タクシーで高収入を得られる人の共通点

公開日:2024/12/28 00:10


タクシー業界は基本的には歩合制となっています。つまり、売上をあげた分、収入が高くなるという仕組みです。では、自分が実際にタクシードライバーになった場合、どのくらい稼げられるでしょうか。著者自身も、タクシードライバーになってみるまでどのくらい稼げるのかは、まったくわかっていませんでした。そして、研修のときに聞かされたのが、月収40~50万円は普通にやっていればいけるというお話でした。半信半疑で初めて見ましたが、それは嘘ではないことがわかりました。ただし、条件はあります。誰にでもできることではありますが、うまくいかないケースは多々あります。この記事では、タクシードライバーで高収入を得られる人の共通点をお伝えしようと思います。


その前にタクシードライバーの給与システムをお伝えしようと思います。詳しくみていくとややこしいのですが、シンプルに捉えると、売上額の50~65%が収入となります。この割合を歩率といいます。歩率は、契約によって異なります。つまり、会社によって、あるいはドライバーのランクによって異なるわけです。大まかに言うと、売上が大きいドライバーのほうが歩率は高くなる傾向があります。


逆に、売上額が小さい場合は歩率は悪くなっていきます。会社によっては足切りというシステムがあり、一定以上の売上に到達しない場合には、歩率が大幅に下がるということがあります。これは、会社の方で損益分岐点を設定して、どのくらい売上が取れれば会社の利益を確保できるのかを計算しているということでしょう。


売上の多寡にかかわらず、タクシーの車両を維持する費用は変わらないため、どうせやるならば売上が大きいほうがいいわけです。ドライバーが売上をあげるためのインセンティブにもなるため、売上をあげたほうが有利になるという仕組みはどの会社も変わらないはずです。少し具体的にしたほうがわかりやすいので、歩率は60%で計算しましょう。


売上に歩率をかければ収入になるのですが、注意が必要なのは、税抜きで計算することです。どういうことかというと、1100円の売上が立った場合は、消費税を抜いた金額が1000円で、10%は消費税と言うことになります。この消費税については、そのまま国に納める必要があるため、ドライバーの給料にはなりません。税抜きに歩率をかけます。隔日勤務という月に11~13回乗務する場合で計算してみましょう。12回乗れば大体の会社は問題なくて、13回乗ると少しボーナスもあります。


今回は稼ぐ人が対象なので13回で計算しましょう。1乗務あたりの売上が税抜きで8万円稼げるというドライバーの場合はどうなるかです。平均で8万円はエース級の活躍ですが、どの会社でも何人かは大体います。つまり、実際にこの水準のドライバーがいるということです。8万円に60%をかけると4万8000円となります。これが13回分なので62.4万円が月収となります。12月などの極めて需要が大きい月の場合には、平均10万円の売上で、月収78万円というところまで視野に入ります。


もっと稼げるケースということで夜勤の場合を見てみましょう。業界用語では夜日勤といいます。この場合は月に22~24回くらい乗務することが多い。24回の場合で計算してみましょう。夜勤は非常に売上が大きいので平均7万円稼ぐ人もいます。となると1回の収入は4万2000円です。これが月に24回あった場合には月収が100万円を超えます。これを年収に換算すると年収1209万6000円となります。これはあくまでも無遅刻、無欠勤で、1年間最大限の売上を上げ続けた場合です。なかなか大変ですが、天職といえるくらいタクシーに適応しているドライバーはこの成績を出し続けます。正直に言って、彼らはそれだけ稼いでも使う暇はないと思いますが、仕事が楽しくて続けているのだと思います。


というわけでこの記事では、こういった高収入ドライバーになるための条件について書いていこうと思います。



 稼ぐためには稼げる場所でドライバーをしよう


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タクシードライバーという仕事は、どの都道府県でも自由に営業できるわけではありません。どの営業区域でドライバーになるかを決める必要があります。具体的に言うと、どの営業区域にある会社に就職するかを決めるのです。海外ではUberなどのサービスを使って一般のドライバーがお客さまを乗せて営業していることがありますが、日本の場合には2種免許を所持し、営業許可をもっているタクシー会社に所属していないと旅客運送、つまりお客さまを乗せることはできません。従って、どこかの会社に入って正社員になる必要があります。その会社が東京武三地区、すなわち東京23区と三鷹市、武蔵野市なのか、多摩地区なのか、神奈川県なのか、埼玉県なのかによってドライバーの営業区域が変わります。


ここで大切なのが稼げる地域にある会社を選ぶことが大切です。稼ぎが悪い地域ではどれだけ頑張っても高収入を目指すことはできません。もちろん、自分が好きな地域でのんびり仕事がしたいという方もいますし、一概に稼ぎだけで仕事の評価はできません。あくまでもこの記事においては収入を重視しているということです。


稼げる都道府県のベスト10を見てみましょう。令和4年のデータをみてみましょう。


1位 大阪 437万1600円

2位 東京 425万9800円

3位 兵庫 399万1100円

4位 神奈川 386万600円

5位 愛知 385万4000円

6位 千葉 365万1400円

7位 滋賀 361万8700円

8位 石川 360万5500円

9位 岡山 354万8800円

10位 福岡 349万8000円


大阪が1位というのは驚きでした。そこでコロナ禍の影響がない平成30年と比較してみました。すると、平成30年は470万円で東京が1位となっており、大阪は約360万円で6位でした。ここから読み取れるのは、まだ東京はコロナ禍から抜け切れてはいないということと、大阪はコロナ禍の影響が抜けてきているということ。あるいは、ドライバーが不足していて、一人当たりの収入が大きくなっているのかもしれません。もう一つ、平成30年には4位であった京都府が、令和4年では12位となっています。額面としては388万円であったものが、342万円まで減少しています。もし仮に令和4年も388万円であったとしたら4位の水準であることから、まだ観光客の減少が響いていることと、観光客が戻れば売上の水準も全国屈指に戻るのではないかという推測ができます。


ただし稼ぎやすい地域については、ドライバーの質を保つためなのか、あるいは敷居を上げるためなのか、地理試験があり、これに合格する必要があります。東京の場合には23区と武蔵野市、三鷹市が対象です。神奈川県では横浜市、三浦市、川崎市、横須賀市で営業するドライバーには地理試験が必要です。大阪は少し複雑なのですが、北ブロック、中ブロック、南ブロックが対象です。他の地域の場合は地理試験がありません。もしも県境に近いところにお住まいで、どこでドライバーをするか悩んでいる場合には、平均収入に加えて、地理試験があるかどうかも参考にするとよいでしょう。


 自己管理ができる 長時間働けられる


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タクシードライバーとして稼ぐために必要なことは、自己管理能力です。体調がなかなか整わず、欠勤を続けてしまうとどうしても稼げません。これはもちろん、どの仕事でもそうなのですが、タクシーの場合にはその傾向が顕著です。ドライバーは社会的身分が保障された正社員なので、法令通りに有給休暇を取得できます。しかし、正直言って非常に使いづらいように思いました。


どうしてかというと、タクシードライバーの歩率は、売上高によって変わってくることがあるため、有休を使うと歩率が下がり、給料も下がってしまう傾向がありました。これは、筆者が務めていた会社だけなのかもしれませんが、タクシー会社ではコンスタントに乗務し続けることに対してインセンティブを設けていることがあります。有休を使うとインセンティブがなくなってしまうため、結果として収入が減りました。もっとも、これも使い方次第で、体調不良によって突発的に有休を使うようなことがあると収入が減ってしまうことはありえますが、会社のシステムをしっかりと把握した上で計画的に有休を取っていけば問題はないはずです。有給をうまく使うドライバーは、まとめて8日分を使うなどしてバカンスに行っていました。


タクシードライバーの勤務日数は特殊なので、8日まとめて有休を取ると14日連続で休みを取れます。有給休暇の数は、会社にかかわらず法律で決まっています。6年半以上働いた場合には20日の有給がつくことから、このような長期休暇を年に2回取れます。このあたりも、しっかりと自己管理している人の特典といえます。会社によっては有休を取りたいけど、人員が足りなくて取れないということもありますが、タクシー会社の場合、タクシーが余ることはあったとしてもそれ以外では問題ないため、そういう意味では有休が取りやすい業界だと言えます。


タクシードライバーをしていて一番苦労するのが生活のリズムです。人間の生活にあわせてシフトが組まれているのではなく、常にタクシーが走り続けられるように組んでいるため、人間のほうに若干の無理が生じます。どういうことかというと、タクシードライバーのシフトで一番多いのは隔日勤務です。この場合、最大で20時間乗務することになります。前後の準備時間を入れて21時間です。3時間の間に洗車などを行ない、次のドライバーが乗ります。つまり24時間でワンセットになっているわけです。こういったシフトを組むと、タクシーの車両を無駄なく走らせられます。タクシー会社は、タクシーを走らせていないと売上があがりません。運行管理者などの内勤スタッフの仕事として重要なのが、空いているタクシーをなるだけ作らないことです。


ちなみに、夜日勤といわれる夜勤の場合には、昼日勤と対になっています。これによって24時間タクシーを走らせられるようになります。隔日勤務は2人を相番としてセットで運用し、日勤は昼と夜をセットで運用するという仕組みになっています。こういった事情から、シフトの融通はやや効きづらい傾向にあります。会社にもよるのですが、精密なシフトを組んでいて、タクシーに空きがでるのを嫌う場合には、シフトに身体を合わせる必要があります。これは仕事としては当たり前といえますが、タクシーの場合は1回の乗務が長く、また、睡眠時間が不規則になりがちなので、疲れがなかなか抜けないという状況が生まれやすい。


そういった状況に陥らないように、しっかりと体調管理することが求められます。そして、無駄な欠勤などないよう、需要が高まる深夜の時間帯に全力で営業し続けられるように体調を整えることがタクシードライバーとして重要です。


 稼ぐための強みがあることが大事!


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タクシードライバーとして稼ぐために重要なのは、自分なりの稼ぎ方があることです。例えば、銀座が得意なドライバーの場合には、22時までは少し休憩して、まずはタクシー乗り場に並びます。平日夜の銀座は22時から翌日1時までの3時間、タクシー乗り場以外ではお客さまを乗せてはいけないことになっています。このルールを破ると、ドライバーと会社の双方に重大なペナルティがあります。1時までは乗り場に並び、1時が近づいてきてからは、新橋や有楽町、東京駅の周辺で稼ぎ、1時になった瞬間に乗禁明けといわれる銀座に押し寄せてお客さんを探します。3時から4時ころまで銀座で営業したあと、帰庫するか、まだ乗務時間があるドライバーは六本木や新宿に行くなり、一度休憩してから朝方の営業するなりします。どの時間帯にどこでどうやって稼ぐのか、そのパターンが複数あって、日によって使い分けられるドライバーが強いです。銀座や赤坂がいい日、六本木がいい日、渋谷や新宿がいい日など、街の状況によって使い分けていきます。


また、お客さまのご要望で移動したあと、すぐに次の営業プランを描けるかも大事です。「行った先営業」などと言うことがあるのですが、特定の街、特定の場所でしか稼げない場合には、自分のポイントまで移動する必要があります。そうなるとロスが出てしまいます。つまり、どこへ行っても稼げることが非常に大切です。そして、そのときの状況を読み、高単価のお客さまがいる場所にピンポイントで流していけるかが、稼げるドライバーになる条件です。


 まとめ


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  • 稼ぐためには、まず稼げる地域でドライバーになろう
  • タクシードライバーは自己管理することがとても大事
  • 稼ぐための街の状況に応じて営業スタイルを変えていく必要がある


タクシーで高収入を得られる人の共通点を書いてきました。例外的なやり方で稼いでいるドライバーもいるかもしれませんが、稼いでいる人のほとんどは東京などの大都市で、しっかりと自己管理をしながら、街の状況に応じた営業しています。逆に、稼げないドライバーはどんなときでも東京駅、錦糸町。あるいは赤坂から青山あたりを流すなどとパターンが決まっています。


そのため、何らかの事情で、その営業区域が不調な場合には売上が落ち、それに伴って収入が下がってしまいます。もちろん、東京駅の八重洲口乗り場などコンスタントに稼ぎやすい場所もあります。しかし、そういった場所に、タクシーが集中してしまうタイミングもあります。そんなときに何も考えずに乗り場に並ぶと、並んでいるうちに時間を浪費してしまうことがあります。こういう場合には、例えばですが、銀座のほうに流して行くなり、日本橋から人形町のほうに抜けて行くなり、その場に応じた営業していくことが大切です。タクシードライバーは、誰でもある程度ならば稼げますが、安定して高収入を得ようと思うと、知力、体力、経験が問われる仕事です。

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