タクシードライバーが注意しなくてはならない交通違反

公開日:2024/09/11 13:42


言うまでもなくタクシードライバーは交通違反してはいけません。しかし、タクシードライバーは違反してしまう可能性が一般のドライバーよりも高いのが事実です。なぜなら走る道、道順、そして乗客が基本的にいつも異なるからです。また、たまに車を運転する人と比べてタクシードライバーは日常的に路上を運転しているため、交通違反の可能性は高まるからです。


さらにお客様の無茶振りに対応しなければならないという点も見過ごせません。お客様のなかにはドライバーを急かしたり、無理な転回を希望されたり、交通違反となる場所での降車を依頼されたりすることがあります。


当たり前のことですが、タクシードライバーは運転のプロフェッショナルだからこそ、交通違反には気をつけなければなりません。ドライバーの仕事はお客様を目的地に届けることですが、さらに安全に運転をし、快適に乗車していただく必要があります。


とはいえ、前もって交通違反を起こさないように意識するためにも、タクシードライバーの起こしやすい交通違反を知っておいて損はありません。本稿ではタクシー運転手が起こす可能性が高い違反や、その防止方法などを紹介していきます。



 タクシードライバーが起こす可能性が高い交通違反

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それではタクシードライバーが起こしやすい交通違反について解説していきます。


・車線変更違反

タクシー運転手は頻繁に車線変更を行う必要がありますが、正しい手順を守らずに急激な車線変更することがあります。安全な車線変更のためには、ウィンカーを使用し、周囲の車両との距離やスピードを考慮する必要があります。


・駐停車違反

タクシー運転手は頻繁に乗客を乗せたり降ろしたりするため、駐車場所を確保する必要があります。しかし、駐車制限を守らずに違法に駐車することがあります。このような駐車禁止もしくは駐停車禁止場所に車両を断続的に停止させている行為は、駐停車違反という交通違反です。なお深夜の繁華街や駅の出口付近(タクシー乗り場以外)でタクシーが行っている客待ちと呼ばれる行為も駐停車違反にあてはまります。


特に道路や交差点近くは駐車違反車両が増えることで交通に支障をきたし、他の車両や歩行者の通行を妨げる迷惑行為なのです。駐停車違反に関しては東京都ではタクシーセンターからの罰則も加わるので絶対に避ける必要があります。路上駐車で取り締まりをうけると、上司からこっぴどく叱られて始末書を提出する羽目になります。


・進路変更禁止違反

黄色い線をまたいで車線変更する違反のことを進路変更禁止違反と言います。例えば交差点の手前でお客様を乗せて、その車線が左折レーンで車線変更禁止なのに車線変更を行ってまたいでしまうという状況が考えられます。あるいは交差点の手前の進路変更区間を走行中、お客様から突然右に曲がるようにと言われて、行ってしまうことです。


・転回禁止違反

いわゆる転回可能場所でないところで転回、いわゆるUターンする交通違反です。例えばお客様を乗せたレーンの進行方向がお客様の行きたい場所と逆のためUターンしてしまうことです。都内は時間帯によっては転回可能場所も多いですが、日中は転回禁止場所が多いため注意が必要です。


ドライバーが自らこの交通違反を行うことはないとは思いますが、お客様に強要されそうになっても断固として断ることが必要でしょう。そのためにも常に標識を見て、どこが転回禁止なのかを把握しておくことが大切です。


携帯電話使用

停止していない走行中に携帯電話を使用することは、注意力を逸らし事故を引き起こす可能性が高まります。タクシー運転手は乗客との通話やナビゲーションアプリの使用など、さまざまな理由で携帯電話を使用する誘惑に直面しますが、これは一般のドライバーと同様に法律で禁止されている行為で、現行犯で罰せられます。ありえないことですが、お客様を乗せている場合にはもちろん絶対に行うべきではない危険な行為です。


このような走行中に他の何かの動作をすることは「ながら運転」と呼ばれており、道路交通法によって明確に禁止されています。ながら運転の交通事故を減らすため、2019年(令和元年)12月に「携帯電話使用等(保持)違反」に関する法律が厳罰化され、話題になりました。ながら運転がこれほどまで厳しく禁止されているのは、他の交通違反と比較しても危険が大きいからです。


例えばスマートフォンを2秒見ているとします。一般道路を時速30キロメートルで走行すると2秒間で約16.7メートル進む計算となります。16メートル前方を見ないでいると、歩行者や他の車両が目に入ったときにブレーキしても間に合わないのです。当然急ブレーキにもなりますし、重大な事故につながりやすいと言えます。


ながら運転による事故は比較的安全度が高そうな直線道路で多いというデータもあるのです。


https://www.itarda.or.jp/presentation/18/show_lecture_file.pdf?lecture_id=95&type=file_jp
(公益財団法人 交通事故総合分析センター)


ながら運転は法律的に禁止されていますが、すべての状況で禁止されていてスマホはもちろん、カーナビの案内を見ることさえできません。そのため停車中であれば、操作も注視もOKということになっています。走行中ではホルダーなどで固定された、ハンズフリー状態での電話は問題ないということになっています。


ちなみに地方自治体の条例によってはハンズフリー通話が違反になることもあるので注意が必要です。


運転する方は交通違反にならないギリギリのことをしていいわけではありません。運転のプロフェッショナルであるタクシードライバーであればなおさらです。どこまでがセーフ、ではなく走行中は集中して安全に運転することが義務なのです。


スマートフォン操作のために停車するのは面倒に感じるかもしれません。しかし道路の安全を守るためにも、運転のプロフェッショナルであるタクシードライバーであれば、車を停めて操作することを徹底しましょう。


・超過違反(スピード違反)について

交通違反の中でも速度超過、いわゆるスピード違反はこれもまたあってはならないことですが、お客様の指示や強要により起こりうる交通違反です。

タクシー運転手は乗客を早く目的地に届けたいというプレッシャーを感じることがあります。そのため、スピード制限を守らずに速度超過してしまうことが考えられます。


速度超過とは

自動車は、道路標識や標示で指定された「最高速度」、標識等がない場合は政令で定められた「法定速度」を超える速度で走ってはいけません。この速度を超えると速度超過(スピード)違反となります。法定速度は、一般道路で60km/h、高速道路で100km/hです。なお、新東名高速道路などの高速道路の一部区間では、最高速度が120km/hの試行区間があります。

違反点数は、一般道路で30km/h以上50km/h未満の超過で6点、高速道路で40km/h以上50km/h未満で6点となっており、この場合、過去3年以内に免許停止などを受けていなくても一発免停となります。

引用

https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-accident/subcategory-penalty/faq301


なおここで重要なことはタクシーがスピード違反をしたら、責任はドライバーにあります。これは他の違反と同様です。ドライバーはご乗車いただいたお客様に何を言われようと、ルールを守って安全に運転しなければならないからです。


ただスピード違反を起こした場合、お客様が教唆犯(きょうさはん)として罪に問われる可能性もゼロではないことを覚えておきましょう。教唆犯とは、「人をそそのかして犯罪を実行させた者」のことです。正犯と同じ処罰が課せられます。


「急げ」とか「スピードが遅いから早くしろ」という指示だけでは罪にならないと思われますがもし「法定速度を気にせず急げ」と指示をした場合は教唆犯になる可能性があります。さらに、急ぎたいあまりドライバーがスピード違反して走っていることを認識していると教唆犯になると思われます。


なお、タクシーがスピード違反で止められた場合、お客様は基本的に目的地に到着していなくても運賃を支払う責任があります。運賃は乗車から降車までの距離や時間に基づいて計算されるため、目的地に到着しなかったからといって支払いを免除されることはほとんどありません。


タクシー運賃は、乗客がタクシーを利用したサービスや距離に対する料金を指しています。ドライバーの交通違反によって目的地に到着できなかった場合でも、お客様はタクシーに乗車した時間や走行した距離に対して支払いを行う必要があります。


ただし、特殊なケースや状況によっては、タクシー会社や地方の規定によって異なる取り扱いが行われる場合があります。例えば、ドライバーの重大な違反行為や過失によってお客様が明らかな危険にさらされた場合、運賃の免除や補償の対象となる可能性があります。また、タクシー会社の方針や地域の法律によって、一部の場合には乗客に対して適切な対応や補償が行われることもあります。


言えることは、一般的なケースでは目的地に到着しなかったからといって乗客が運賃を支払わないということは稀であり、乗車した距離や時間に基づいて支払いが求められることが一般的だと思われます。


これらの交通行為は道路の安全性を脅かし、何より乗車されているお客様を危険に陥れる行為です。そして法的な制裁を受ける可能性もあるため、運転手は常に交通法規を順守することが重要です。


また速度超過については、駐車違反と同様にタクシーセンターからの罰則も加わります。そのためもしも違反してしまうと、営業所で怒られ、始末書を書き、違反点数が増え、罰金を自腹で払う羽目になります。絶対に速度超過しないようにしましょう。


 交通違反を起こした場合どうなるのか


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万が一交通違反してしまった場合、どうなるのかを説明していきます。まずドライバーへのペナルティです。交通違反が確認された場合、ドライバーに対しては乗務停止や減給などのペナルティが課せられることが一般的です。これは、違反行為の重さや頻度によって異なる場合もあります。もちろんドライバー自身の運転履歴にも傷がつくことになります。


駐停車違反、車線変更違反、進路変更禁止違反、転回禁止違反、速度超過違反、いずれにしても大きいですが、携帯電話の使用への罰則は非常に厳しいです。ながら運転の交通事故を減らすため、2019年(令和元年)12月に「携帯電話使用等(保持)違反」に関する法律が厳罰化されました。禁止事項はそのままに、罰則が重くされたのです。


なお、タクシードライバーの交通違反は、所属するタクシー会社にも影響を及ぼす場合があります。特に常習的な違反や重大な違反が繰り返された場合、タクシー会社は監査を受けたり、行政処分を受けたりする可能性があります。


行政処分の例としては、営業できるタクシーの台数が減らされたり、営業停止処分が下されたりすることがあります。警察からタクシー会社の監督省庁である国土交通省に連絡が入り、違反の累積度合いによって監査や行政処分が行われる可能性があるのです。


タクシードライバーの交通違反は、自身に加えて所属するタクシー会社にも影響を与えることがあることをドライバーは強く認識しておく必要があります。


 タクシードライバーが交通違反しないためには

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最後に、タクシードライバーが交通違反しないために注意することを紹介します。


道路上の速度制限、信号や標識を守り、安全な車間距離を保ちましょう。許可された場所でのみ駐停車しましょう。スマートフォンの使用については改めて書くまでもありませんが、ハンズフリーの導入も検討してください。


また、疲労運転は交通事故のリスクを高めます。定められた休憩時間を守り、適切な休息を取るようにしましょう。道路交通法や交通ルールは時折変更されることがあります。常に最新の情報にアクセスし、自身の知識をアップデートを意識しておくべきです。


そもそもですがお客様の安全を確保するためにも、丁寧かつ適切な運転を心掛けましょう。急発進や急停車を避け、スムーズな運転を心がけ、お客様へ丁寧に対応する。中には無茶ぶりを強要するお客様と出会ってしまうことがあります。


そんな時も決して屈せずに法律を遵守しましょう。お客様への丁寧な対応と言う基本のキが交通違反を防ぎ、事故のリスクを減らすことにつながります。


 まとめ


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  • タクシードライバーが起こすかもしれない交通違反は車線変更違反、駐停車違反、進路変更禁止違反、転回禁止違反、携帯電話使用、速度超過違反(スピード違反)について
  • タクシードライバーの交通違反は、自身へのペナルティと所属するタクシー会社にも影響を与えることがある
  • タクシードライバーが交通違反しないためには安全法律丁寧な接客を意識する


タクシードライバーの交通違反について解説しました。交通違反の多くはうっかりミスや、疲れから来る不注意が原因となっています。


交通違反は事故と同様、ドライバーのミスが周囲を危険に陥れる可能性があること、所属する会社とその同僚と従業員すべてにも迷惑をかけてしまう可能性があることを自覚し、交通違反しないよう意識して運転を心がけましょう。

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