長距離がでやすいタクシー乗り場

公開日:2024/12/28 00:10


タクシー営業で一番楽しいのは、長距離を移動するお客さまに乗っていただいたときです。短距離のお客さまでもうれしいのですが、やはり一回で高収入が確定するため、ロングのお客さまは非常にありがたいです。特に運賃が1万円を超える場合には「万収」と呼ばれます。タクシードライバーは、乗務時間の前後に万収が出た場所などの情報を交換しあっています。というのも、ロングが出やすい場所というのは間違いなくあるため、情報交換に意義があるからです。


このよく出る場所での「万収」はなく、通常では出るとは考えづらいところに突然ロング客が出現することを「お化け」と言います。この呼び方はドライバーからすると非常に納得のいくものです。というのも、細かい路地や住宅街の中などで手を上げたお客さまから、千葉県佐原までなどと言われたときは「ドッヒャー」と、脅かされたように驚いてしまうからです。


「お化け」はさておき、ロングが出やすい場所はある程度絞れます。夜の繁華街が最も確率が高く、タクシードライバーはロングを期待しながら繁華街をぐるぐると流していきます。また、繁華街の中や外れなどに車を止めて「着け待ち」をするという方法もあります。繁華街の流し方や、着け待ちするポイントについては、ドライバーがそれぞれノウハウを持っています。


今回の記事では、東京都内のタクシー乗り場の中で、長距離が出やすい場所を紹介しようと思います。



 ロングが出ない乗り場について

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どんな乗り場でもロングが出る可能性はゼロではありません。しかし、期待して並ぶべきではない乗り場も多い。ロングが出るかどうかを考える際には、お客さまのニーズを考えるべきです。まず、住宅街の駅で、会社や飲食店が少ない駅の乗り場の場合はロングを期待することは難しい。例えば、都営新宿線の船堀駅の場合には、会社は少なく、スナックやキャバクラなどの終電あとまで営業しているお店は多くありません。そのため、残業した結果、終電を逃して長距離をタクシーで移動するお客さまを想定しないほうが無難です。


もちろん、会社はありますが、絶対数は多くありません。スナックやキャバクラなども少しはありますが、わざわざ船堀まで来てスナックに行く方はあまり多くありません。ほとんどの場合は、徒歩や自転車で移動できる範囲からのお客さまです。そのため、タクシーを使わずに帰宅することが多いですし、タクシーを使う場合でもそれほど長距離にはなりません。


原則としては山手線の内側など、住宅があまり多くないものの、会社や飲食店が多いエリアを狙うべきです。もちろん、こういった住宅街の駅で近距離を何度もこなして稼ぐ営業方法もありますが、売上としてはなかなかいかないのが実情です。また、稀に住宅街の駅の乗り場からロングが出ることもあります。


 ロングが出やすいのはターミナル駅

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まずはロングが出づらい駅については前述した通りですが、逆に出やすい駅についてご紹介します。まず、一番はターミナル駅です。新幹線や特急が止まる駅はさらにチャンスが大きくなります。


一番人気があるのは品川駅かもしれません。新幹線が止まるため、品川駅まで新幹線で移動し、そこからタクシーで移動していく需要があるからです。品川近辺のタワーマンションやホテルへ移動するお客さまも多いので、確実にロングということはありませんが、大荷物を抱えたお客さまが来た時はチャンス到来です。疲れて帰ってくるビジネスマンが多い夜の時間帯はさらにチャンスが大きくなると考えて良い。ただ、夜の駅着けは、順番が回ってこないまま終わってしまうリスクがあるので、その点は注意する必要があります。


東京駅も同様にチャンスが大きいのですが、品川駅に比べて在来線の本数が多いことからそのまま電車を乗り継いでしまうお客さまが多いように思います。筆者も東京駅のタクシー乗り場にはよく並んでいましたが、ロングが出たことはなかった。ただそれはコロナ禍に並んでいたからというのもあるかもしれません。


昔から東京駅八重洲口を主戦場にしているドライバーから聞いた話では、熱海まで行かれるお客さまもいたとのことでした。もちろん電車も出ているのですが、車での移動を好む方もいて、たまにではありますが電車と並走するようなルートでのロングが出ることがあります。


少し北にいって上野駅までいくとどうでしょうか。上野駅も悪くはないのですが、周囲に住宅が多いこともあり、近距離の移動が多いような印象があります。夜の時間帯はロングが出やすくなってきますが、上野駅の場合には、駅前の乗り場まではなかなか回ってきません。というのも飲食店が多く、ギラギラしたエリアは、周辺に着け待ちしているタクシーが多数いるからです。着け待ちのタクシーが枯渇した場合には駅まで歩いてくることもあるかもしれませんが、激戦区なので可能性は低いと考えたほうがよいでしょう。


ターミナル駅としては新宿駅、渋谷駅、池袋駅も大きい。新宿駅については、特に深夜帯でのロングが期待できます。しかし新宿駅で一番恐ろしいのが、多発する「歌舞伎町まで」あるいは「風林会館まで」です。これらの場合、運賃は500円からよくても700円程度です。しばらく並んだ上でこの成果だと「やっていられない」と思うことでしょう。


ただ、新宿西口は歌舞伎町に行くお客さまは少ないことと、小田急線と京王線の乗り場があることから、終電の時間にあわせるとロングが出る可能性があります。地下の乗り場と地上の乗り場の二つがあります。筆者はどちらがいいかについてまでは詳しくありません。ただ、どっちもどっちなのではないかと思います。乗り場の構造がまったく違うので、どちらが好きかで選ぶのもいいかもしれません。筆者は地下のほうが好きです。地上のほうが、夜が深まった時間帯でもチャンスが大きいように思います。


渋谷駅については、玉川通りを通って、三軒茶屋や駒澤大学のほうへと西進するお客さまが多いように思います。場合によっては二子玉川のほうまで行く方もいます。渋谷の乗り場はデパートのお買い物客に使っていただくことが多いため、夜の時間帯はあまり期待できません。昼の時間帯にお買い物帰りの方に乗っていただくイメージとなります。夜の時間帯は、繁華街まで車を進めて着け待ちするなり、流し営業するなりしたほうが効率はよいはずです。


最後に池袋駅です。筆者はあまり営業しないエリアなのですが、その理由となるのが流すルートが定まらないことです。新宿や渋谷、六本木などはグルグル回りながら繁華街を巡回できるルートがあるのですが、池袋はそういった王道ルートがありません。北口のあたりではそういう営業をしているタクシーを見かけますが、東口は少し難しそうという印象です。そういった背景もあってか、あるいは一度駅まで歩いてから解散するグループが多いせいなのか、池袋駅そばのタクシー乗り場は悪くないようです。


 ロングが多発する空港の乗り場

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ロングが出ない乗り場について紹介しましたが、次は非常に高確率でロングが出る乗り場についてです。最も確率が高いのは空港だと言っていいと思います。東京の場合には羽田空港、千葉県であれば成田空港です。どうして空港からロングが出やすいのかというと、空港というものは周囲に何もないところに作られています。何もないというと語弊がありますが、物流関係の倉庫などが多く、空港からわざわざタクシーで移動するお客さまはあまり多くありません。従って、タクシーに乗っていただけた瞬間に中長距離が確定するということです。


もっとも羽田空港の場合には、蒲田などの比較的近い場所へ移動させるお客さまもいます。例えば蒲田駅までは5キロ程度なので、2000円から3000円程度の運賃になります。東京駅や横浜駅まで行く場合には20キロ程度ありますので、この場合には1万円前後を期待できます。ある先輩ドライバーによると、平均で7000円程度になるとのことでした。なんて空港はおいしいのだと思う方もいるかもしれませんが、現実は甘くありません。空港からはロングが出やすいのは事実ですが、だからといって一番稼げる場所というわけではありません。


まず、羽田空港のタクシー乗り場の場合には、ナンバーによって入れる日と入れない日が決まっています。あまりタクシーが集中してしまうと混雑をまねくためよろしくないということでしょう。そこが2つめの落とし穴で、空港はタクシードライバーの待ち時間が長い傾向があります。私自身は空港営業をしたことがないのですが、時間帯によっては3〜4時間待つこともあると聞いたことがあります。もしかしたらもっと長いこともあるかもしれません。というのも空港からはシャトルバスと電車を使う方が多く、タクシーを使う方は多くないからです。


乗務20時間の間に何回営業できるかはわからないのですが、10回とした場合、平均7000円が正しいとすれば7万円の売上です。これは決して悪い水準ではありません。一方で、7回くらいに落ち込んでしまうと49000円とあまりよくない営業成績です。回数を増やせばいいのですが、一度空港を出た後、また空港に戻ってくるのに時間がかかります。また、空港へ向かう道は手を上げるお客さまがあまり多くないので、空港以外で営業できる可能性が低い。そういった事情から、単価が高いからといって一番稼げるわけではないことがわかります。


細かい点ですが、クラウンやジャパンタクシーなどは、「人間」を運ぶことを重視したタクシーです。つまり、大荷物を抱えていない4人までのお客さまがターゲットとなります。キャリケースを抱えたお客さまが3名だとトランクにも収まらないことから、荷物がないか、2名までというところでしょうか。そうなると、大抵はシャトルバスや電車を利用するほうがはるかに安くなるため、そもそも需要があまりありません。


一方で、アルファードなどの7人乗りの車の場合には、お客さまもたくさん乗れますし、荷物もたくさん載せられます。こういう場合には、シャトルバスや電車よりも安くはならなかったとしても、door to doorで移動できる利便性を考えると、タクシーを利用するお客さまは多いと思います。アルファードが担当車の場合には、空港営業を試してみるのもいいのかなと思っていますが、アルファードは台数が少ない会社が多いので、担当車になることはあまりないと考えたほうがいいかもしれません。


 夜の銀座はタクシー営業の華

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夜の銀座も長距離が出やすいポイントです。平日の22時から翌1時は乗車禁止区域が設けられ、銀座の中心部ではタクシー営業が制限されます。この時間帯については、タクシー乗り場か、無線で呼んだタクシー以外は乗られなくなります。


無線の場合でも、専用乗り場がありますので、指定のポイント以外では営業ができないという点では同じです。この乗車禁止空域についての違反は、ドライバーと会社の双方に重いペナルティが課せられるため、絶対に破ってはいけません。夜の銀座はこういった状況であるため、タクシー乗り場に並ぶのが唯一の営業方法になります。


そんな銀座はロングについてはかなり出やすいエリアだといえます。銀座で飲んでいるお客さまは、比較的高齢で郊外に一軒家を構えている方が多かった印象があります。そのため、銀座からタクシーで帰宅する場合には1万円以上になる可能性が高い。もちろん中には渋谷や新宿などの繁華街へと移動する方もいます。この場合には、運賃自体は控えめですが、そのまま現地で営業できるというメリットがあります。


コロナ禍を経て夜の銀座は多少寂しい状況になっていますが、それでも日本屈指の繁華街であることには代わりがありません。並んでいるだけで長距離のお客さまを狙いやすいということもあり、毎晩同じ乗り場にいるドライバーも多い。一方で、長時間並ぶ割には、長距離のお客さまが出ないと嘆くドライバーも増えてきています。夜の銀座がタクシードライバーにとって稼げる場所であるのかについては、コロナ禍の状況や、景気などの影響を受けて変動していくものと思われます。


 まとめ


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  • ターミナル駅や新幹線や特急が泊まる駅の乗り場は狙い目
  • 空港はロングが多発するものの数を稼ぎづらいので注意
  • 夜の銀座には夢とロマンがある


長距離が出やすいタクシー乗り場を見てきました。乗り場に並ぶのはどうしても効率は悪くなります。というのも、確実に待ち時間が発生することと、乗り場まで戻る必要があるため、どうしても時間効率は悪くなるからです。


一番効率がいいのは、流し営業して、お客さまを降ろした先でもそのまま営業することです。ただ、こういった営業だけでは疲れてくることもあります。なので、1乗務の中でうまく乗り場に着ける時間を作って、一日の営業を効率化していくことが大切です。

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