けます。免許停止になっても、停止処分者講習を受ければ停止期間を減免することができるのですが、何度も免許停止処分を受けていると、次第に罰則が重くなっていきます。例えば4回目の免許停止になってしまったドライバーは、120日間の免許停止処分となり、停止処分者講習12時間を受けることになります。ちなみに長期講習の受講料は25200円で、こちらはドライバーの自腹となります。講習を受けた結果、40~60日処分期間が短縮されますが、逆に言うと、60~80日は免許証がないわけです。となると2〜3ヶ月は仕事ができないわけです。
違反でタクシードライバーが出勤できないだけならまだいいのですが、大きな事故を起こしてしまうと、会社に損害が出てしまいます。そのため、事故歴がないかどうか、事故を繰り返していないかも確認されるでしょう。タクシー会社によって良いタクシードライバーとは、無事故かつ無違反で、欠勤することがなく、一定以上の売上を上げ続けてくれて、他社に転職しないドライバーを指します。その中でも無事故無違反でやっていけるかどうかは、非常に重要視されるはずです。
大手のタクシー会社は面接基準が厳しいという話はありますが、基本的にはタクシードライバーに求める水準は同じです。あとは、より高いレベルのサービスができるかを厳しくチェックされるのではないかと思います。特に大手でノルマが厳しい会社の場合には、それを達成してやっていけると判断させるかどうかが重要です。
基本的には一般の面接と同じですが、スーツで行く必要はありません。もしかしたら大手の場合や、ハイヤードライバー志望の場合には、スーツを着ると印象がいい可能性もあります。例えば現在建築作業員の仕事をしていて、その仕事帰りに会社に寄るということもあるかもしれません。そういう他業種からの転職者が多い業界なので、一言断りを入れておけば問題ないこともあると思います。
ただ、やはり社会人として考えるべきなのは、相手方の服装に合わせることです。特に大手のタクシー会社は、内勤の組織も大きいため、面接を担当する内勤さんは普通のサラリーマンのようなスーツ姿のはずなので、こちらもスーツやジャケットを着用するほうが印象は良いと思います。
接客をする仕事なので、髪の毛は短く切ってしっかりセットしておくこと、ヒゲを剃って清潔感のある身だしなみをすることは大切です。あとは時間に遅れないようにしましょう。どの会社の面接でも一緒ですが、タクシードライバーはご予約をいただいたときには時間の前に駆けつける必要があります。なので、他の仕事と同じように、時間が守れるかどうかはしっかり見られます。
面接での注意点としては、丁寧に接客できそうかともう1点、体力がありそうかも大切だと思います。というのも、タクシードライバーで一定以上の売上を出すためには体力が必要不可欠だからです。体力があって、夜にも強いことがPRできると良いでしょう。運転経験については必ず聞かれるので、その通りに答えればいいと思います。
トラック運転手の経験があるなどの、職歴があると有利とは思いますが、まったくの未経験でもタクシードライバーになることはできます。さらにいうならば、免許をまだ取得して3年経っていない場合でも、合格することもあるでしょう。普通免許を取得後3年間経たないと2種免許を取得することはできません。しかし特別な講習を受けると、その制限が解除される制度もあります。
比較的受かりやすいタクシードライバーの面接ではありますが、万一落ちてしまったときはどうしたらいいかについて考えてみましょう。まず、大手タクシー会社を落ちてしまった場合には、グループ会社を受ければ合格する可能性があります。どんな会社があるのかをまず探してみましょう。
大手グループ以外にも準大手や無線グループなどもありますので、こちらもチェックしましょう。タクシードライバーとしてよほど不適格でなければどこかしらには受かる可能性が高いです。それでもどうしても受からないのであれば、タクシー会社からするとどうしても難しい要素があるのだと思います。聞けば教えてくれることもあると思うので、思い切って聞いてみましょう。
タクシードライバーのように運転する仕事はどうしても適性がついてまわります。もしも接客に問題があるようでしたら、路線バスや観光バスなどを志願してみるのもいいと思います。運転に問題があるようでしたら、危険なのでタクシードライバーはやめたほうがいいと思います。自分が怪我するだけならいいのですが、お客さまや無関係な人を傷つけたり、場合によっては命を奪ってしまったりする可能性がある仕事だからです。運転の適性に問題があると判断された場合には、運転する仕事にはつかないことを強くお勧めします。
運転適性に問題がなく、免許も綺麗で、会話に問題がない場合でどうしても面接に通らないと言うことになると……。それがちょっと想定しづらいのがタクシー業界です。ドライバーには色々な人がいて、色々な背景があります。会社を経営して潰してしまった人もいれば、夜逃げ同然で出てきた人もいます。そこをあまり詮索しないのがタクシー業界の良いところでもあります。
タクシー会社の面接についてご紹介しました。そういえば周りに落ちた人の話を聞いたことがあまりないのですが、思えば周りにいるのはタクシードライバーばかりなので当たり前でした。大手だけ弾かれてしまったという人にすら会ったことがないのですが、人づてには聞いたことがあります。文中で運転の適性について言及しましたが、2種免許の取得時や、適性試験などもあるため、入社する方向で考えてから確かめる方法もあります。それでも、あまりにも苦手意識が強い場合には、避けたほうがいい職種です。逆に運転が得意で、運転しているのが大好きという場合には、仕事としてずっと運転をしていられるので楽しい仕事でしょう。そういった理由もあって、タクシードライバーには車好きの人が多いのです。ちなみにタクシーは、天然ガスを燃料としているため加速が遅く、あまり馬力のある車を使っているわけではありません。そのためプライベートではかなり性能のいい車に乗るというドライバーもいます。