二種免許補助を用いてタクシードライバーになろう

公開日:2024/09/18 06:14


タクシーの仕事をするには第二種運転免許をもっていることが必要です。この免許証は旅客を乗せた状態で営業するために必要となります。普通二種の場合に営業できるのは主にタクシーとハイヤーです。他にも運転代行業でも、お客さまを横に乗せるドライバーは二種免許をもっている必要があります。


民間の救急車のドライバーにも必要です。バスで営業する場合には中型や大型の二種が必要となります。単に運転するだけなら第一種免許、つまり普通の免許でも運転することができます。あくまでも旅客を乗せて運賃を取って営業するときに必要になる免許です。会社所有のバスを運転する場合には二種免許は不要ですが、社内規定などで必要とされることもあります。


タクシーの仕事をはじめてみようかと思っても、二種免許を持っていないとどうしようもないなと思う方も多いように思います。この記事では、二種免許の取り方や、取得する際の補助金などについてお伝えしようと思います。



 二種免許とは何か

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二種免許を取得するには、3つの条件をクリアしている必要があります。まずは、満21歳以上であること、次に、視力、聴力、深視力が条件を満たしていること、そして一種免許の取得時から1年以上経過していることです。深視力というのは、一種免許では問われない能力で、遠近感や立体感をみるための能力です。


つまり、前の車がどのくらい離れているか、車間距離が空いているかなどを瞬時に判断できるかどうかが、深視力のテストでは問われています。タクシードライバーに深視力が必要な理由は、事故を防止するためでしょう。単に運転するだけなら深視力は問われません。しかし、タクシードライバーは知らない道を走ることも多いですし、長時間運転を続けます。そのため、事故の可能性を少しでも減らすために深視力が高いことも問われるのでしょう。


3つめの満21歳のところは令和4年5月から法律改正があり条件が緩和されています。その結果、満19歳以上で、普通免許を受けていた期間が1年以上であれば受験できます。その際に、一定の教習を終了することが必要です。


教習については年齢要件を19歳以上に引き下げる場合には、座学、実技を7時限受けることが必要となります。また、経験年数要件を1年以上まで引き下げる場合に必要な研修は29時限です。あわせて36時限なのでかなりのボリュームになります。これに加えて二種免許のための教習を受けることになります。もしかしたら、ある程度二種免許と共通している科目もあるかもしれません。詳しくは警察署か、教習所に問い合わせてみてください。


 二種免許の試験について

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二種免許を取るのが簡単なのか、難しいのかについてですが、普通免許よりは流石に難しいですがそこまで身構える必要がないものです。二種免許にどうしても受からなかったという話は業界でも聞いたことがありません。逆に、東京などの大都市でタクシードライバーになるときに必要な地理試験については難易度が高く、何度受けても受からなかった人の話は聞いたことがあります。そういう場合には、隣接する千葉県や埼玉県などでドライバーになる道を目指すこともあるそうです。


最初は技能試験です。教習所での単位を取得後に検定をうけます。V字型の鋭角、旋回、縦列駐車、方向転換などをみられます。ひとつひとつは難しくないのですが、正確な車両操作が必要となりますので、運転に自信があっても癖が残っていたり、細部が雑になっていたりするようだとなかなか合格できません。タクシードライバーは住宅街の細道に入っていくことがあります。左右の間隔は5mmずつしかないなんてこともあります。そういう場所にお客さまをお送りしたあと、バックで抜けて行くしかない、ということもありえます。


そういう状況が発生しますので、車両感覚をしっかりと身につけることは必要です。鋭角というのはV字型に尖っていて、一発では曲がれないところを切り返して通って行く種目です。もしかしたら教習車によっては楽々回れるのかもしれませんが、私が行っていた教習所では1〜2回切り返さないと回れないようになっていました。


これが非常に難しくて、一緒に試験を受けていた仲間も苦戦していました。ただ、自分の車のタイヤがどの位置にあるのかを把握できるようになると、その場から動かずにくるくる回るように展開できるようになります。こういった細かい感覚を学ぶことで技能試験はクリアできます。


学科試験は普通免許と大きく変わらないようにみえます。ただこっちは非常に厄介でした。問題数は95問で、100点満点中90点を超えれば合格となります。普通免許との違いは、旅客運送についての問題が出ることです。具体的には大型二種、大型特殊二種、けん引二種についての問題が出ます。大型特殊二種やけん引二種というのは非常にマニアックな資格で、取得しても使うことはほぼないと思うのですが、試験には出題されます。


一種よりも難しいのですが、どこが難しいのかというと曖昧な問題が増えてくる点です。一種については、極端なことを言えばある程度の国語が理解できれば自動的に解けるような問題も数多くみられます。しかし、二種はプロとしてお客さまを乗せることになるので、そういうレベルでは取得できません。標識や表示を正確に覚えていられるかどうか、交通法規を正しく運用できているかどうか、などが問われます。これは、実際にタクシードライバーとして路上で営業する上でも役に立つ知識となるのです。


個人的に苦手だったのが安全確認のイラスト問題です。イラストをみてどこに危険があるのかを答えるというようなものなのですが、どうも出題者と気が合わないようで、何度やっても間違えてしまいました。文章題にも難問が潜んでいるのでこちらも油断禁物です。いくつか例を出しましょう。


「横断歩道を歩いて渡ろうとしている歩行者がいたのだが、近づくと立ち止まったのがみえたため、そのまま走行していった」○か×か。


答えは×です。これは歩行者妨害だとみなされます。歩行者が渡りやすいように停車して待つ必要があります。歩行者妨害は営業中に取り締まりに合うことが多い違反です。歩行者がいるうちはいつまでも待っている必要があります。中には、歩行者が通っていいよとハンドシグナルを送った後、走行した結果、取り締まりにあったというケースもありました。「歩行者がハンドサインを出した」と言っても取り締まりが取り消されなかったという話でした。そのくらい厳しく取られる違反です。


「交差点とその端から4メートル以内の場所には駐車してはならないが、停車はしてもいい」○か×か。


こちらも×です。交差点から5メートル以内の場所や、曲がり角から5メートル以内の場所は駐停車禁止です。しかしながら、お客さまの手があがりやすいのが交差点の手前数メートルのところなのも事実です。こういう場合、タクシードライバーは非常に困ります。横断歩道の上は非常に危険なので、その手前か先まで行って止まることが多い。読者の皆様も交差点の横断歩道の手前でタクシーを止めたことがあると思います。


それもそのはず、そのポイントがもっともお客さまの手があがりやすいポイントだからです。そして、駐車車両が多いので、横断歩道の5メートル以内のところ以外は埋まっていることも多い。そういうときどうするか。道路交通法上はここではタクシーを止められません。タクシーを止めてお客さまを乗せる行為は停車に相当するので、駐停車禁止の場所では営業できないからです。ではどうするのかというと、普通に停車してお客さまを乗せます。お客さまを無視すると乗車拒否になるからです。


厳密に言うと、停車できない場所ではお客さまを無視しても問題はありません。極端な例でいうと高速道路を走行中に手が上がっても止めることはありません。ですが、交差点の手前くらいであればお客さまを乗せます。お客さまを乗せないことには仕事にならないからです。ただし、取り締まりを受けるリスクもあります。


悩みどころですが、横断歩道を踏んでいないこと、横断歩道を越えて交差点の中に入っていることなどをしていなければ取り締まりに合うことはあまりありません。なおお客さまを乗せた状態で、取り締まりをすると、その間メーターが回ってしまうことになるので、ややこしいことになります。そのため警察のほうも捕まえづらいわけです。とはいえ、六本木交差点の中にあるギラギラ地帯など、容赦なく捕まえられてしまう場所もあります。このあたりは営業をしながら、先輩たちの話を聞いて少しずつ身につけていくことが必要です。


 二種免許を取るのに必要な期間と費用および二種免許補助について

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二種免許を取得するためには19時限の学科と、21時限の技能を受講する必要があります。普通免許の場合にはオートマ限定で57時限であるため、普通免許に比べると受講する時間は短い。受講期間は合宿ならば8日から10日程度のようです。もしも、通学した場合には、1日2コマで週4日受講した場合には5週間です。


受講費用は、教習所にもよりますが、25〜40万円程度のようです。これを個人で取得してからタクシー会社を受けることもできます。そういうケースはあまり多くないと思いますが、タクシー会社には歓迎されると思います。もちろん、個人で大金を払って二種免許を取得するのは負担が大きい。そのため、タクシー会社では二種免許補助の制度が用意されています。もしも自分で取得したいという方は二種免許補助として教育訓練給付金制度があり、こちらを利用する方法があります。


雇用保険の対象者で、支給要件を一年以上という条件を満たしていれば利用できる制度です。この制度を使うと、教育訓練経費の20%に相当する額が支給されます。ただし、上限は10万円です。教習費に30万円かかった場合には、そのうち6万円が補助されるというものです。


それでもかなりの高額になりますし、タクシードライバーを目指す方は貯蓄が十分にはないケースも多い。そういう場合に一般的なのは免許取得費用を会社が肩代わりするというものです。ほとんどのタクシードライバーはこの制度を利用して免許を取得していると思います。タクシー会社は近隣の教習所と特別な契約をしていることが多く、1週間程度で免許が取得できるプログラムが組まれています。


朝から晩まで教習所に缶詰になるので非常に大変なのですが、効率はとても良い。また、タクシー会社から日当として1万円程度は出ることが多い。自分で免許を取得するのとは異なり、お金を払わずに済む上に、給料までもらえるというのは非常に待遇が良いといえます。


ただ、会社によっては、勤続年数が2年、3年と続かない場合には、免許取得費用の返還を求められる場合があります。もちろん事前に説明はあるはずですが、条件はよく確認する必要があります。


 まとめ


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  • 二種免許とは旅客を運送する営業するために必要な免許である
  • 二種免許試験の難易度はそれほど高くはないが、油断すると学科に何度も落ちる
  • タクシー会社には二種免許の取得を補助する制度が存在することが多い


タクシー営業するために必要な二種免許補助について書いてきました。普通免許取得時に学科試験で何十回も落ちたという方の場合は、正直言って受からない可能性が高い。何度もやればいずれ合格するかもしれませんが、それでも受からないかもしれません。


学科試験はそれなりに難易度が高いため、しっかりと勉強する必要があります。実技については運転が得意な人なら問題ないかと思いますが、しっかりと技能の講義を受けるときに学んでおかないと細かいところで落とされてしまう可能性があります。


少し大げさに書いてしまったかもしれませんが、二種免許の取得は、タクシードライバーとして仕事をする上での大前提であると同時に、頑張れば誰でも獲得できるものでもあります。本当に大変なのは、お客さまを乗せた状態でルートを探して運転することです。誰かを乗せて運転することに比べれば、教習車を運転することも、学科試験を学ぶことも簡単だと言えます。タクシードライバーとして働くために、しっかり勉強してさっさと二種免許試験を突破して、実践的な地理を覚えたり、接客の方法を学んだりするほうが良いことでしょう。

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