借金を返すためにタクシー会社に入社するのは正解なのか

公開日:2024/09/19 00:29


気づいたら借金が膨れ上がってしまって、どうしたらいいものかと途方に暮れてしまう方もいると思います。最近は非常に借金がしやすい。キャッシング機能つきのクレジットカードで10万円を借りたが最後、返すために借りるのを何度か繰り返すとすぐに50万円近い借金になってしまいます。リボ払いをうまく使えずに借金が膨らんでしまうというパターンもあることでしょう。それ以外の理由で借金を抱え、仕事して返すにもうまく生活と両立できずに苦しい立場にいるという方もいるのではないかと思います。


自己破産するという手もありますが、デメリットもあります。たとえばクレジットカードやローンが5〜10年間は利用できなくなります。次に、今もっている財産を処分する必要があります。具体的には99万円以上の現金や20万円以上の資産価値のあるものです。預貯金や車、バイクなどを処分する必要があるということです。


もちろん、家電や家具などは生活のために最低必要限なものとして差し押さえされませんが、逆にいうとそれ以外はみんな処分されてしまいます。官報に破産者として公告されるのも大きなデメリットです。一般の人が見ていることは想定しなくてもいいと思いますが、名前と住所が公表されてしまうので、嫌な方も多いと思います。


自己破産は、借金の責任がなくなることで支払いをしなくてよくなる制度ですが、借金した理由によっては免責とならないことがあります。例えば、浪費によるもの。飲食、お酒、風俗店、買い物などによる借金です。他にギャンブル、投資、投機、ヤミ金からの借り入れなどです。ギャンブルによって借金を負った場合には、首が回らなくなってしまうということです。そうなった場合には仕事をしながらコツコツと返していくしかありません。


そんな時、タクシー会社で働きながら借金を返せばいいのではないかと思い立つ方もいると思います。しかし、現実的にそういうことは可能なのでしょうか。この記事では、タクシードライバーをしながら膨らんだ借金を返していくことが可能なのかどうかを考えていきたいと思います。



 借金があってもタクシー会社に就職することはできるのか

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最初の関門が就職できるかどうかです。タクシー会社が借金の有無を調べられるかどうかですが、借金の額面や返済が焦げ付いているかどうかなどの信用情報については、調べようがありません。個人信用情報機関に加盟していれば調べればわかるのですが、タクシー会社は金融関係の会社ではないので当然入っていません。


仮に入っていたとしても、就職の可否のために利用するのは目的外利用となるのでまずやりません。ただし、自己破産していた場合には、調査会社を通じて調べられると思います。


もし仮に自己破産したことがわかったとしたらどうなるかについてですが、ほとんどの場合にはまったく問題がないと思います。もちろん、借金があることを嫌う会社は、大手を中心にあるとは思います。しかし、数社回れば、どこかしらのタクシー会社には就職できるでしょう。


タクシー会社にとって大事なのは、その人がしっかり乗務してくれるかどうかです。毎乗務ちゃんと時間にきて、しっかりと乗務して売上を作ってくれること。なるだけ長い期間、辞めずに勤続してくれることが大切です。なので、会社によっては、借金があって仕事をやめられない人はありがたく思うこともあるかもしれません。あるいは、内勤の職員が借金を抱えてタクシー業界に入った人で親身に聞いてもらえるなんてこともあります。


実際に、著者の上司は、飲食店経営していたのですが、潰してしまってタクシードライバーになったと言っていました。新卒入社も多い大手のタクシー会社ではそうはいかないと思いますが、あまり大きくない会社ではこういうことはよくあります。特に今は、タクシードライバーが足りていない時代なので、コミュニケーション能力が一定あって、運転ができそうで健康な人であれば歓迎される傾向にあると思います。


 タクシー会社から借金ができるかどうか

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こちらも会社にもよりますが、タクシー会社がいくらか貸してくれるケースもあります。額面にすると10〜30万円ほどが多いようです。もちろん金利はつくと思いますが、これで一息着ける人も多いと思います。タクシー乗務をきっちりこなしている限りは無理なく返せる金額に設定されていると思いますので、借金が多くて困っている場合には思い切って相談してみるといいと思います。


タクシー会社が直接貸してくれなくても「ろうきん」といった労働者への融資を行っている金融機関を斡旋してくれることもあります。もっとも、既に借金があって焦げ付いている場合は難しいかもしれませんが、借り換えによって借金の一本化することはできるかもしれません。


つまり、4社から60万円借りているという状況を1社から借りている状況に変えるということです。金利面でも有利になることもありますし、何より支払いフローがとても楽になります。タクシー会社と取引がある金融機関であれば給料から自動で引き落とせるようなシステムにもできることもあります。


借金ではないのですが、二種免許の取得費用を借りるという形になるケースもあります。二種免許の取得費用は30万円程度です。このお金をドライバーが借りられるというシステムです。ただし、3年間勤続すると返済が免除されるというようなシステムが用意されていることがほとんどです。


この場合、3年以内に辞めてしまうと、返済義務が生じます。このあたりは就職する前に会社にしっかり確認しておく必要があります。会社によっては、借り入れではなく、会社負担で二種免許が取れるところもあります。


 タクシードライバーは借金を返しやすい

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借金がある方にはタクシードライバーという仕事はおすすめです。その理由は歩合給であり、高収入が期待できることです。歩合給のシステムについて説明しますが、会社によって、あるいは会社内でも勤務回数や売上に応じて、歩率が定められます。東京の場合には50%から65%くらいまでが多い。


お客さまがタクシーをご利用になると運賃を支払っていただきます。運賃がちょうど5000円であったときのことを想定して考えてみましょう。実際にいただく金額は、消費税込みで5500円です。支払っていただいたのは5500円ですが、タクシードライバーの収入を決めるときには税抜きで計算します。つまり5000円に歩率をかけたものがタクシードライバーの取り分です。つまり50%の場合には2500円です。65%であれば、3250円です。


1日の売上単位でみてみると、平均で税抜き6万円稼げればしっかりと稼げるドライバーだといえます。6万円ということは、歩率が50%であれば3万円、65%であれば39000円です。月に12回乗務した場合には、月収は36万円〜46万8000円となります。歩率が15%も違うとここまでの月収差になります。なので、タクシードライバーは歩率をとても大事にしています。就職するときは必ず歩率について細かく聞いておきましょう。


次に高収入が期待できるかどうかという点についてご説明します。ある程度タクシードライバーへの適正があって、健康な人の場合という条件はつくのですが、かなりの高収入が狙えます。一番稼げる夜日勤(ナイト)といわれる勤務スタイルを想定して計算してみましょう。勤務時間は夕方頃に出庫して、朝方帰ってくるというものです。かなり実力差が出る働き方なのですが、東京で、体力があれば十分勝算があります。


例えば1乗務で税抜き5万円の営業成績があげられるドライバーの場合には、歩率が65%の場合には、1乗務あたり3万2500円の収入となります。乗務回数が月に24回ある場合には、月収は78万円です。扶養者の数などでも変わってきますが、手取りでも60万円を超えてくる水準です。年収に換算すると936万円です。


ここまで稼げる人はさすがに多くはないのですが、実際に存在しています。運転が得意で、長時間タクシーに乗ることに苦を感じない方の場合には、年収の水準で700〜800万円は十分に稼げます。もちろん、欠勤が多いとそうはいきませんが、身体が頑丈なら決して目指せない水準ではありません。一般的に、借金を抱えてどうしようと途方にくれているような状態では、なかなか高収入の職種を探すことは難しいことでしょう。そういう意味では、タクシードライバーは最高の選択肢になることもあると思います。


 タクシードライバーの借金返済シミュレーション

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最後にタクシードライバーをしながら借金を返済していくプランについて考えてみましょう。借金の金額がいくらあるかによってもだいぶ変わってくると思いますので、いくつか場合に分けて考えてみましょう。もし借金の金額が100万円の場合には、深く考えるまでもなく楽々と返せます。


ナイトで月の手取りが60万円もあれば、生活費や娯楽などに30万円かかったとしても、毎月30万円を返済にあてられるので、4カ月で完済です。借金が300万円あったとしても、利子の返済を含めても1年で完済できます。夜勤は体力的に難しいという場合でも、月収45万円くらいは無理なく目指せます。その証拠として、タクシー会社の求人では月給45万円くらいは無理なく目指せると説明されることがあります。この場合でも、月10〜15万円なら無理なく返済にあてられるはずです。となると100万円借金があっても1年から1年半目処で無理なく返済できます。


タクシードライバーでたまに見かけるのが元社長です。そういう方は事業に失敗して借金を抱えていることがあります。自己破産していることも多いと思いますが、次の事業をはじめるために破産申告をせずに借金を返したいというケースもあると思います。今回は借金額が1000万円ある場合を考えてみましょう。


1000万円以上ある場合もシミュレーションしてみましたが、とても大変なので素直に破産申告するほうがいいと思います。さて、この場合金利をどう考えるかですが、銀行からの借金が主として仮に3%としておきましょう。


1000万円も借金があるとなるとなかなか大変なのですが、3年で完済することから逆算して考えてみましょう。計算してみると月に29万円を返済に回せる場合には、ちょうど3年で完済できます。返済額のうち47万円は利子に対する支払いです。つまり1047万円返済することになります。


となると、月29万円を工面できるかどうかが焦点になりますが、ナイトの営業をしていて月に60万円の手取りがあればまったく問題ない数字です。少し話は違いますが、これは3年間で1000万円貯められるということを表しています。タクシードライバーという職種の底力です。無理なく5年で返していくとした場合には、月あたりの支払いは17万9000円です。生活費をしっかりと切り詰めれば問題なく支払える水準でしょう。


そもそも生活費を切り詰めるのは大変だというのは確かにあるのですが、実はタクシードライバーに本気で取り組んでいると、お金を使う時間はそれほどありません。たとえばお酒については、乗務開始時には完全にお酒が抜けている必要があるので、あまり深酒できません。


特に夜勤を選択した場合には、友人と予定をあわせるのも難しく、遊びに行くにも行けないという状況になることもあります。結果として、本を読んだり、ゲームをしたり、あるいは筋トレに明け暮れるなどのお金のかからない趣味に走ることが多い。


タクシーの中で過ごす時間も長いですし、タクシー会社にお風呂やシャワーが揃っていることもあるので、うまく活用すればお風呂のない安い物件に住んでさらにお金を使わずに生活できるかもしれません。借金を返すまでの間は我慢が強いられるというのはあると思いますが、タクシーは仕事自体がエキサイティングなので、我慢の苦しさより楽しさが先に来ると思います。楽しんでやっているうちに段々と状況がよくなっていくということもあると思います。


 まとめ


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  • 借金が理由でタクシー会社に入れないということは想定しなくてよい
  • タクシー会社からお金を借りられる場合もある
  • タクシーは高収入が期待できるのとお金を節約しやすいので、借金返済には最適な仕事


このように借金とタクシーについて見てきました。借金については、借り方や額面によっても随分と状況が変わってくるので、一概には言えないところがあるのですが、個人的な感想として、タクシー業界は借金している人を見慣れている気がします。なので、借金があるから返したいという話をまわりにしても、それほど変な話だとは思われないような気がします。


ただ、ギャンブルはタクシーに乗りながらでもできてしまうので要注意です。最近はスマホでも勝ち馬投票券が買える時代なので、勤務中に競馬なんてことになってしまうと借金を返すどころか、さらにひどい泥沼になってしまいます。その点だけはどうかお気をつけください。

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