タクシードライバーは芸能人や有名人に会えるのか

公開日:2024/09/18 01:09


芸能人が出演しているテレビやラジオ、YouTube番組などでタクシーのことが話題になることがよくあります。芸能人は生活している世界が違うのではないかと思いますが、庶民との接点となるのがタクシーなのかもしれません。タクシーの話題は、庶民も芸能人も共通で理解できるため、親近感をもってもらうためにもタクシーの話題を出すのは適切なのでしょう。


逆に、港区のシークレットバーとか、高級ラウンジなどの話をされても、あまり理解されないと思います。芸能人は自己演出してナンボというところがあるのでしょう。だから庶民アピールがしたいのですが、人気がある状況で電車に乗ることはあまり多くないのでしょう。そのため、タクシーの話題を出すのではないかと思います。


お笑い芸人のネタでもタクシーはよく出てきます。サンドウィッチマンにもありますし、中川家、ラバーガール、コマンダンテ、Non Style、かまいたち、ザ・ギース、古くはドリフターズのネタにもタクシーは出てきます。千鳥のネタは見たことがあるかもしれません。


「いらっしゃいませー、安全交通のヨダレダコです。本日は安全運転で行かせていただきます!」


というようなフレーズをボケ担当の大悟さんが言うところからはじまる有名なネタです。こういうネタを思いつくということは、千鳥のお二人も日常的にタクシーに乗っているのだろうと思います。


さて、この記事で話題にしたいのが、タクシードライバーしていると実際に芸能人に出会えるのかどうかです。芸能人に会いたいという目的でタクシードライバーになろうとする方もいるかもしれませんが、それは実際には不可能な話なのか、それともよくある話なのか、気になる方もいると思います。



 本当に芸能人や有名人に出会えるのか

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結論から言うと、かなり頻繁に出会えます。私の場合でも10件くらいは芸能人や有名人をお乗せしたことがあります。もしかしたら有名人なのかもしれないというケースを入れるともっと多いのですが、ある程度までいくと、どれだけ有名人に詳しいかということが問われるようになります。知らない場合には誰だかわからないからです。一度渋谷でヒップホップスタイルの方と、ディレクターのような方に乗っていただいたことがあります。ヒップホップスタイルのお客さまは、「今のロケでさー」というように撮影の仕事があったことをしきりに大声で言います。


となると、こちらは誰か有名な方なのかなと思い、バックミラーからこっそりお顔を見ます。しかし、誰なのかさっぱりわかりません。思えばヒップホップ関係の方で知っている人は限られているため、その筋の業界人であることは何となくわかっても誰なのかはわからないわけです。


世の中にはダウンタウンの松本人志さんであっても顔がわからない人もいるようです。しかし、50人中1人くらいの割合でしょう。一方で、かなり有名なタレントさんでも2人に1人くらいは誰だかわからないということはあるのだろうと思います。


もちろん、明石家さんまさんとか、タモリさんのような超有名人に乗っていただいたらわかると思います。しかし、もしかしたらこのクラスの芸能人は自家用車やお抱え運転手を雇って移動しているかもしれません。有名人以上に多いのが、有名っぽいけど誰だかわからないお客さまです。特にテレビ局の周辺にはそういう方が多い。


そんな話だけだと面白くないと思うので実際にどういう有名人の方に乗っていただいたのかを書いていこうと思います。もちろん、お客さまのプライバシーを明かすわけにはいかないので、特定されないようにフェイク情報をまぜることをお許しください。


まずは、某テレビ局までいったときのこと。お客さまを降ろしたあと、局の中から手を上げて走ってくる方がいました。すごく綺麗な方なので明らかに一般人ではありません。どなただろうと思うと女子アナウンサーの方でした。すごくクリアな声で行き先を告げてもらったことをよく覚えています。


あるときはお笑い芸人の方とマネージャーさんが一緒に手を上げて乗ってくれました。お笑い芸人さんはお疲れだったようで車内ではずっと眠っていました。降りる際に、その芸人さんのことが好きでずっと見ていましたと伝えると、すごく嬉しそうにしてくれたのが印象的でした。


あるときはご自宅から出てきた大御所俳優さんと付き人さんが手を上げてそのまま乗って下さいました。後部座席にどっしりと座る俳優さんの姿はまさしく映画の世界そのものでした。


こういった経験に価値を感じる方にとって、タクシードライバーは非常に面白い仕事だと思います。他のドライバーの話を聞いてみると、本当か嘘かはわからないものの、色々な有名人を乗せた話をしてくれます。中にはとてもうらやましい話もあります。


ただし、気をつけないといけないのは、お客さまのプライバシーをネットに書いたり、人に話したりするのは絶対にしてはいけないということです。具体的に禁止している法律があるわけではないと思いますが、会社からは強く怒られます。特にネットに書くのは厳禁です。もちろん、ドライバー仲間同士で誰々に乗っていただいたという雑談くらいはすることがあります。もちろんこっそりです。ただ、他のドライバーも心得ていてどこで乗せて、どこで下ろしたというような情報は仲のいい同僚にも言いません。


どうしてかというとタクシードライバーは、お客さまのプライバシーをかなり深いところまで知ってしまうことがあるからです。自宅の位置、交友関係、ときには恋愛関係を知ってしまうこともあります。マスコミ業界関係者が大声で外には出せないような話をしていることもあります。こういうことはその場でさっさと忘れてしまうのが一番です。


万一覚えていて人に話すとろくなことがありません。こういった体験がしたいという理由でタクシーをはじめるのは悪いことだとは思いません。仕事をしながら非日常が味わえるというのはタクシーの面白いところだと思うからです。しかし、それは自分の中だけに収めておくということが職業倫理として重要です。


 有名人出没スポットを狙う

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もしも有名人のお客さまを積極的に狙って、想い出をたくさん作りたいという場合の営業方法を考えてみましょう。そんな狙いをしてもあまり得にはならない……、ということもなくて実は案外良い営業方法です。


まず有名人や芸能人がどこにいるのかというのを考えてみましょう。もうこれは明瞭で港区です。港区は3歩歩けば芸能人に当たる……、とまでは流石にいきませんが、非常に遭遇率が高い。特に深夜や早朝に、六本木から西麻布のあたりを流していると芸能人やマスコミ関係者によく利用していただくことになります。テレビやラジオで出てくるシークレットの会員制飲食店などがこのあたりにあるからです。芸能人は顔が広く認知されているため、オープンな飲食店では落ち着かないようです。そのため個室があるお店を利用したり、通常のお客さんを案内していないカウンターのみのお店を利用したりします。具体的にそれがどこなのかまではわからないのですが、路地から出てきて手を上げた方が芸能人ということはよくあります。特に西麻布のエリアには多いようです。


西麻布というのは、六本木通りと外苑西通りの交差点付近の地名です。立体交差があるので、薄暗く景観が良いとは言えないところなのですが、そういうところもお忍びで飲みたい芸能人にはいいのでしょう。西には渋谷、東には六本木、北には青山、南には広尾と高級住宅街と繁華街のど真ん中にあります。少しだけ離れた恵比寿駅からタクシーで西麻布まで行く方も多い。同じくらいの距離に、白金、赤坂、虎ノ門、赤羽橋、外苑前、原宿などがあります。東京の中心地はどこなのかという話をすると、交通の面では東京駅や新宿が上げられることが多いと思います。


一方で、平均所得が高いエリアというと港区で、その中心となるのが西麻布です。西麻布の恐ろしいところは電車では基本的にいけないことです。もちろん、広尾や六本木から歩くことはできますが、そこそこの距離があります。おおよそ1キロ程度で、徒歩で15分くらいです。そして、このあたりの方は短距離でも歩くことはしないことが多い。渋谷や銀座のように歩き回るのが楽しい街ではないこともあってか、六本木から西麻布、西麻布から広尾、というような移動をする方はとても多い。タクシーは足代わりに使われているわけです。


それではロングが出ないのかというとそんなことはない。芸能人と一緒に飲んでいるプロデューサーやスポンサーの社長が、郊外に邸宅を構えていて、そこまでタクシーで帰るのはよくある話です。ロングの出る多さでは、都内でも屈指のスポットだと言えます。西麻布は渋谷や六本木などと比べると、観光ガイドなどでの扱いは小さい傾向にあります。だからこそ、芸能人にとっては心地のいい場所なのかもしれません。


 有名人よりもロング客が嬉しい

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「有名人を乗せられた!!」と喜んで自慢しているタクシードライバーがどのくらいいるかというと、知る限りではほとんどいません。話すことがなくなったときに、「そういえば最近芸能人見ました?」と聞くと、そのときに出てくるくらいのものです。1回の乗務で30組くらいのお客さまと出会いますし、すぐに忘れてしまうからです。それに、芸能人のお客さまがお金になるかというとまったくそういうことはありません。というのも、芸能人の方はテレビ局へのアクセスが良い都心部に住んでいることが多いからです。


ホテルを予約する場合でも、六本木や新宿など、テレビ局や劇場などに近いところを選ぶはずです。実際に『アメトーーク!』という番組で、ホテルアイビス芸人という特集をしていました。ホテルアイビスというのは、六本木にあるビジネスホテルで、関西から関東へと出てきた芸人さんが泊まることの多かったホテルだそうです。


六本木は港区の中心にあるので、テレビ局へのアクセスがいい。日本テレビは新橋あるいは汐留、テレビ朝日とテレビ東京は六本木、TBSは赤坂にあります。NHKは渋谷ですが港区の隣です。その他ラジオ局も周辺にあることから、芸能人が宿泊するには良いロケーションと言えます。また、芸能関係の方々が仕事上がりに飲み会をするのもこのあたりが多いため、そういう意味でも都合が良いわけです。


というわけで芸能人の方に乗っていただいた場合に嬉しさはあるのですが、港区から港区という短距離の移動が多いのも事実です。遠方のロケ先まで行ってくれると最高なのですが、そういう場合はロケバスが用意されているのでしょう。


さて、タクシードライバーが嬉しいと言えばロングのお客さまです。六本木でお乗せしたお客さまに「住所をいれてもらっていいですか。埼玉県、春日部市……」心の中でガッツポーズする瞬間です。春日部まで行くとなると50kmほど距離があるので2万円前後の売上が期待できます。高速に乗れるので、時間も1時間程度です。戻ってくる時間を入れて2時間とした場合時給換算するといくらになるかというと……。売上2万円のうち6割が収入とすると1万2000円が自分の収入に換算されます。


ということは、時給に換算すると6000円です。これは非常に割が良い仕事です。タクシードライバーにとって嬉しいのは、1万円以上の売上が連発することです。時給5000円換算の仕事を8時間続けられれば、4万円の収入です。というわけで、タクシードライバーをやっていると、芸能人に会えた喜びよりも、日々の仕事で歩合性の給金が上がるほうが嬉しいという生々しい結論になりました。


 まとめ


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  • タクシードライバーは芸能人によく会う!
  • 芸能人に会いたかったら港区がお勧め!
  • 芸能人よりも嬉しいのがロングの移動するお客さま


タクシードライバーは芸能人に会いやすいのですが、それをモチベーションに仕事を頑張っているという人はあまり見たことがありません。やはりお仕事でタクシーをやっているので、お金になるのが一番だからです。


一方で、テレビなどで顔を知っているお客さまに乗っていただけるのは、長時間働いているときの清涼剤のように機能することもあります。芸能人のお客さま以外にも色々な方がいます。タクシードライバーは職歴が長くなると、摩訶不思議な経験が増えていく仕事です。

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