ドライバーたちが嫌う都内のエリア ワースト5

公開日:2024/09/19 07:35


東京都内でタクシーの営業をしていると、場所と時間によってお客様の傾向がまったく違うことがわかってきます。例えば昼間の銀座は、お買い物をしているご婦人や、ビジネスマンがお客さまの中心です。夜になるとお酒を飲んだお客さまを家までお送りすることになります。


銀座がある中央区、六本木や麻布などがある港区、官公庁などがある千代田区はタクシードライバーが稼ぐためには避けられない場所です。こういった東京都の都心部で営業をするのと、大田区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区などの周縁部ではまったくやり方が違ってきます。お客さまの雰囲気も随分と違ってきますし、接客の仕方も変わってきます


このように営業する場所によってかなり表情が違うのが東京という街の面白さですが、ドライバーによっては好きな場所と苦手な場所が分かれます。今回は、タクシードライバーがよく話している嫌いな場所ワースト5をお伝えしたいと思います。



 5位 エリートビジネスマンが集う昼の都心

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タクシードライバーをして稼いでいくためには昼間のビジネス街と、夜間の繁華街は避けて通れません。しかし、ビジネス街については苦手にしているドライバーが多く、避けることもよくあります。


まず、ビジネスマンはタイムイズマネー少しでも時間を効率化するためにタクシーを利用することが多いです。場合によっては「次の打ち合わせまで10分だから急いで!」などと言われたりもします。逆に下町でお買い物帰りの奥様に乗っていただく場合には、のんびりとした雰囲気で雑談していることが多いです。もちろん一言も会話がない場合もあります。いずれにせよ、差し迫って1分1秒を争うというケースは多くありません。


タクシードライバーとしては、お客さまが急いでいようが急いでいなかろうがあまり関係ありません。慣れてくると急いでいるお客さまのほうが早く降りてくれるのでありがたいとすら思います。どんなときでもやることは同じです。最速、最短で目的地へ向かいます。ただ、プレッシャーを感じるから苦手としているドライバーもいます。


少し嫌な話にはなりますが、ビシッと高そうなスーツを着て都心で働いているビジネスマンを見ると、引け目を感じてしまうというドライバーと話したことがありました。何だか見下されているような感じがするのだそうです。何らかのコンプレックスが刺激されるというのは筆者もわかります。ただ、職業に貴賎はなく、タクシードライバーの仕事はお客さまに乗っていただくことで、誇りをもっていいはずです。需要が発生しやすいビジネス街は稼ぎどころなので、収入を増やすためには避けては通れません。


 4位 とにかく道が複雑な下町

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下町地域は筆者も個人的に苦手としています。根本的な問題として、所得水準が高いわけではないのでお客さまが多くないことがあげられます。タクシーの需要については、所得水準が高く、交通が不便である場合に発生します。そういう意味で、所得が最も高く、地下鉄が中心で公共交通機関の利便性が低めな港区が高需要になるわけです。その逆が下町です。下町のお客さまの多くは、近所の病院までいくお年寄りや、お買い物客です。つまり、高単価のお客さまが多くありません


都心まで移動する場合には電車を使うことがほとんどでしょう。もちろん、単価が低くてもお客さまを頻繁に乗せることができれば十分に営業は成立しますし、実際にそういうスタイルのドライバーもいます。なので、下町狙いもありなのですが、個人的に敬遠してしまうのは、道の複雑さです。


上野あたりまでならまだ何とかなりますが、町屋のほうまで行くと魔境のように感じられてきます。さらに住宅街の奥まで入っていくと、二度と出られない迷宮に入り込んだような気持ちになります。最近はナビがあるから何とかなるのですが、ナビがない時代は会社に電話で泣きついて、どうやって帰るのかを尋ねた、などという話も聞きました。


一度路地の奥まで入り込んでお客さまがご降車したあとのことでした。ナビが指し示す通り登り坂を進むと道幅が狭くなり、ついには車が通れなくなりました。途中、直角に曲がる角が連続するレース用語でいう「シケイン」のような道もありました。左右には擦ったあとが大量にあります。しかし、あるところで限界です。これ以上進めません。ということは、バックで戻るしかありません。結局100メートル以上の細い下り坂をバックで戻ることになりました。タクシードライバーではなかったら車がボコボコになっていたかもしれません。もしも擦ってしまうと非常に面倒な始末書を書かねばならないため、こちらも擦らないように必死です。


ちなみに、擦らないためのテクニックですが、一度車を降りて障害物との距離を確認するのが確実です。面倒がらずにサイドブレーキをしっかり引いてパーキングに入れシートベルトを外してから一度降りて、何センチ空いているかを確かめます。誇張ではなく左右ともミリ単位になることもあります。特に稼ぎが大きいわけではないのにそういう状況に追い込まれやすいので下町は敬遠するというドライバーもいます。ちなみに道が複雑で有名な世田谷区も似たような状況ですが、こちらは稼げる可能性が大きいこともあり、逆に得意としているドライバーを見たことがあります。


 3位 銀座

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夜の銀座は東京のタクシードライバーにとって最も華のある場所です。なぜならば最も稼げる場所だからです。銀座からタクシーで長距離の帰宅をするお客さまがとても多いため、一時期は銀座にタクシーが詰めかけて交通渋滞でタクシーがまったく進まなくなってしまっていたとのことです。所轄の警察署がタクシードライバーへの取り締まりを本格的に始めたこともあり、タクシー業界も様々な自主規制を始めました。稼げる場所という意味ではまったく変わっていませんが、規制が多く、罰則も非常に厳しいために敬遠するドライバーがいます


この規制は都内で一番厳しいものです。特に昭和通り、晴海通りなどに囲まれたエリアは乗車禁止地域となり平日の22時から翌日1時までは、お客さまを乗せることはできません。もしも規制を無視して乗せてしまうと、非常に厳しい罰則がドライバーと、会社にも加えられます。この罰則は会社によっては倒産してしまうほどのインパクトがあります。銀座や羽田空港などの優良タクシー業者以外だけしか入れない乗り場に、会社ごと入れなくなってしまうからです。となると会社の売上は大きく減りますし、ドライバーからの不満も大きくなり移籍が相次ぐことが予想されます。銀座での違反は非常に大きいため、腰が引けるドライバーが多そうです。


乗禁区域以外にも、銀座特有の「時間帯によって右折の可否が変わる」交差点があるなど、少し慣れが必要な無料で使える高速である東京高速道路などがあります。何よりお客さまがタクシードライバーは道を知っていて当たり前と考える街なので、地理に自信がないから敬遠するということもありそうです。


夜の銀座は稼ぎどころなので腕自慢が集まってきますが、だからこそ敬遠するというドライバーもいます。そういうドライバーは例えば錦糸町や池袋などの駅の乗り場で、一発逆転の長距離客を探していることもあります。


 2位 大久保

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2位は大久保にしました。大久保はコリアンタウンが近くにあり、韓流系のお店が多い街です。といってもそれが敬遠される理由ではありません。最近は若い方が多いため、タクシーに乗らないことが多いのです。そして、歌舞伎町に近いというのが最大のポイントです。歌舞伎町のすぐ隣にあり、歌舞伎町で働いている方が住んでいることが多いのですが、歩くと少しあるので、歌舞伎町までタクシーに乗るお客さまが多いです。すると運賃はワンメーターなので売上としてはいまいちですそもそも新宿区自体が、新宿周辺に住んでいて、タクシーで職場との往復をする方がとても多いです。そのため、移動距離は短い傾向にあります。お客さまは多いけど、それほど稼げないのが新宿区です


大久保は、街の真ん中に大久保駅と新大久保駅があるので、長距離移動する方も多くありません。筆者は大物狙いよりも数を稼いで売上を安定させるほうが好きなこともあり、大久保はよく行く街です。ただロングのお客さまに出会うことは非常に少ないです。もちろん、終電後ならばチャンスはありますが、それは他の繁華街でも同じことです。好みが分かれるところではありますが、敬遠するドライバーも多いです。


 1位 新宿歌舞伎町

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1位は間違いなく新宿区の歌舞伎町です。お客さまの数こそ多いものの、泥酔している方は多いですし、やんちゃな方も多いです。歌舞伎町で嫌な思いをしたドライバーは非常に多く、彼らはそれに懲りて二度と歌舞伎町には行かなくなるそうです。それは非常に露骨で、空車時は絶対に歌舞伎町に近づかないようにすることを徹底します。万一歌舞伎町行きのお客さまにご乗車いただいたときは、ご降車後、回送にして逃げるドライバーもいます。回送はみだりに使ってはいけないことになっているのですが、休憩する場所に向かうときは認められています。なので、歌舞伎町から出たところのトイレに向かえばセーフとなります。


路上で殴り合いをしていて血だるまになった男が乗ろうとしてくる、ドアをあけた瞬間殴りかかってくる、反社会的勢力のようにしか思えない見かけで罵声を浴びせてくる……、などのバイオレンスなエピソードが山盛りです。


無茶な飲み方をしている人が多いので、嘔吐率が高いことも敬遠される理由です。警察沙汰も非常に多く、料金を割引するように強く言われたり、信号を無視しろと言われたり……。その上、長距離を移動する方は比較的少ないので、なかなか割に合いませんもちろんたまにロングはありますが、新宿は高速道路の入り口が遠いため、すぐに高速に乗ってビューンとロングというわけにはいきません。よくあるのが延々と青梅街道を西進して行くというルートです。下道なのでスピードがでないので、往復するのにかなり時間がかかってしまいます。この差はかなり大きいです。例えば、7000円のお客さまをお送りするのに往復で1時間半かかることもありますが、銀座から高速に乗った場合には1時間以内に戻って来られて1万円を超えることもあります。効率が圧倒的に違うのです。


一番助かるお客さまは終電の少しくらいまで付き合いで飲んで、翌朝の仕事もあるのでタクシーで颯爽と帰る方です。一方で、困ったことになりやすいのが、翌日の予定が特になく、限界ギリギリまで飲む方です。特に、お金はあまりないけど、見栄でタクシーに乗ってしまったというようなケースでは、とても大変なことになります……。


と、ネガティブなことばかり書いてしまいましたが、筆者自身は新宿が好きです。私がタクシーの仕事をやっていて一番楽しいと感じるのは、面白いお客さまに出会えることだからです。良くも悪くも、新宿はネタの宝庫です。知り合いにこっそり披露した場合に一番受けるのが新宿での壮絶なエピソードです。そして、新宿はタクシードライバーに人気がないせいもあって、かなりお客さまを乗せやすいです。うまく使うと、売上が安定しやすいのが新宿の魅力と言えます。その代わり営業回数も増えますし、たまに警察沙汰になって酷い目にあうこともありますが、それでも私は新宿歌舞伎町が好きです。


 まとめ


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  • 稼げる場所と敬遠される場所は紙一重
  • 誰に聞いてもワーストなのは恐らく歌舞伎町
  • 歌舞伎町の営業を極めるのがタクシーの醍醐味だと感じるドライバーもいる


ドライバーたちが嫌う東京都内のスポットを考えてみましたが、あくまでも一つの見解で例外は数多くあります。よく考えると、筆者の私が新宿と大久保が好きなので、筋の通っていない記事になっているかもしれません。


しかし、実際に他のドライバーから聞いていくと、歌舞伎町がワーストというのは間違いないと思います。タクシードライバーには本当にいろんな人がいて、彼らに話を聞くと「売上をあげるコツは他のドライバーが嫌がるようなことを率先してやる」ことだと教えてくれます。誰もが楽して簡単に稼ぎたいと思っていますが、そこを逆手にとって「多くのドライバーが嫌う場所に行く」という自分だけの営業方法を見つけて稼ぐわけです。例えば、ホストの皆さんを送迎するのは苦手とするタクシードライバーも多いですが、私の場合はホストのお兄様がたはお得意様でした。色々なドライバーがいて、色々な営業方法があるのがタクシーの面白いところです。今度タクシーに乗ったときには、ドライバーの得意な営業スタイルについて質問してみてください。それぞれ全然違うことを言うはずなので、きっと面白いと思います。

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