都内のタクシードライバーたちが集まるランキング5

公開日:2024/09/19 14:43


タクシードライバーが集まるところはどこかと問われても、意外と思いつかないものです。というのもタクシードライバーは孤独な仕事で、仕事中は集団行動をしないからです。考えてみれば集団行動ができないと言ってもいいかもしれません。そんな中でなんとか考えてみると4つまではあったものの5つめがどうしても思いつきません。そのくらいのレベルの話です。なんとか5つを考えたのですが、6つめは想像もできません。


このあたりにタクシードライバーの働き方が表れているように思います。それは他のタクシーがいない場所を狙う方が稼げるからです。空車のタクシーが多くいるところに行かないことが鉄則で、交差点で前の空車が直進したら自分は左折します。直進も、右折も、左折も空車が行ってしまったら、どこかで車を停車して他のタクシーがいなくなるのを待ちます。これは、特殊なテクニックではなく、スタンダードな営業の仕方です。というわけで、若干苦しさはありましたが、ベスト5を挙げてみますのでご覧になってみてください。



 5位 営業範囲内の郊外

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苦労した第5位は「営業範囲内の郊外」としました。どういうことかというと、そこにタクシー会社があるからです。実はタクシー会社は郊外にあることが多いです。23区でいうと、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区、大田区などに多いです。どうしてそうなるかというと、タクシーの台数分の駐車場が必要になるため、地価の高い地域ではコストがあがってしまうからです


もちろん、地価の高い場所にあるタクシー会社もありますが、少数派です。多くのタクシー会社は郊外にあり、タクシードライバーは郊外から都心を目指すことになります。もちろん、そのまま郊外で営業するドライバーもいますが、都心に行かないと稼げないというのが業界の常識です。なので、郊外にいるとタクシーを目にする機会が増えます。橋を渡って都心へと向かう時間は、4台も5台も空車のタクシーが連なっていることもあります。


 4位 LPガスステーション

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タクシーのほとんどはガソリンではなくLPガスを燃料としています。ガソリンよりもコストが低いのですが、燃料を補給できる場所は限られています。ちなみにアクセルを踏んだ時の加速感があまりない以外は、ガソリン車とあまり変わりません。余談ですが、LPガスのタクシーを普段運転しているせいなのか、あるいは、単なる車好きが多いからなのかは知りませんが、プライベートでは馬力のある車を選ぶドライバーもいます。


タクシードライバーは帰庫する途中でLPガスステーションに寄っていきます。大きいタクシー会社の場合には営業所にステーションがある場合もあります。なお給油を忘れてしまうのは次のドライバーに迷惑になります。そのため満タンでない車の中に「すみません。おせんべいをどうぞ」というような趣旨の謝罪と贈り物が置いてあることがありました。帰庫する途中に立ち寄る都合上、乗務が終わるドライバーが多い午前1〜4時頃は、LPガスステーションにタクシーが行列を作っていることがあります。


ほとんどのステーションではトイレの他にジュースを購入するくらいしかできませんが、場所によっては車を止めてタバコを吸えるようになっているところもあります。また、釣り銭が不足した際に両替することができる場所もあり、タクシードライバーの緊急避難所のようになっています


 3位 タクシー乗り場


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タクシーが自然と集まる場所と言えばタクシー乗り場です。タクシー乗り場は電車の駅の付近や、役所や大型スーパー、ホテル、空港などにあります。ほとんどタクシーが並んでいない乗り場もありますが、時間帯によっては100台以上が並ぶ乗り場もあります。筆者は、タクシーの仕事を始めるまでは、乗り場に並ぶのがタクシードライバーの仕事だと考えていました。同じ乗り場にひたすら並んで、たまには気まぐれに違う乗り場に並ぶ。そんな日々が訪れるものと思っていました。だから、乗り場での暇つぶしをどうしたらいいかというのが、仕事をしはじめる前に考えていたことでした。しかし始めてみると、現実はまったく違うものでした。


というのもタクシー乗り場に集まるのは「着け待ち」というスタイルのタクシードライバーです。「着け待ち」を中心の営業をしていると、一定のお客さまには確実に乗っていただけることになりますが、どうしても単価は小さくなります。例えば駅の乗り場の場合ですが、そもそも電車やバスで駅までは来ているわけなので、それほど遠くまで移動することは滅多にありません。遠くに行く場合には、電車でいけばいいからです。もちろん、ロングが出やすい乗り場もあります。品川駅や東京駅のような新幹線が止まる駅です。あるいはバスターミナル空港の乗り場などもロングが出やすくなります。しかしながら、そういった乗り場はタクシーが多いため待ち時間も長くなります。楽して稼ぐ方法はないということです。


着け待ち」のドライバーは、基本的にはあまり稼ぐことはできません。稼ぐドライバーは「流し」という営業をしています。「着け待ち」の逆と考えるとわかりやすいのですが、乗り場に並ぶことなく、路上を空車で運転しながらお客さまを探すスタイルです。こちらのほうが長い距離を移動する方が多く、また、お客さまを見つける頻度も高いです。また、並んでばかりいると道を覚えられないため、新人のうちは「流し」営業が推奨されます。乗り場に入るのは禁止という会社もあります。「着け待ち」をしだすと楽を覚えて稼ごうとしなくなるからではないかと思いますし、道を覚えて「流し」を極めていかないとどうしても収入が上がらないので、退職されてしまうリスクがあるからです。


というわけで、駅前の乗り場は、こう言ってはいけないのですがガンガン稼ごうというタイプのドライバーは多くありません。一日の売上はそこそこでもいいというドライバーが集っています。同じところでやっているので顔見知りも多く、暇な時間は雑談しているのを見かけることがあります。


 2位 休憩場所

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タクシードライバーが集まる場所と言えば休憩の名所です。一番有名なところは港区の青山墓地です。公園と墓地に挟まれた通りは、左右ともタクシーがびっちり止まっています。そして、トイレにいったり、ジュースを飲んだり、タバコを吸っていたりします。もっとも、もしかしたら路上でのタバコは禁止だったかもしれません。筆者は喫煙者ではないのでまったくわからないのですが、23区では行政区が変わるとタバコのルールも違うそうです。


喫煙者は、タクシーを止めることができる喫煙所をしっかり把握しています。ただ、売上を高めることを目指すドライバーの中には、タバコを吸っている時間がもったいないと禁煙してしまう人もいます。タクシーの仕事はさぼろうと思えばいくらでもさぼれてしまうので、タバコを吸い始めるとキリがないのかもしれません。港区の青山墓地が人気なのは、休憩後すぐに六本木、青山、赤坂や表参道などに営業に出られることです。お客さまが多いエリアなので、運が良ければエリアに入って1分以内にお客さまを見つけることができます。しかも、ミドル距離やロングであることも多いです。なので、青山墓地の周りで休みながら、営業のチャンスをうかがうというタクシーが多いわけです。


他にも新宿西口の公園の周りや、渋谷の代々木公園の周りなども休憩している車が多いのですが、渋谷や新宿という営業しやすいエリアが近いことが人気の理由です。もちろん、江戸川区や葛飾区の公園の周りや河川敷などに休憩できるスポットはあると思います。しかし、そんなところで休憩していても非効率的なので、なるだけ都心に近いところで休むことが多いのです。そのあたりで営業しているドライバーは一度営業所に戻ることもあるようです。


少し話はそれますが、タクシードライバーはタクシーを使って自宅に帰ることもできます。休憩時間をどこでどう過ごそうと自由なので、自宅で眠っていても問題がないわけです。もちろん、駐車場をしっかりと探すことは大切です。駐停車違反をしてしまうと大きな罰則があるからです。免許証の点数もしっかり引かれてしまいます。実は筆者も、コロナ禍でまったくお客さんがいない時は自宅に戻って5時間ふて寝をしたことがあります。上司に「自宅で眠ってもいいですか?」と聞いたことはないですが、休憩時間はどこでどうしていても自由というのが日本の法律で決まっているので仮眠を取ることであれば許されるはずです。ただし、社内規定などで禁止されている場合はその限りではありません。


タクシードライバーをしているとどうしても夜に眠れないので、日中に眠くなる時があります。そういうときは仮眠を取ります。仮眠ができる休憩場所は限られているため、同じ場所にドライバーが集まってくるわけです。最低条件としては、トイレがあって、タバコが吸えて、コンビニがあることでしょうか。コンビニの駐車場に止めて休むのは短時間ならばいいのですが、長時間になってしまうとお店に迷惑がかかるので厳禁です。


 1位 稼げる場所

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タクシードライバーが一番集まってくる場所は「稼げる場所」というのが正解だろうと思います。少し抽象的な言い方ですが、稼げるにおいを感じると、どこからともなくタクシーが集まってきます。例えば夜の銀座です。夜の銀座はまるで戦場のような雰囲気があります。路地という路地をタクシーが埋めて、お客さまを探す光景は非常に面白いです。もっとも、慣れているお客さまは、目の前のタクシーを拾わず、昭和通りや中央通りまで出てからタクシーを拾います。そのほうが渋滞に引っかからずに早く帰ることができるからです。


他にも渋谷の道玄坂など109の周辺がタクシーで埋まることがあります。渋谷はお客さまが多いエリアなので、そこにいるだけでチャンスがあるからです。筆者は渋谷が苦手で、あまりうまく営業できないのですが、得意なドライバーはいつもロングのお客さまを見つけます。逆に私は新宿が得意です。新宿はかなり酔っ払っているお客さまが多く、短距離しか移動されないことが多いので、敬遠するドライバーが多いです。しかし、それは逆に高回転で営業できるということでもあります。時間帯にもよりますが、慣れると1時間に7組も乗せることができるので、客単価が低くてもそこそこ稼ぐことができます。


ちなみに、集まっているタクシーが大手の高級な車体か、そうではないかでそのエリアが稼げるかどうかがある程度わかります。都心は大手のジャパンタクシーだらけなのですが、少し都心を外したエリアになってくると黒や黄色のクラウンが増えてきます。それによってある程度、その町の稼ぎやすさを類推することができます。もちろん、本当に稼ぎが違うかどうかは実際にやってみないとわかりませんし、熟練のドライバーはその瞬間にお客さまがいそうかどうかを嗅ぎ分けて、すぐに空車から離脱して実車になります。


タクシー業界用語で「ゾンビの日」というものがあります。これはお客さまがゾンビのように次から次へと湧いてくる状態を指しています。お客さまをゾンビ扱いするなんて失礼な話なのですが、体験してみるとよくわかります。本当に次から次へと路上へと出てきて進路を塞いだり、「なんで乗せないんだよ!」とボンネットを叩いてきたりします。お客さまのほうもタクシーがなかなか捕まらずにイライラされているのだと思います。こういう時は逆にタクシーがいない街になります。こうなってしまった時のアドバイスとしては、お客さまの場合は、街の郊外のほうに向かって戻ってくるタクシーを狙うことです。タクシードライバーとしては営業が終わったらすぐに戻って少しでも「ゾンビの日」の恩恵をうけることです。


 まとめ


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  • タクシードライバー集まるは実はあまり多くない
  • ガスステーションや休憩場所などの集まりやすいスポットはある
  • やっぱり一番タクシーが多いのが夜の繁華街


というわけでタクシーが集まってくる場所について書いてみました。筆者としてはタクシーが集まっているのをみると、これでは仕事にならないなとうんざりしてしまうのですが、それでも都心に行かないと勝負にはなりません。なので、少しでもタクシーが少ない路地などを選んで進んで行きます。この記事によって、タクシードライバーという人たちの生態が少しわかったのではないでしょうか。金曜日の夜などにタクシーに乗った際は、「今日はゾンビ出てますか?」と聞いてみると面白い話が聞けるかもしれません。

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