東京でも、ローカルといわれる周縁部の地域でのんびりやっているドライバーはまた少し違うかもしれません。また、飲食店自体があまり多くない地方都市の場合も事情が異なります。
タクシードライバーは美味しいお店を聞かれるという話がありますが、東京では聞かれたことはありません。ただ「可愛い子がいるキャバクラを知らないか」というのは聞かれました。その方面は自然に情報が入ってくるので、無事に案内できました。
タクシードライバーが大好きなお休みの話もしたいと思います。先進国の日本では労働関係法が整備されているため、休日はどの仕事にも当たり前にあるものです。しかし、この休日が、実はタクシードライバーの仕事を勧めるときの口説き文句になっているのをご存じでしょうか。当たり前にあるはずの休日が、特典になるというのはどういうことでしょうか。
一般的なお仕事の場合には、月から金曜日まで8時間ずつ働き、場合によっては残業します。そして、土曜日と日曜日が休日です。土日に仕事がある場合には、平日が休みになります。休日が固定されている場合もありますし、シフト制の場合もあります。
それではタクシードライバーにとっての休日とはどういうものか詳しくみていきましょう。
日勤が月22〜24回程度の勤務であるのに対して、隔日勤務の場合には11〜13回程度となります。標準的な12回勤務とした場合、1カ月が30日の場合、出勤が12日で休日が18日という計算になります。これが「休みは非常に多くて取りやすい」と説明されることが多い理由です。もちろん甘い話はないもので、その代わりに1回あたりの勤務時間が2日分になります。つまり、実際には24日働いているのと勤務時間は変わらないわけです。とはいっても、出勤回数が半分になるのは精神的にとても楽ですし、出勤のための準備、身だしなみや、出勤時間なども節約できます。隔日勤務の独特のリズムに身体が慣れるまでは非常にきついのですが、一度慣れてしまうととても快適で、もう他の仕事はできないと言っている人も多い。つまり、他の仕事よりも楽だということです。そう言われても、隔日勤務をしたことがない方にはあまり実感が湧かないと思います。早番と遅番にわけて、具体的にどういうスケジュールを辿ることになるのかをご説明したいと思います。
まず早番といっても出庫時間はそれぞれが異なっています。このあたりは会社によって事情が違うと思うのですが、私がいた会社は一定の幅の中から出庫時間を選べました。正確に言うと点呼の時間を選べました。点呼時間は午前7時から10時くらいまでの間に設定されているのが一般的です。出庫時間によってどういう差があるのかをご説明します。朝7時に出庫した場合には、車庫を出てすぐに出勤していくお客さまを探すことになります。タクシー会社は郊外にあることが多いため、郊外から都心に向けて出社していくお客さまを狙うことになります。遅刻しそうになってタクシーを使う方もいれば、足腰が悪くてタクシーを使う方もいます。会社の社長さんから、自宅の前まで無線で呼んでいただけることもあります。朝10時に出庫した場合には、通勤時の需要はほとんどなくなっていますので、病院へと向かう高齢者のお客さまや、駅からバスでは行きづらいエリアに行くお客さま、それかビジネス街まで行って、打ち合わせなどのために飛び回っているビジネスパーソンを探すことになります。午前中については、タクシーが少ない早朝か、需要が多い通勤時がチャンスとなります。ということであれば「早く出庫するほうがいいだろう」ということになりそうですし、実際にコロナ禍においてはそのほうが有利でした。
タクシーの乗務時間は法律で厳しく決められています。出庫した時間から20時間以内に戻ってくることが義務づけられています。より正確に言うと出庫前の点呼から、帰庫後の点呼までが20時間以内でなければいけないそうです。このような違反を続けると、会社の運営が疑われてしまうため、会社のほうもドライバーには遵守を迫ります。というところから逆算すると、午前7時に出庫した場合には、翌日の27時(午前3時)に帰庫する必要があります。つまり営業できるのは26時(午前2時)までです。一方で午前10時に出庫する場合には30時(午前6時)までの乗務となります。午前10時に出庫した場合には、朝の出勤ラッシュには対応できないのですが、深夜の時間帯にタクシーを走らせることができます。午後10時から翌朝5時までは、タクシー業界用語で青タンと言われている時間帯で、深夜割増料金が適用されています。7時出庫の場合には青タンの途中で帰らなければなりませんが、10時出庫の場合にはすべて営業できます。
当然、出庫時間によって売上の差も出てきますが、朝方が得意なドライバーもいれば、夜が得意なドライバーもいます。このあたりは人によるので、車両係の内勤さんと相談しながらベストな出庫時間を導き出すことになります。さて、この記事の場合は休みが焦点です。私の知る限りは、この2パターンの勤務になります。
出番、明番、出番、明番、公休の5日間セット
出番、明番、出番、明番、出番、明番、公休、公休の8日間セット
出番というのは乗務がある日です。7時出庫のドライバーの場合には、出番がある日の7時には会社について、制服に着替え、点呼を受ける必要があります。最大20時間、最短だと16〜7時間程度の乗務を終えて、帰庫します。この場合は最長の午前4時としましょう。タクシードライバーは体調不良時や、よほどお客さまがいないとき以外は、最長である20時間働くことが多い。
さて、午前4時に帰ってきて精算作業や洗車などをするとようやくお仕事が終わります。通勤距離にもよりますが、5〜6時には自宅に帰ってゆっくりお風呂に入れます。自宅でほっと一息ついたら、ほとんどのドライバーはすぐに眠りに落ちてしまうことでしょう。人によって睡眠時間は異なりますが、昼過ぎまでは起きてこないと思います。13時頃に目覚めたとしましょう。
この日は明番といって仕事はお休みです。他の仕事でも夜勤のあとは「休むのも仕事のうち」というようなニュアンスの明番という日があります。タクシーの場合はこの明番が休みとして機能します。1回の勤務が長い分、丸一日が空くわけです。翌朝7時から乗務なので、22時くらいには休むとしても9時間は自由な時間があります。身体を休めるのもいいですし、お酒を飲むのもいいです。サウナに行ったり、趣味に使ったり、資格などの勉強をしたりする人もいるようです。
そして、出番と明番がもう1セットあり、公休がきます。公休の場合は13時に目覚めるところまでは一緒ですが、そのあと約40時間が自由になります。2回睡眠することにはなりますが、それでも十分な時間があります。公休、というよりも、明番からの公休は、タクシードライバーにとってもっとも嬉しい時間です。さらに1乗務を有給休暇にすれば膨大な時間が手に入ります。どのくらいかというと、丸4日分休めるわけです。これだけ長い日数の休みを定期的に取るのは、他の仕事では難しいのではないかと思います。またタクシードライバーの休み方の裏技として、普通に体調不良で休むというものがあります。タクシーの仕事は、お客さまの命を預かるものであるため、体調不良の時には乗務してはいけません。体調不良を訴えるドライバーに対して、会社が乗務を強制することもできません。もちろん言われることがあるかもしれませんが、それが発覚した場合には大問題になります。お客さまの安全よりも、会社の利益を優先するというのは、旅客運送業者として大きな問題があると言わざるを得ないからです。もちろん、その分収入は下がりますが、正直言って普段ちゃんとやっていれば1日休むくらいでは、それほど収入は下がりません。大事なのは、自分らしいペースで働いて長く続けること、幸福に毎日を送って行くことが大切です。
遅番の場合には生活と出勤のサイクルは変わりますが、使える時間は一緒です。遅番は14〜16時に出庫することになります。私は遅番であったため、14時ころに家を出ていました。14時まで時間があれば色々できるのですが、乗務前は十分に休んでおく必要があるため、横になってダラダラしたり昼寝したりしていることが多い時間帯でした。乗務は翌日の昼頃までです。帰宅するのは昼の12時頃になっていたので、お昼ご飯をしっかり食べて仮眠します。本当はこのタイミングでビールを飲むべきではないのでしょうが、我慢できたことはありません。私の場合は夕方ごろまで仮眠してからいろいろな活動して、22時頃になると寝ていました。よく考えると寝てばかりであまり時間を有効に活用できていなかったように思うので、もしかしたら早番のほうが良かったのかもしれません。
まずタクシードライバーの働き方の数は、大きく分けると2種類、細かく分けると4種類あります。1つずつみていきましょう。
まずは、日勤という働き方です。この働き方は、月22〜24日程度勤務することになるため、普通の仕事と変わりません。なので、日勤については、休日が特典にならないといえます。基本的にはシフト性ですが、需要が大きい金曜日は出勤になることが多く、逆に需要が小さい日曜日や月曜日などをお休みにするドライバーが多いようです。ただ、このあたりは会社によってシフトの組み方が違うので、詳しく問い合わせてみないとわかりません。
日勤には昼日勤と夜日勤があります。昼日勤は朝出勤して、夕方に帰宅するという普通の仕事と同じパターンです。逆に夜日勤は、夕方に出勤して朝方に帰ります。夜日勤はナイトと呼ばれることもあり、最も稼げる働き方とされています。タクシーの料金は深夜に割増しになることに加えて、長距離を移動するお客さまが増えることから、夜のほうが稼ぎやすいと言われています。一方で、毎日夜勤をこなさなければいけないので、夜型の生活リズムを作れないとすぐにダウンしてしまいます。夜日勤は、朝方に帰宅して昼過ぎまで寝て、夕方には出勤することが月22回から24回あるため、非常にハードな働き方といえます。とにかく稼ぎたい人や、夜に極めて強い人にはお勧めです。収入は東京で稼ぐ人の場合、月収で60万円以上になることもざらです。年収にすると720万円以上と考えると、かなり稼げる仕事だといえます。一方で、夜間の長時間運転は危険も多く、十分に休息がとれないと感じた場合には、すぐに別の働き方に変えるほうが無難です。事故や違反してしまうと罰金を支払う必要がありますし、免許証を失って仕事ができなくなることもあるからです。
タクシードライバーがいつ食事をとっているのかについてご説明します。勤務時間のうち、どのタイミングで休憩を取るかはドライバーの裁量に任されています。つまり自由です。なので、原理的には、こういうことも可能です。出庫してすぐに銀座の駐車場にタクシーを置き、トランクに入っていたスーツに着替えて、ホテルのレストランでディナーを食べて、それから営業するというようなこともできるわけです。ただ、こんなことをするドライバーはいません。もしかしたら結婚記念日などに無理矢理やる人はいるかもしれませんが、極めて例外的です。どうしてかというと、乗務時間が削られると売上が減り、収入も減ってしまうからです。仮にディナーに1時間半使うとしましょう。駐車場を探すのに30分かかるとします。すると2時間のロスとなります。個人の調べですが、東京のタクシードライバーの収入を時給換算すると2,000円から3,000円程度になるので、間をとって2,500円とします。2時間使ってしまうと5,000円の機会損失となり、駐車場代として1,000円がかかって、ディナーが8,000円のコースだとすると9,000円の出費、5,000円の機会損失で14,000円の支出となります。こういった計算を素早くするのがタクシードライバーなので、みんなそう考えるはずです。割に合わないなと。もう少し手軽にたべられる2,000円程度の定食だとしても、1時間かけたとしたら、2,500円の出費と、2,500円の営業機会損失となります。仕事中にそこまで払うのであれば仕事が明けた休みの日に、時間を気にせずのんびりと食べたいものを食べるほうがいいのではないかと思ってしまいます。長々と書いてきましたが、こういう事情で東京のドライバーは食事するより、さっさと営業に行くのです。
定食2,000円とかディナーコース8,000円というと随分高いイメージがあるかもしれませんが、東京のタクシードライバーが集う都心のエリアでは美味しいものは高い。安くて美味しいものは、ないことはないでしょうが探すのが大変です。例えば人形町の老舗の親子丼屋さんはとっても美味しいですが、結構な時間並びます。そう、安くて美味しいものは並んで時間を使わないと食べられないのです。先ほどご説明した通り、営業機会が失われ、駐車場もかさんでいくので逆に割高になってしまうのです。もちろん、行列店など美味しいお店を探しながら営業し、プライベートで行くということはできます。私はそういうタイプで、タクシーをしながら隠れた名店をいくつも見つけました。美味しいお店は、家賃の安い路地裏などにひっそりとあることが多い。家賃が安い分、材料に経費を掛けられるからです。一等地にある美味しいお店が安いということはほぼありません。
筆者はあまり目立った外食はしないのですが、それでも美味しいご飯でも食べないとやっていられないこともあり、そういうときには奮発します。ですが、やはり稼ぎたいのならば、高い飯など食べている場合ではないということになります。
東京のタクシードライバーの食事事情を書いてみました。読者の皆様が想像されていたのとは少し違うテイストのような気がしますが、非常にリアルな内容になっていると思います。