これからのタクシー事業を考える 大阪でも東京大手のフランチャイズ 日交G関西・毎日タクシー出発式(TAXI JAPAN412号)

公開日:2024/09/20 00:52


日本最大のタクシー市場である東京都特別区・武三交通圏では、日本交通や国際自動車などの大手事業者が、中小タクシー事業者と業務提携してフランチャイジー化するグループ化の動きが拡大している。大手事業者が利用者の囲い込みのための専用乗り場の開設や配車アプリへの対応、キャッシュレス決済システムの導入による利用者サービスの向上、新卒に代表される乗務員採用の強化と接遇水準の底上げ、JAPANタクシーへの集中的な代替による車両の高機能化などに組織力や企業体力を生かして計画的に取り組むことで、他のタクシーとの差別化・ブランド化をタクシー事業のIT化の流れの中で急速に進めている。これに慢性的な乗務員の不足と高齢化、営収の低迷に悩む中小タクシー事業者が、様々なコストをかけても所属する無線協組などを脱退して大手のフランチャイジーになるという決断をするケースが現在、そして今後も増える情勢となっている。その動きが、大阪にも波及することになった。


大阪と東京を中心に関西・関東・中部・中国・東北でタクシー約3300台(うち大阪1150台)を保有して事業展開する梅田交通グループ(古知愛一郎代表)はこのほど、大阪市淀川区の毎日交通(古知愛一郎社長)を分社する形で同本社営業所内に毎日タクシー(古知昭一郎社長、タクシー20台)を設立。この毎日タクシーが、東京・日本交通(金田隆司社長、大阪市福島区)と業務提携し、東京大手・日本交通グループ関西のフランチャイジーとしてグループ会社となり、日本交通仕様のJAPANタクシー20台を揃えて5月23日、大阪市淀川区の毎日タクシー本社営業所において、日本交通の川鍋一朗会長、日本交通グループ関西(東京・日本交通)の金田隆司社長、東京で日本交通グループに加盟する飛鳥交通の川野繁社長、毎日タクシーと同じく日本交通グループ関西のフランチャイジーとなった大阪小豆島タクシーグループ・コスモキャブ大阪(大阪市淀川区)の髙橋昌良社長らが来賓として出席して「日本交通グループ関西 毎日タクシー株式会社出発式」を盛大に開催した。〈本紙編集長=熊澤 義一〉



大阪で複数の事業協組に加入


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出発式が行われた大阪淀川区の毎日タクシー本社営業所の駐車場には、梅田交通グループ(古知愛一郎代表)の大阪の傘下タクシー会社が所属する関西ハイタク事業協同組(関協、毎日交通)、大阪タクシー交友会協同組合(交友会、北港タクシー)、大阪タクシー親交会協同組合(親交会、金星タクシー)、大阪府タクシー事業協同組合(大協、近畿交通)、ワンコイン(淀川交通)、そして日本交通仕様の日本交通グループ関西(毎日タクシー)のタクシー車両が一堂に置かれ、さらには、運行受託している大阪メトログループのAIオンデマンドバス、大阪府危機管理室から委託を受けているコロナ軽症者の搬送車などが展示され、梅田交通グループの古知代表が、大阪の各無線協同組合や大阪タクシー業界の現状、大阪メトログループのAIオンデマンドバスなどについて川鍋会長や川野社長らに説明を行った。


東京でも日本交通Gに加盟


毎日タクシーが東京・日本交通と業務提携して日本交通グループ関西に加盟した梅田交通グループは、大阪と東京を中心に関西・関東・中部・中国・東北でタクシー約3300台(うち大阪1150台)を保有して事業展開しており、東京では、イースタンモータースを中心にタクシー事業を展開しており、東京梅田交通と東京梅田交通第二が日本交通との業務提携によるフランチャイジー事業者として日本交通グループに加盟している。


また、大阪では、タクシー1150台を保有し、傘下各社が、関西ハイタク事業協同組(関協)、大阪タクシー交友会協同組合(交友会)、大阪タクシー親交会協同組合(親交会)、大阪府タクシー事業協同組合(大協)などに分かれて加入しており、そこに日本交通グループ関西が新たに加わることになった。 古知代表は関協理事長や大阪タクシー協会副会長などの大阪業界要職を務めている。


東京・日交は8年前に大阪進出


東京・日本交通を中心とする日本交通グループ関西は、東京・日本交通を2014年3月設立して難波営業所を開設したのが始まりで、2016年3月には大阪大手のさくらタクシーおよび同グループ会社の全発行済株式を日本交通が取得し、現在の日本交通グループ関西の母体が出来上がった。さらに、昨年9月には老舗のナショナルタクシーも買収し、営業基盤の強化を受けて、大阪におけるフランチャイズ提携によるグループ化の素地が整うことになった。


日本交通グループ関西は、今年5月末現在で864台にまで拡大、これに毎日タクシーとコスモキャブ大阪がフランチャイジーのグループ企業として加わることになる。日本交通グループ関西の金田社長は、2年後をメドに1000台体制を目指す意向を示している状況だ。


来賓に川鍋会長、川野社長ら


毎日タクシーの出発式には、日本交通(都内千代田区)の川鍋一朗会長、日本交通グループ関西(東京・日本交通、大阪市福島区)の金田隆司社長、東京で日本交通グループに加盟する飛鳥交通(都内新宿区)の川野繁社長、毎日タクシーと同じく東京・日本交通との業務提携でフランチャイジーとして日本交通グループ関西に加盟した大阪小豆島タクシーグループ・コスモキャブ大阪(大阪市淀川区)の髙橋昌良社長が来賓として出席し、祝辞を述べた。


また、日本交通の川鍋会長から毎日タクシーの乗務員代表に、日本交通グループの乗務員マニュアルである「スタンダードマニュアル77」が手渡された。


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飛鳥交通の川野社長が祝辞


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東京都特別区・武三において日本交通グループに加盟する飛鳥交通の川野繁社長は、「東京(特別区・武三交通圏)で日本交通グループのフランチャイズに加盟しているので、当社と日本交通との関係について少し話をしたい」とした上で、「飛鳥交通グループでは、今から5年ほど前に古知社長に間に入ってもらう形で日本交通グループのフランチャイジーに加入した。フランチャイズなので、日本交通のブランドの下に集まり、皆で運命共同体としてやっていこうというもので、需給バランスが崩れた厳しい状況の中でお客様から選ばれるタクシー会社にならないと生き残れない、ということから川鍋会長が作ったブランドの下でフランチャイジーになるという判断をしたものだ。当時は他の無線協同組合に所属していたが、日本交通グループに入ったことについて家族や親せき、知人からも『良かったね』と言われたことを覚えている」などと振り返った。


日交の無線回数シェア37.7%


その上で、川野社長は「特別区・武三交通圏には13の無線グループがあるが、4月の無線配車回数は計254万回で、そのうち日本交通グループが約96万回となっている。これは特別区・武三のタクシー無線マーケット全体の37.7%で、13ある中の1つである日本交通グループだけで全体の37.7%を占めているという状況だ。さらに、タクシー1台当たりの無線配車回数をみると、日本交通グループは月間198回で、タクシー1台当たり平均1日6.6回となる。これらは東京大手四社の中でもトップの数字だ」などと紹介、さらに「タクシー1台当たりの営収は、特別区・武三地区の原価計算対象会社で4月は4万7088円だったが、3年前の2019年4月は4万9207円だったので、マイナス4.3%で、まだ追いついていない。一方で、日本交通本体の4月は5万9384円で、19年4月は5万8216円だったので、プラス2%となっている。原価計算会社は3年前と比べて4.3%のマイナスだが、日本交通本体は2%のプラスであり、(コロナ禍からの営収回復度合でも)6.3%もの格差が出ている。特別区・武三交通圏における営収ランキングには様々あるが、上位20社のうち16社が日本交通グループというものもある」などとした。


ブランド力は、総合力


川野社長は「ブランド力は、総合力であり、お客様の満足度を上げることが重要だ」としながら、「乗務員の接遇はもちろんだが、制服や車両のグレード、アプリ配車、決済システムなど多々ある。さらに営業力では、日本交通は極めて優れたセールスの力を持っており、都内の主要なホテル、病院、巨大な複合ビルなどの多くを独占している。そこには指定の専用乗り場があり、これにより乗務員は非常に働きやすい。そういうこともプラスになっている。そして、広告力では、川鍋会長自身が歩く広告塔になっていてテレビや新聞、雑誌に出て、タクシーと言えば日本交通の川鍋会長というような存在となっている。すべてにおいて優っているのが日交ブランドと言え、この流れが次々と大阪にもやって来るのではないかと確信している」とした。


続けて、「毎日タクシーが、日本交通のブランドの下でスタートするということで、必ずや今後の厳しいタクシー業界の中で生き残れることが保証されたのかな、と私は感じている」した上で、「タクシーは大事な公共交通機関だが、現在あるすべてのタクシー会社が残っていくことは難しいというのも事実だ。生き残って、今後も公共交通機関として社会的使命を果たせるような会社の体制づくりに、皆さんと共に歩んでいきたいと思う」などと結んだ。


コスモキャブの高橋社長が挨拶


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大阪小豆島タクシーグループ・コスモキャブ大阪の髙橋社長は「大阪のタクシー業界は15年ほど前から非常に混乱しており、5000円超5割引の大幅な遠距離割引、ワンコインタクシー、乗り場問題、二重・三重運賃、乗務員の高齢化と悪質化などがあり、あまり良くない印象を持たれている面がある」とした上で、「コロナ禍の前から根本的な改革が必要ではないかと考えてきていたが、この度、日本交通グループ関西に(フランチャイジーとして)加盟することを決めた。当初は、5台、10台という運行車両数になると思うが、いずれは全社が日本交通グループ関西に加盟する意気込みで頑張っていきたい」などとする抱負を述べた。


日交G関西の金田社長が挨拶


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日本交通グループ関西(東京・日本交通)の金田社長は、「私は、日本交通グループが2014年3月に大阪にタクシー営業所を開設して以来、8年余りやって来ているが、当時を思い出すと、古知社長から事務所と車庫をお借りして、タクシー車両22台を譲渡譲受で取得してナンバーを登録したものの、乗務員は1人もいないというところからのスタートだった」と振り返った上で、「日本交通グループ関西としては、昨年9月にナショナルタクシー(大阪市城東区、タクシー181台)を取得して、その時に台数と人数を数えたら、台数は約880台、乗務員数は約1200人になっていて、徐々に増えてきたなと思ったところだ。(業務提携によるフランチャイジー方式での)グループ化については、大阪で営業を開始した当初からどこかのタイミングで必ずやろうと思っていたが、ここ2〜3年はコロナの影響でそれどころではなかったものの、昨年の秋ぐらいから、お客様にタクシーを提供していくためには台数を増やしていかなければならないと思い、古知社長や高橋社長に話をして今日に至っている」などとした。


2年後には1000台体制に


さらに、金田社長は「私が大阪でタクシーを始めるに当たっては、川鍋会長から『桜にNのマークをアンドンに付けてやる限りは、良いクルマと良いサービスで早く選ばれるようにやれ』と唯一それだけを言われ、それを何とか実現しようと今日までやって来た。古知社長や高橋社長の会社に日本交通グループ関西に入ってもらって900台ほどになったので、あと2年ぐらいで1000台ほどにして、お客様に良いクルマと良いサービスをこれからも提供していけるように、高橋社長、古知社長と共に頑張っていきたい」としたほか、「これから毎日タクシーで桜にNのアンドンを付けたタクシーが走り始めるが、それがどんどん増えて行って、大阪の梅田交通グループの全車が桜にNになってもらえたらいいな、と祈念している」などと述べた。


日本交通の川鍋会長が挨拶


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最後に、日本交通の川鍋会長は「日本交通グループとして、私は私でやっているが、もし日本交通グループのタクシーが少しでも他のタクシー会社よりもお客様に選んでもらえているとするならば、私は『日本交通のプライドと品質、誇りをもって業界のリーダーとして行こう』と気合を入れて言ってはいるものの、実際に運転をしているわけではなく、全国で約7000台の桜にNのクルマに乗っていただいている1万人以上の乗務員が毎日やっていただいている結果として、今日の桜にNがある、と思っている」としながら、「桜にNのマークに力があるとすれば、それは皆さん一人一人の力の結集に他ならない。東京では、約半数がグループ(フランチャイジー)の皆さんであり、日本交通がブランドを貸しているのではなく、一心同体だと思っている。(フランチャイジーとして)日本交通グループに入るというオーナーの決断力がすべてのスタート地点であり、東京では川野社長に業界の地殻変動となるような決断をしていただき、大阪では高橋社長、そして古知社長に決断をいただいた。日本交通グループを選んでいただいたことは有難く、身が引き締まる思いでさらに頑張っていかなければならないと感じている。今日から30年後に向けて、皆さんもコツコツと良いサービスをお願いしたい」などと呼び掛けた。


梅田交通Gの古知代表が謝辞

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来賓の祝辞に対して梅田交通グループの古知代表が謝辞を述べ「来賓としてご挨拶いただいた方々のおかげで、今日のようなことが出来ているのであり、東京では川鍋会長をはじめとして業界の方々に温かく支えられているので、大阪から進出してある程度の規模で生き残ることが出来たのであり、東京業界の皆さんのおかげだ。飛鳥交通の川野社長とは公私ともに家族ぐるみのお付き合いであり、東京における業界や業務方針のことは川野社長にすべてお任せしているような状況で、内外ともに、川野社長のおかげで何とか協会活動や業界活動、会社の存続が出来ているのであり、感謝を申し上げたい」とした上で、「梅田交通グループでは、かねてより東京では(東京梅田交通と東京梅田交通第二が)日本交通のフランチャイズ、現在はグループ会社という呼称になっているが、に加盟しているものの、関西では初となるグループ会社となった大阪小豆島タクシーグループ・コスモキャブ大阪の高橋社長には、ご子息の将来を見据えた経営判断として敬服している。一緒に頑張っていきたい」などとした。


これからは質の担保が必要に


古知代表は、続けて「日本交通グループ関西の金田社長とは、最初に大阪市内に営業所を開設する際に、個人的に所有していた施設をお貸ししたという経過がある。東京・日本交通が事実上車両ゼロで乗務員もゼロの状態から、どれぐらい金田社長が苦労と努力をしてここまで来られたかをつぶさに見てきており、私がお世話になった既存のタクシー会社が廃業し、廃業寸前の会社も多くある中で、事実上ゼロから8年間で大阪において800台、1200人の乗務員を擁する規模にして、大阪業界では考えられないような稼働と営収になっている。大阪的な難しい事情がある中で事業を拡大して伸ばされたということは、革新的なことであり、学ばなければならないことだと思っている」としたほか、「これからのタクシーに必要なことは質の担保であり、運賃を値上げしたい、割引を何とかしたい、というのは大阪業界の宿願だが、社会や利用者がなるほどと思うぐらいの、納得できる高いタクシーとしての品質やサービスが無ければ、これらは絶対に出来ない、と私は思っている。それを一定の仕組みの中で努力することで可能にするのが、日本交通でのグループ化、フランチャイズ化だと考えている。大阪業界でも、フランチャイズに加入しようとする会社が次々に出て来ると思うので、タクシー業界の未来を考える方たちと一緒に歩んでいきたい」などと締め括った。


テープカットの後、日本交通仕様の毎日タクシーの車両が営業所を出庫した。


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