タクシードライバーは給料を前借りできる?

公開日:2024/09/19 00:29


そもそも給料の前借りを公式に認めている会社は少なく、法律的にも前借りに応じる義務はないのです。ただ相談にのってくれるタクシー会社は多いかもしれません。タクシードライバーはたとえ借金を背負ったとしても雇ってもらえるからです。


なお、タクシー会社に多いのは前借りではなく前払いです。前払いは、勤務した分の入金を待つ間に、本来の入金日よりも前に支払ってくれる制度です。これは法律でも労働者の権利として認められています。


ただそこには本来、いくつかの条件があり、むやみやたらに前払いしてくれるわけではありません。また前借りを会社に要求したとしても、「給料日まで待て」「何でお金が必要なんだ」「前例がないから」と言われてしまうかもしれませんし、信用を引き換えにする行為です。


本稿ではタクシードライバーの給料の前借りについて、前払い制度と合わせて解説していきます。



 給料の前借りとは

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タクシードライバーは給料を前借りできるかどうか、というテーマですが、結論としては「給料の前借りができるかは会社による」で「給料の前払いは正当な理由があれば法律上可能」となります。


給料の前借りと前払いは、給料に関連するお金の提供方法における異なる概念です。前借りとは融資です。前払いとは働いた分の給与を入金日より前に支払うことです。では、その違いを詳しく説明していきます。


「給料の前借り」とは、通常、給料日前に必要な現金を手に入れるために、給料を事前に借りることを指します。これは、給料を受け取る前に一時的に現金が必要な場合に利用される方法です。例えば、給料日までの数日間を賄うために、銀行や金融機関から一時的な融資を受けることがあります。


これにより、給料日に給料から前借りした金額が差し引かれることになります。また所属する会社、あなたがタクシードライバーであればタクシー会社に直接融資のように貸してもらうように申し出ることになります。ただ正式な制度として社内融資が存在しない場合には断られるかもしれません。


なぜなら給与とは、そもそも働いた分だけ会社からお金がもらえる仕組みであり、まだ働いていない分を前もって貸し付けることは、将来の給与分を支払うこととなります。実はこれは労働基準法に抵触する可能性があるのです。


労働基準法においては、使用者(会社)は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と、賃金を相殺してはならないと定めています。


労働者が後の賃金で支払うと契約して使用者から借り受けることを「前借金」と言いますが、この「前借金」は労働者の足止め、つまり退職、転職させないために用いられることが多かったものなのです。前借金の相殺は労働の強制、身分拘束の手段となってしまうために、これを禁止しているのです。


もちろん労働組合との労働協約の締結がある場合や、労働者側からの依頼で融資する場合、融資金額、返済期間、返済方法が労働者の退職の自由を制限するものでなければ違反にはなりません。ですから労働基準法は将来的な給与の支給は禁じていると認識したうえで、会社側に前借りができるかどうかを確認する必要があります。


では、前払いはどうでしょう。こちらは働いた分であれば、支給日前であっても法的には給与を前払いしてもらうことは可能です。


ただ、どんなケースでも給与の前払いが認められるわけではありません。労働基準法では、使用者は労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払う必要があると定めています。何でも、いつでも、給与を支払わせようとすると、会社側の負担も大きすぎるからです。


給与前払いの一定条件というのは「非常時」と決まっているのです。この非常時も細かく労働基準法は定めています。「労働者の収入によって生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害にあった場合」「労働者又はその収入によって生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合」「労働者又はその収入によって生計を維持する者がやむを得ない事由により一週間以上にわたって帰郷する場合」とあります。


給与の前払いの要請理由が、上記のいずれかに該当するのであれば、法的には会社側に前払いさせることができます。また定められた理由のいずれかに該当しなければ、前払い申請は行えないということになります。


なお、前払いは、あくまでも自分が働いた分の給料を前倒しして受け取るものなので、借金とは異なります。そのため、利息や手数料はかかりません。ただし、給料日には一部あるいは全額を前払いしてもらっているため、その分のお金が差し引かれてしまい、かえって生活が苦しくなる可能性がありますので注意が必要です。


 タクシー会社では給料を前借りできるか

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給与の前借りが可能な会社は、ごく限られた一部のようなイメージもあります。前借りであればその通りでしょう。タクシー会社でも特にそれは変わらないはずです。ただ実はどの企業でも給料の前払いであれば行われます。それは法律で決まっているとのだと前述しました。


一般的に、給料前借りは一時的な財政的な困難に対応するためのオプションとして提供されます。ただし、前借りの金額や利率、返済方法などに関する詳細は、タクシー会社のポリシーに基づいて決められます。


なお、繰り返しになりますが、会社で前もって支払ってもらえる金額は”すでに働いた分の給料”であり、働いていない分の給料は先にもらうことはできません。フィクションで「働いて返しますから前借りさせてほしい」というシーンを見たことがあるかもしれません。しかしこれは働いていない分の給料を先に渡してしまうことであり、借金させて(お金を借りされて)働かせる「強制労働」とみなされてしまうので、現実には労働基準法違反に当たるため、ありえないのです。


いずれにしても給料の前借りはタクシー会社であるなしにかかわらず、確認してみないと分かりません。ただ前払いであれば交渉できることは間違いありません。


 給料を前借りする方法


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給料を前借りできるかどうかを確認するためには、所属するタクシー会社の方針や規則を確認し、必要な手続きを取ります。直接会社の人事部や管理部門に問い合わせることをおすすめします。会社の方針や規則に基づいて、前借り制度の有無や手続きについての情報を提供してもらえるでしょう。前借りには利子手数料が発生する場合もありますので、契約条件や返済計画について詳細を確認する必要があります。


前借りをお願いしたい時は、まず信頼できる上司に相談しましょう。会社の規模によっても対応が異なり、小さい会社なら直接社長に交渉することも可能ですが、ある程度大きな会社になれば、総務課や経理担当者の方と話すことをおすすめします。


 前借りするデメリット


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所属するタクシー会社で給料の前借りが可能だとして、前借りする際には以下のような注意点もあります。


●利息や手数料の発生

前借りには利息や手数料が発生する場合があります。これらの費用を考慮し、借り入れ額と返済計画を検討する必要があります。


●返済計画の確立

前借り額を返済するための計画を立てることが重要です。収入と支出のバランスを考慮し、返済期間や金額を適切に設定することが必要です。


●借入額の制限

タクシー会社によっては、前借りの制限や規制が設けられている場合があります。借り入れ可能な上限額や条件と範囲を確認しましょう。


●契約条件の制約会社への借金や前借

通常は契約条件や規則に基づいて行われます。これにより、特定の制約や条件を受け入れる必要が生じる場合があります。例えば、借金額の制限、返済スケジュールの厳守、会社からの指示や要求への従属などです。


●信用への影響

借金や前借が適切に管理されない場合、信用に影響を及ぼす可能性があります。信用情報機関に登録されたり、将来的な金融取引やローンの審査に影響を与えたりする可能性があります。


●依存関係の増加

会社へ借金することで、経済的に会社に依存する状況が生じる可能性があります。これにより、自己の経済的な自由や選択の余地が制限される場合があります。


これらの注意点を踏まえて、給料を前借するかどうかを判断することが重要です。状況や必要性に合わせて慎重に検討し、適切な判断を下してください。


 タクシー会社の前払いシステム

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ここでタクシー会社へ入社前の状態での前借りについて解説します。多くのタクシー会社には、入社時にかかる費用を前貸しのように肩代わりしてくれる制度があります。タクシードライバーが新しくタクシーを始める場合、タクシー会社から初期費用を借りることがあります。


これにはタクシーの手付金、保険料、ライセンス料、二種免許取得費用などが含まれます。また、収入が発生する前に生活費や燃料費、タクシーのメンテナンス費用などをカバーするために、タクシー会社から一時的に前借りできることもあります。


これらは「入社祝い金」という形で支払われることも多い。結構まとまった金額で、喜ぶとは思うのですが注意も必要です。労働条件の遵守や契約期間や歩率など、タクシー会社との契約条件を守らなければいけないからです。実質的な前借りであるとも言えるでしょう。詳細な情報や契約条件は、各タクシー会社や地域の規則に基づいて確認する必要があります。


 給与前払いサービス

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給与前払いサービスというのをご存知でしょうか。これは従業員が簡単に給料を前払いしてもらえる外部サービスのことです。以下の解説をお読みください。


給与前払いサービスは働いた分の給与を従業員が給料日前に受け取れるサービスです。


企業側は他社が提供している給与前払いサービスを有料利用する形で導入します。導入の際には企業の勤怠データを給与前払いサービスと連動させ、従業員の労働時間と賃金をシステム上で管理できるようにする必要があります。


給与の前払いには主に以下の3つの形式があり、サービスによってどの形態かは異なります。


サービス業者が企業に代わって立て替えて先に支払う形式

企業側が従業員に直接支払う形式

企業がサービス業者に預託した資金から支払われる形式

引用:ビジドラ(三井住友カード)

https://www.smbc-card.com/hojin/magazine/bizi-dora/accounting/prepayment.jsp


転職時には、給与前払いサービスをタクシー会社が導入しているかどうかを確認しておくのもいいでしょう。給与の前払いをカジュアルに申し込めるかもしれません。


 タクシードライバーは借金を背負っていることが多い?

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タクシー業界は会社から前借りや前払いをしてもらえるかどうか心配なあなたは、ひょっとすると借金があるかもしれません。ただタクシードライバーに転職する方が借金を背負っているかどうかは一概には言えません。個々の状況や背景によって異なるため、一般化することはできないからです。


ただ前述の通り教習費用や試験料、免許手数料などを賄うために一時的な借金を背負うことがあるかもしれません。また、タクシードライバーの収入は不規則な場合があり、特に初期の段階では収入が安定しないことがあります。生活費や日常の支出をカバーするために、借金する場合があるかもしれません。


ただし、これらの状況が全てのタクシードライバーに当てはまるわけではありません。転職時の借金は人によって異なり、個別の経済状況や選択によって変化します。転職に際して借金を背負うかどうかは、個々の状況や資金計画、借金の必要性に基づいて検討されるべきです。


 まとめ


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  • タクシー会社で給料の前借りは会社次第、前払いは条件次第で可能
  • 前借りも前払いも労働基準法での縛りがある
  • 前借りにはいくつものデメリットがある
  • タクシー会社には入社前にかかる費用を相殺できる支度金がもらえる制度がある


給与を前借り、前払いする方法や制度は地域やタクシー会社によって異なる場合があります。したがって、具体的な情報を得るためには、所属するタクシー会社や関連する団体に問い合わせることが重要です。


ただし、給与を前借りすることは、お分かりだとは思うのですが一時的な解決策であり、長期的な財政計画には適していません。定期的に給与を前借りすることは、借金の連鎖に陥る可能性があるため注意が必要です。


ドライバーが給与を前借りする主な理由は、収入不安定や急な支出が原因となることが多いため、予算管理や貯蓄の計画を立てることが重要です。最後に書いておきますが、タクシードライバー同士やドライバーと知人の間でお金を借りることはおすすめしません。個人間の借り入れは信頼関係を崩すことにつながるからです。

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