タクシー 銀座と新宿!街の特徴を熟知しよう

公開日:2024/09/20 00:52


 新宿東口の攻略

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東京のタクシーは稼げると言ったような話を聞いたことがある方は多いと思います。東京には人が多く、繁華街も大きいというイメージは一般的でありますし事実です。そして、最大の街の一つが新宿だとするのは異論が出ないことだろうと思います。渋谷、池袋、丸の内、赤坂、銀座と華やかな街はありますが、大きさという点においては新宿を超える街はありません。また、タクシーのお客さまとして重要なのは酔客といわれるお酒を飲んだあとに帰宅するお客さまですが、その数が一番多いのも新宿であろうと思います。というような事情から、新宿が一番稼げる街だと思う方もいるかもしれませんが、実を言うと新宿はもっとも稼げない街の一つです。もちろん、稼ぐ方法はありますが、極端に嫌うドライバーが多いのも事実です。


その理由としてあげられることは、良くも悪くも雑多な街でさまざまな人が共存していることから、何が起こるか分からないのです。また、歌舞伎町の街中は、まさしく混沌であります。一寸先は闇ならぬ、手が挙がれば3桁運賃という感じです。どういうことかというと、短距離を移動するお客さまが非常に多い街だからです。またトラブルも多いことから、敬遠されてしまうのが実情です。とはいえ、タクシードライバーは新宿を避けることはできませんので、いかにうまく使っていくことが重要になります。著者は新宿歌舞伎町のカオスが大好きで、このエリアに積極的に飛び込んでいく変わり者でありました。その経験をもとに、このエリアの営業について詳細に紹介しようと思います。



 新宿東口の成り立ち

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営業方法を見る前に、新宿東口駅の成り立ちを振り返ってみようと思います。江戸時代には宿場町として栄えていたのですが、江戸の範囲から少し外れるものの、人通りが多いという特徴から、色町としても発展していきます。その歴史は古く1885年に山手線が誕生したのと同時に、新宿駅も生まれました。とはいえ、この時は東京市には含まれず、田畑が広がる郊外というイメージであったようです。関東大震災などの後に人が流れてくることで、1931年には日本で一番利用者が多い駅になりました。


太平洋戦争における空襲の被害は、下町に比べて比較的軽微であったことから、闇市が立ち並ぶようになっていきます。闇市というのは、非合法の市場で、今でいう反社会的組織が運営していました。実に新宿らしい成り立ちですし、今の新宿がその延長線にあることは間違いありません。


昼の間は西口のビジネス街のほうが強いのですが、午前11時であっても朝帰りのお客さまがいるのが新宿の町の奥深さです。午前11時どころか、午後5時になっても朝帰りのお客さまがいます。もっとも、朝帰りのお客さまはトラブルが多いため、あまりタクシードライバーには歓迎されません。特に新宿の場合にはとても大変なことになる可能性もあるからです。夕方頃からの帰宅ラッシュにおいては、移動する方が飛躍的に多くなるので営業がしやすくなります。もっとも、中央区、港区、千代田区という都心三区に比べると、どうしても移動距離が短いお客さまが多くなるため、新宿を狙うくらいなら都心で営業したほうが良い。


また、新宿の奥の方まで行ってしまうと、すなわち、歌舞伎町方面に入っていってしまうと二度と出られなくなるかもしれません。これは東京のタクシードライバーならみなさんから共感してもらえると思いますが、歌舞伎町の中へ入っていくと低単価のお客さまがとてもたくさんいるので、次から次へとつながってしまい、そのゾーンから出られなくなってしまいます。ようやく外へ出られたと思ったら、曙橋のあたりで歌舞伎町までと言われるのはよくある話です。私は、単価は低くても高回転なら売り上げは増えていくと考えているため、まったく問題はないのですが、嫌がるドライバーは多い。


戦後の復興とともに闇市は姿を消し、商店が建ち並ぶようになっていきました。また1960年代には、丸井、小田急、京王などのデパートが作られ、お買い物をする街としての地位を確立していきます。今でも新宿駅の周辺や、新宿東口から新宿三丁目駅付近までは、ハイブランドのショップや、伊勢丹、丸井などがあるため、決して混沌とした街ではありません。新宿三丁目の交差点から少し先に進むと二丁目の交差点があり、世界的にも有名なゲイタウンとなっています。このあたりは新宿らしいカオスな町並みとなっていますが、その少し先に位置する新宿一丁目や新宿御苑前は落ちついた雰囲気になっています。


一方で新宿歌舞伎町は、多くの飲食店、カラオケなどのレジャー、映画館、接待を伴う飲食店、風俗店、ラブホテルなどが軒を連ねています。こってり系ラーメンで有名な「二郎」も歌舞伎町のど真ん中にあって、ここには著名人もこっそり訪れるという噂を聞いたことがあります。


新宿の営業についてご覧いただきましたが、どのような印象をお持ちになったでしょうか。正直なことを言いますと書けないことが多すぎて、これでもかなり薄口の仕上げになっています。そういった意味でも新宿は面白い町と言えるのですが、苦手としているドライバーが多いエリアです。とはいえども、新宿で営業しないということは難しく、さまざまな街から新宿までいくお客さまがいます。一番多いのは夜の時間帯の六本木で、六本木と新宿を延々と往復するような営業をしたこともありました。六本木で飲んでいたら新宿の友人に呼ばれたので合流する、などといったことがよくあるのだろうと思います。その逆も然りです。新宿なんか嫌いだと言わずに、東京でタクシードライバーとして働いているので、東京らしいカオスな街、新宿の営業を楽しんでいただけたら良いなと、新宿ファンの私は思っております。


 銀座とはどういう街なのか

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銀座での稼ぎ方を紹介するまえに、まずは銀座がどういう成り立ちの街なのかを知っておきましょう。こういった知識が営業上で役立つことは多い。お客さまとのちょっとした会話で喜んでいただけることもありますし、営業上で役に立つこともあります。


まず銀座の名前の由来ですが、江戸時代に銀貨を鋳造する施設があったことに由来しています。要するに「銀貨を作る場所=銀座」があったから銀座です。中央通りと晴海通りが交差する銀座四丁目交差点が街の中心で、銀座和光の時計台は、この街を代表するランドマークとなっています。行政区分上は中央区に位置し、北から南に向けて、銀座一丁目から八丁目まであります。本来九丁目はなく、八丁目の南は新橋に位置するのですが、銀座九丁目であるかのような名称の銀座ナインという商業施設があります。


銀座はその逆で、昼の銀座はショッピングを楽しむ方が集まる街です。そのため、松屋や三越などのデパートの周辺でお客さまを探すと、紙袋を抱えた奥様が2000〜3000円程度の距離をお帰りになるケースが多数あります。昼の営業での3000円は決してタクドラとしても悪い金額ではありません。ただ、デパートの周りは客待ちをするタクシーが多く効率があまりよいとは言えません。専用の乗り場が使える場合には、そこに並ぶ手はありますが、お客さまの数こそ多いものの、東京駅や有楽町駅までという方もいらっしゃるので効率がいいかというと難しいところです。


基本的には規則正しく生活している人が来る街です。つまり朝起きて、昼間は仕事をして、夜には眠る人の街です。高級クラブなどがある夜の街のイメージはありますが、それほど遅い時間まではやっていません。お店は0時までで、その後のアフターに行っても2時くらいまでです。3時くらいまでは残存する酔客はいますが、そのあたりからは帰宅するホステスやママさんが主なお客さまになります。そして、帰宅する女性は近所に住んでいることが多いため、売上としてはそれほど大きくありません。我々タクシードライバーが好きなのは美しく着飾った夜の蝶たちではなく、埼玉県、神奈川県、千葉県に一戸建てを持っていて、さっさと帰宅しないと奥様に怒られてしまうビジネスマンです。「会社の接待があるから遅くなる」と言っておいて、朝帰りとは見なされない時間帯までに帰宅するという需要があるため、1万円だろうが2万円だろうが、家庭円満のためには払ってくれます。


高級ブティックやレストランなどが並ぶ街ですが、八丁目の西部については、高級クラブが軒を並べていることで有名です。高級クラブとは、主に接待のために使われるお店で、在籍されたホステスを取りしきるママと呼ばれる女性がいるのが特徴で、料金は極めて高額となっています。およそ、いくらくらいになるのかを調べてみましたが、大抵のお店は座って90分お酒を飲むと10万円はかかるとのこと。その中でも高いお店に入ったり、シャンパンや高額なボトルを入れたりすると20万円、30万円とお会計が跳ね上がって行くはずです。一度お客さまとして乗っていただいたママさんに「今度お店行きましょうか?」と冗談でいってみたら、苦笑いをされてしまったことがあります。タクシードライバーの月収が吹き飛ぶくらいのお店が、高級クラブだということでしょう。


そして、銀座にはある意味では昭和的な、一般的な家庭を築いているビジネスマンが多く、また富裕層も多いため、タクシーで長距離を移動してくれるのです。新宿や渋谷と比べるとどうなのかですが、答えは明瞭で、若者の比率がまったく違います。夜の銀座でタクシーに乗り込んでくる若者はホステスを除くとそうそういません。


さて夜の銀座の営業について語るためには、まずは乗車禁止区域の話をする必要があります。銀座はタクシーが集まってくる街で、そのせいで交通渋滞が起こったり、違法な停車が見られたりと、トラブルも多かったと聞きます。警察とのいざこざがよくあったということで、あるときから銀座の規制が極めて厳しくなりました。警察からの強い要請もあり、夜の銀座については厳しい自主規制がしかれています。


八丁目付近にはキャバクラ店なども多数存在しています。コロナ禍で暇そうにしている呼び込みのお兄さんと話し込んだことがあるのですが、キャバクラは普通の値段と変わらないところも多いとのことです。もちろん、入ってみると意外に高かったということはあるかもしれませんが、高級クラブほどではないのは間違いなさそうです。


最後に簡単に歴史を振り返ります。江戸幕府の開闢(かいびゃく)後、銀の鋳造をする銀座として整備されますが、鋳造所自体は1800年に日本橋蛎殻町へと移転します。蛎殻町や小舟町は、タクシードライバーをしているとよく聞く地名です。東京駅から北東に少し行ったところにある地域で、お客さまが多いエリアです。江戸時代から賑わっているエリアであったとのことですが、日本橋や京橋のほうがより賑わっていたという証言も残っています。どちらかというと繁華街というよりは職人の街であったようです。


明治維新後、二度の大火によって銀座一帯が焼失してしまうという事案がありました。これを機に、レンガ造りのお洒落で燃えない街を作る運動が東京都の主導で行われていました。ロンドンの街並みにならって、街路樹、ガス灯、アーケードなどが並ぶモダンな街として文明開化の象徴とされました。新しい街として、地方出身者が集い、商売をはじめます。その顧客として麻布や赤坂、番町などの山の手に住む上流階級が集う街になりました。この名残はいまも色濃く残っていて、昼間に銀座でお客さまの手があがると、番町や、麻布などに帰る買い物客であることが非常に多い。昭和初期にはモダンボーイ(モボ)、モダンガール(モガ)が街を歩く「銀ブラ」の地となります。


しかし戦争によって空襲を受け、壊滅的な被害を受けることとなりました。戦後の復興を経て、銀座の街は活気を取り戻していったものの、東京の住宅街が、次第に西側に増えていったことから銀座は多くの東京都民にとって遠い街になっていきました。かわりに池袋、新宿、池袋などの西部のターミナル駅が発展していきました。かつては高級品と言えば銀座にしかない状態であったようですが、今では新宿や渋谷のデパートでも見られます。ただ銀座の歴史と、ブランド力の高さは群を抜いているため、今でも高級品を買う街として特別な地位を築いています。


東京23区を中心とした武三地区は、日本でもっとも稼げるエリアと言われています。平均の売上も日本一、タクシードライバーの数も日本一です。名実ともにタクシー業界最高の稼ぎ場が首都東京です。そして、その中で一番稼げる街とされているのが銀座です。


銀座は東京駅から徒歩で行けることから示すように、東京の中心地にあります。そのため地価も非常に高く、銀座四丁目の山野楽器銀座本店では、1平方メートルあたり5300万円の値段となっています。言うまでもなく日本で一番の地価をつけています。30平米の部屋と同じ面積でも、15億円の値段がつくと考えると、そのとんでもない地価がわかると思います。


銀座は地価が高く高級品が揃っているデパートがあることで、昼間は買い物に赴く貴婦人が歩いています。いわゆる銀ブラと言われるものです。実際に使っている人を見たことがないので、もしかしたら死語かもしれませんが、その名残は間違いなくあります。そして20時以降は高級クラブに集うセレブリティの街と化します。

高級クラブ帰りのお客さまはタクシーにとっても最高の上客で、そのためタクシードライバーは夜になると銀座を目指します。しかし、銀座にタクシーが集まるということはトラブルも多くなることを示しています。その対策として厳しい規制も引かれているため、上級者向けの街だとも言えます。実際のところ最高水準の売上を作るためには、銀座を避けることは考えられません。銀座を制する者は東京を制すといえるかもしれません。


 まとめ


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銀座の稼ぎ方について見てきましたがいかがでしたでしょうか。銀座は怖いから行かないと敬遠するタクシードライバーが多い。実際に規制が多く、交通ルールがややこしく、ペナルティが大きいということから敬遠してしまうのも理解ができます。また、タクシードライバーが要求されるハードルの高さから、ドライバーの自信のなさから、あるいはうまく接客ができなかったトラウマから、銀座を避けるということもあるのでしょう。


銀座を避けても営業することはもちろんできますし、しっかり売上を作ることもできます。ただ銀座は稼げる、歴史のある街で、雰囲気も素晴らしく、これぞ東京と思わせてくれる街です。なので、銀座を完全に守備範囲外とするのはもったいないのではないかと、筆者としては考えています。

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