東京の華、恋の都銀座での稼ぎ方とは

公開日:2024/09/19 00:29


タクシードライバーに銀座って


東京23区を中心とした武三地区は、日本でもっとも稼げるエリアと言われています。平均の売上も日本一、タクシードライバーの数も日本一です。名実ともにタクシー業界最高の稼ぎ場が首都東京です。そして、その中で一番稼げる街とされているのが銀座です。


銀座は東京駅から徒歩で行けることから示すように、東京の中心地にあります。そのため地価も非常に高く、銀座四丁目の山野楽器銀座本店では、1平方メートルあたり5300万円の値段となっています。言うまでもなく日本で一番の地価をつけています。30平米の部屋と同じ面積でも、15億円の値段がつくと考えると、そのとんでもない地価がわかると思います。


銀座は地価が高く高級品が揃っているデパートがあることで、昼間は買い物に赴く貴婦人が歩いています。いわゆる銀ブラと言われるものです。実際に使っている人を見たことがないので、もしかしたら死語かもしれませんが、その名残は間違いなくあります。そして20時以降は高級クラブに集うセレブリティの街と化します。


高級クラブ帰りのお客さまはタクシーにとっても最高の上客で、そのためタクシードライバーは夜になると銀座を目指します。しかし、銀座にタクシーが集まるということはトラブルも多くなることを示しています。その対策として厳しい規制も引かれているため、上級者向けの街だとも言えます。実際のところ最高水準の売上を作るためには、銀座を避けることは考えられません。銀座を制する者は東京を制するといえるかもしれません。



 銀座とはどういう街なのか

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銀座での稼ぎ方を紹介するまえに、まずは銀座がどういう成り立ちの街なのかを知っておきましょう。こういった知識が営業上で役立つことは多い。お客さまとのちょっとした会話で喜んでいただけることもありますし、営業上で役に立つこともあります。


まず銀座の名前の由来ですが、江戸時代に銀貨を鋳造する施設があったことに由来しています。要するに「銀貨を作る場所=銀座」があったから銀座です。中央通りと晴海通りが交差する銀座四丁目交差点が街の中心で、銀座和光の時計台は、この街を代表するランドマークとなっています。行政区分上は中央区に位置し、北から南に向けて、銀座一丁目から八丁目まであります。本来九丁目はなく、八丁目の南は新橋に位置するのですが、銀座九丁目であるかのような名称の銀座ナインという商業施設があります。


高級ブティックやレストランなどが並ぶ街ですが、八丁目の西部については、高級クラブが軒を並べていることで有名です。高級クラブとは、主に接待のために使われるお店で、在籍されたホステスを取りしきるママと呼ばれる女性がいるのが特徴で、料金は極めて高額となっています。およそ、いくらくらいになるのかを調べてみましたが、大抵のお店は座って90分お酒を飲むと10万円はかかるとのこと。その中でも高いお店に入ったり、シャンパンや高額なボトルを入れたりすると20万円、30万円とお会計が跳ね上がって行くはずです。一度お客さまとして乗っていただいたママさんに「今度お店行きましょうか?」と冗談でいってみたら、苦笑いをされてしまったことがあります。タクシードライバーの月収が吹き飛ぶくらいのお店が、高級クラブだということでしょう。


八丁目付近にはキャバクラ店なども多数存在しています。コロナ禍で暇そうにしている呼び込みのお兄さんと話し込んだことがあるのですが、キャバクラは普通の値段と変わらないところも多いとのことです。もちろん、入ってみると意外に高かったということはあるかもしれませんが、高級クラブほどではないのは間違いなさそうです。


最後に簡単に歴史を振り返ります。江戸幕府の開闢(かいびゃく)後、銀の鋳造をする銀座として整備されますが、鋳造所自体は1800年に日本橋蛎殻町へと移転します。蛎殻町や小舟町は、タクシードライバーをしているとよく聞く地名です。東京駅から北東に少し行ったところにある地域で、お客さまが多いエリアです。江戸時代から賑わっているエリアであったとのことですが、日本橋や京橋のほうがより賑わっていたという証言も残っています。どちらかというと繁華街というよりは職人の街であったようです。


明治維新後、二度の大火によって銀座一帯が焼失してしまうという事案がありました。これを機に、レンガ造りのお洒落で燃えない街を作る運動が東京都の主導で行われていました。ロンドンの街並みにならって、街路樹、ガス灯、アーケードなどが並ぶモダンな街として文明開化の象徴とされました。新しい街として、地方出身者が集い、商売をはじめます。その顧客として麻布や赤坂、番町などの山の手に住む上流階級が集う街になりました。この名残はいまも色濃く残っていて、昼間に銀座でお客さまの手があがると、番町や、麻布などに帰る買い物客であることが非常に多い。昭和初期にはモダンボーイ(モボ)、モダンガール(モガ)が街を歩く「銀ブラ」の地となります。しかし戦争によって空襲を受け、壊滅的な被害を受けることとなりました。戦後の復興を経て、銀座の街は活気を取り戻していったものの、東京の住宅街が、次第に西側に増えていったことから銀座は多くの東京都民にとって遠い街になっていきました。かわりに池袋、新宿、池袋などの西部のターミナル駅が発展していきました。かつては高級品と言えば銀座にしかない状態であったようですが、今では新宿や渋谷のデパートでも見ることができます。ただ銀座の歴史と、ブランド力の高さは群を抜いているため、今でも高級品を買う街として特別な地位を築いています。


 お買い物客を狙え!昼の銀座の稼ぎ方


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ここからは昼の銀座でどうやって営業するべきかをお話ししたいと思います。まず午前中ですが、基本的には人が少なく閑散としています。ただ、8時から11時についてはホテルから出てくる旅行客などが見られるため、流しているとお客さまに出会える可能性はあります。ただ、お客さまの数は決して多くないので、午前中の時間帯に銀座に来るのであれば、もう少し西側の日比谷通りを流してみたり、丸の内あたりを探ってみたりするほうが良いでしょう。もちろん、銀座にも会社は多数ありますし、ビジネスマンを狙う手はあるのですが、会社の絶対数が多いエリアを探すほうが確率は高くなります。


前段でも書いてきたように、昼の銀座はショッピングを楽しむ方が集まる街です。そのため、松屋や三越などのデパートの周辺でお客さまを探すと、紙袋を抱えた奥様が2000〜3000円程度の距離をお帰りになるケースが多数あります。昼の営業での3000円は決してタクドラとしても悪い金額ではありません。ただ、デパートの周りは客待ちをするタクシーが多く効率があまりよいとは言えません。専用の乗り場が使える場合には、そこに並ぶ手はありますが、お客さまの数こそ多いものの、東京駅や有楽町駅までという方もいらっしゃるので効率がいいかというと難しいところです。


ランチの前後については、著者の営業時間とかぶっていなかったので詳しい情報がないのですが、あまりお客さまを見つけやすい時間帯ではないという印象です。人は多いのですが大抵は、オフィスから出てきて戻る方や、再びお買い物に赴く方なので、タクシーで移動する需要は大きくありません。それでも人がいればチャンスも生まれます。もしも人手が多いようなら、晴海通りや中央通り、あるいは銀座コリドー通りからのみゆき通りなどを流してみるのもいいでしょう。


 東京の華!夜の銀座の稼ぎ方

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夜の銀座は東京で最も稼げるエリアです。しかし単に銀座に行けば稼げるという甘いものでもありません。新宿のように24時間人がいるエリアとは大きく異なります。新宿の場合には、朝からはじまるホストクラブやキャバクラもあれば、昼からはじまる店、夕方からはじまる店、24時間やっている店もあります。街の都合に人が合わせているので、人間のほうが眠らない街に適応して24時間生活しています。その結果、移動手段が十分にない時間帯が生じるため、タクシーの出番となります。


銀座はその逆で、基本的には規則正しく生活している人が来る街です。つまり朝起きて、昼間は仕事をして、夜には眠る人の街です。高級クラブなどがある夜の街のイメージはありますが、それほど遅い時間まではやっていません。お店は0時までで、その後のアフターに行っても2時くらいまでです。3時くらいまでは残存する酔客はいますが、そのあたりからは帰宅するホステスやママさんが主なお客さまになります。そして、帰宅する女性は近所に住んでいることが多いため、売上としてはそれほど大きくありません。我々タクシードライバーが好きなのは美しく着飾った夜の蝶たちではなく、埼玉県、神奈川県、千葉県に一戸建てを持っていて、さっさと帰宅しないと奥様に怒られてしまうビジネスマンです。「会社の接待があるから遅くなる」と言っておいて、朝帰りとは見なされない時間帯までに帰宅するという需要があるため、1万円だろうが2万円だろうが、家庭円満のためには払ってくれます。


そして、銀座にはある意味では昭和的な、一般的な家庭を築いているビジネスマンが多く、また富裕層も多いため、タクシーで長距離を移動してくれるのです。新宿や渋谷と比べるとどうなのかですが、答えは明瞭で、若者の比率がまったく違います。夜の銀座でタクシーに乗り込んでくる若者はホステスを除くとそうそういません。


さて夜の銀座の営業について語るためには、まずは乗車禁止区域の話をする必要があります。銀座はタクシーが集まってくる街で、そのせいで交通渋滞が起こったり、違法な停車が見られたりと、トラブルも多かったと聞きます。警察とのいざこざがよくあったということで、あるときから銀座の規制が極めて厳しくなりました。警察からの強い要請もあり、夜の銀座については厳しい自主規制がしかれています。


平日22時から翌日1時までは、銀座4〜8丁目の繁華街を中心とした地域で、専用のタクシー乗り場以外ではお客さまを乗せられなくなります。つまり、この時間帯のタクシードライバーにできることは、タクシー乗り場に並ぶか、乗車禁止区域の外に出てお客さまを待つかになります。もちろん中には悪いタクシードライバーもいるもので、乗車禁止区域の中でこっそりお客さまを乗せてしまうということがあります。ただこれは多数配置されているタクシーセンターの監視員によってチェックされていますし、仮に監視員がいなかったとしても、タクシーセンターはGPSによってどのタクシーがどこで営業しているかを確認しているので、あとで発覚することもあります。ばれてしまうと本人にもペナルティがあり厳しいのですが、それ以上に会社に対するペナルティがあることがとても大きい。なぜなら会社のペナルティが一定量に達すると、優良タクシー会社から外されてしまい、銀座や空港などで営業ができなくなってしまうからです。会社に対するペナルティなので、上司には怒られますし、同僚からも非難されることでしょう。常習者は会社にいづらくなるのではないかと思います。


この時間帯についての営業はとてもシンプルで並ぶか並ばないか、です。銀座は地下鉄しか通っていないため、電車で帰宅するのは少し面倒な位置にあります。なので、まだ終電があってもタクシーで帰る方はいると思います。特に0時付近になると終電がなくなることが多いでしょう。なので、0時から1時はロングがとても期待できる時間です。この時間帯はお客さまに乗っていただくときはドキドキしますし、「住所いいですか?埼玉県……」などと言われたら心の中でガッツポーズします。一方で22時−0時の時間帯については、そこまで遠くに行く方は多くありません。もちろん、銀座なので驚くようなロングが出ることもありますが、やはりそこそこです。銀座で遊び慣れている方は、暗号のようなルート指定をしてそのまま眠りについたりします。


「シオドメ、ヨコハネ、ハマカワサキ」とか「ドバシじゃなくてカスミからヨウガね」などです。何のことだかわからない方はもう少し修行してから銀座に行きましょう。前者は汐留インターから高速に乗って、横羽線を使って南下して浜川崎降りです。後者は、目の前にある土橋口を使わず、霞ヶ関まで移動して、渋谷線を進み、用賀で降りることを指します。このくらいなら簡単なのですが、さらに細かいことを言われることがあります。最小限の確認ですぐに出発できるようじゃないと、なかなか銀座の営業は難しい。もっとも、このくらいは東京のタクシードライバーとしての基礎スキルなので、やっていればすぐに到達できると思います。こういった難しいオーダーに答えたくないタイプのドライバーは、深夜時間帯でも東京ローカルと言われる江戸川区や足立区などの駅に並んでいます。売上はあまり取れませんが、難しいことを言われることも、苦情をもらうリスクも低いからです。とにかく銀座に並んでいて道を知らないというのは、ありえないことなのだと肝に銘じて、周辺の高速道路の接続をしっかり理解してから行くようにしましょう。


乗車禁止区域が解除される1時以降は路地という路地にタクシーが殺到することになります。終電後のこの時間帯は最もチャンスが大きく、東京中の腕利きタクシーが殺到します。ただ、道の選択が悪いと非効率な営業になってしまうこともあるため、どの路地をどういった順番で攻めていくかしっかり考えておくと効果的です。銀座の1時以降はいわゆる確変タイム、フィーバータイムというようなもので、タクシードライバーは脳内麻薬がドバドバ出て眠気どころではなくなります。早い時間帯にお客さまを乗せられた場合には、高速道路を使って素早く銀座に戻ると、二度、三度とロングのお客さまを乗せられます。特に翌日が休みの祝前日、金曜日は朝方が近づいてもお客さまが途切れないことがあります。こう言うときには、タクシードライバーは満面の笑みで営業を続けています。


3時を過ぎてくるといわゆる上客は少なくなり、帰宅するホステスやママが現れるころです。この時間帯からは大きな売上は見込めませんが、すぐに銀座に戻れば何度も営業できるので小さく刻めます。そんな中に思わぬ大物が潜んでいて、朝方のロングということもありえます。しかしそういったお客さまは銀座よりも、六本木や新宿歌舞伎町などのほうが期待できるでしょう。


 まとめ


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  • 昼の銀座は、日本屈指の高級なお買い物街
  • 夜の営業は高級クラブ帰りのお客さまを狙う!
  • 歴史ある銀座は、タクシードライバーにとっても特別な街


銀座の稼ぎ方について見てきましたがいかがでしたでしょうか。銀座は怖いから行かないと敬遠するタクシードライバーは実に多いです。実際に規制が多く、交通ルールがややこしく、ペナルティが大きいということから敬遠してしまうのも理解ができます。また、タクシードライバーが要求されるハードルの高さから、ドライバーの自信のなさから、あるいはうまく接客ができなかったトラウマから、銀座を避けるということもあるのでしょう。


銀座を避けても営業することはもちろんできますし、しっかり売上を作ることもできます。ただ銀座は稼ぐことができ、歴史のある街で、雰囲気も素晴らしく、これぞ東京と思わせてくれる街です。なので、銀座を完全に守備範囲外とするのはもったいないのではないかと、筆者としては考えています。

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