埼玉県、千葉県、神奈川県のタクシードライバーは稼げない?

公開日:2024/09/19 09:37


「タクシードライバーで稼ぐなら東京23区」と聞いたことがある方も多いと思います。やはり首都東京は、人口も多く、経済規模も大きい。タクシードライバーの収入は売上額に歩率をかける歩合性であるため、売上が大きい都市のほうが稼げるということになります。そういう意味で東京23区が一番です。タクシー業界の用語でいうと東京武三地区といいます。東京都23区と武蔵野市、三鷹市が営業エリアです。東京の場合には、他にも4つ営業地区があります。


北多摩交通圏

狛江市、立川市、府中市、国立市、調布市、小金井市、国分寺市、小平市、西東京市、昭島市、東大和市、武蔵村山市、東村山市、清瀬市および東久留米市


南多摩交通圏

日野市、稲城市、町田市、八王子市、多摩市


西多摩交通圏

あきる野市、福生市、羽村市、青梅市、西多摩郡瑞穂町、多磨町、檜原村、日の出町


島しょ区域

島ごと


この中で稼げるのは武三地区ですが、調べてみたところ交通圏ごとの収入の違いはありませんでした。なので東京の営業地区すべてを含めた統計ですが、タクシードライバーの平均収入は、令和4年のデータで、月収34万7000円、年収は417万2400円です。この数字はまだコロナの影響があると思われます。前年度から平均年収は89万円も増えていますが、令和5年はもう少し良化するかもしれません。コロナ禍の影響がほとんどない令和元年においては、平均月収は39万3200円、年収は471万8400円です。


この数字は東京すべてひっくるめた平均だと考えると、武三地区はもう少し大きな数字になるはずです。さらにいうと、武三地区でも、売上を求めずにローカル営業するドライバーも多い。ローカル営業というのは、それほど需要が大きくない駅でずっとお客さまを待つドライバーです。彼らの営業収入は一日3万円程度だと聞いたことがあります。その場合には、月の営業収入は36万円で、月収は歩率60%とした場合には、21万6000円です。年収に換算すると259万2000円です。高齢のドライバーも多いため年収300万円前後ということはよくあります。つまり、東京武三地区のタクシードライバーは二極化しているわけです。ローカルであまり稼がないドライバーと、都心に赴いてガンガン稼ぐドライバーです。東京で稼いでいるドライバーは年収500~600万円くらいが多く、人によっては800万円近いというのが、肌感としてあります。


さて、この文章の趣旨は、埼玉県、千葉県、神奈川県のドライバーがどれだけ稼げるのかについてです。著者は東京武三地区のドライバーであるため、実践経験はないのですが、それでも東京近郊でタクシーに乗るときは営業収入の状況などを聞くようにしています。統計情報もあるので、それを見ながら、東京近郊の3県がどれだけ稼げるのかをみていきましょう。



 埼玉県のタクシードライバーは稼げるのか

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稼げるかどうかをみる際に、埼玉県のタクシードライバー平均収入のデータがあるので、それに基づいてみてみましょう。すると、直近の令和4年に関しては、月収は25万7000円で年収にすると308万4000円となっています。コロナ禍の影響もあるかもしれないので、まだ影響が現れていない令和元年のー他をみてみると、月収25万2100円、年収302万5200円とほとんど同じ水準です。


埼玉県に関してはコロナ前の収入の水準に戻ってきます。一方で、そもそもの所得水準はあまり高くないということもいえます。令和元年の東京都は、年収にすると471万円が平均なので、それに比べると大きな差があります。この数字だけみると埼玉県のタクシードライバーは稼げないといえますが、この記事ではもう少し深くみていきます。


稼ぐドライバーと稼がないドライバーの違いは、繁華街やオフィス街などに、需要に合わせて移動するかどうかです。埼玉県の場合でも、繁華街はありますので、そこを狙っていくドライバーはもう少し所得水準が高いはずです。一方で、埼玉県の場合には、住宅街にある駅にタクシーを付け続けるドライバーが多いのでしょう。こういったドライバーは、どうしても売上が高くなりません。これは東京であっても同じで、年収300万円以下、月収にすると20万円強になるということは冒頭で書いた通りです。埼玉県の場合には、こういう営業しているドライバーが多いことは見て取れます。一方で、夜から朝方にかけて繁華街を回って稼ぐドライバーも存在しています。


埼玉県で飲食店が多い街はどこかというと、市区町村別にすると川口市が400店舗ほど、川越市が300店舗、さいたま市大宮区が250店舗です。これはどのくらいの数なのでしょうか。東京都の場合でいうと港区や新宿区が1250店舗程度です。ちなみに江戸川区でも450店舗ありますので、それよりも少ない水準だといえます。もっとも、この数字はすべての飲食店を表しており、お客さまがタクシーをご利用になることが多い0時過ぎまで空いている飲食店については、また別に考える必要があります。


それでみてみると、夜の飲食店が多いのはまず、さいたま市の大宮区です。バーやクラブ、スナックやキャバクラなども多数ありますし、風俗店街もあります。そのため、夜遅くまで飲んでいる方がいて、タクシーで帰宅される場合もあることでしょう。大宮は埼玉県における交通の要衝のため、埼玉県中から人が集まっています。逆に、東京や神奈川などの他県から飲みに来る人はそれほど多くないと思います。そう考えると、長距離移動するお客さまの移動距離は、東京に比べて短めになる傾向があるはずです。こういったところも平均収入が上がらない理由になると思います。


西川口も繁華街が多く、深夜から明け方まで賑わいをみせています。著者は行ったことがないので詳しくはないのですが、ちょっとした歌舞伎町のようになっているようです。川越駅も飲食店が多く、タクシーを利用した際、運転手に聞いてみたところ、コロナ禍ではないときには深夜のご利用者もそこそこにいるとのことでした。


埼玉県でタクシードライバーをやる場合には、川越か、大宮と西川口の周辺をメインの営業エリアに定めることで収入はある程度高くなることが想定できます。特に大宮や浦和、さいたま新都心はオフィス街としても機能しているため、昼の利用も見込めます。


 千葉県のタクシードライバーは稼げるのか

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次に千葉県についてみてみましょう。令和4年の平均月収は29万200円、年収に換算すると348万2400円です。コロナ禍の影響がなかったと想定できる令和元年の場合には、31万4300円で、年収は377万1600円です。令和元年を東京都と比較すると月収では約8万円、年収にすると約94万円の差があります。埼玉県と比較した場合には、月収でいうと6万円、年収にすると75万円も高い水準です。ここからわかることは、千葉県は東京よりも稼げないが、埼玉県よりは稼げるということです。もう一つは、コロナ禍の前よりも収入は低い水準となっていることから、まだコロナ禍から回復しきっていないといえます。


埼玉県と同様に千葉県のドライバーがどのように稼いでいるかもみてみましょう。埼玉県との違いという意味で考えると非常に大きいのが、成田空港が存在していることです。成田空港は、ご存じの通り国内最大の空港です。コロナ禍で国際線の利用者は落ち込んでいたようですが、コロナ禍の収束と共に利用者は回復してきたようです。タクシードライバーにとって最も素晴らしい営業先は空港です。埼玉県には空港がないというのも、収入の差に響いているかもしれません。空港からタクシーに乗る方は長距離を移動することが多い。どういう方がタクシーに乗るかを考えてみましょう。まず、近くに住んでいて、自宅の前まで行くというケースもあります。例えば成田市のお客さまなどです。こういうケースもあるはずですが、極めて少数ではないかと思います。


それ以外の方は、電車かシャトルバスを利用することでしょう。シャトルバスを利用した場合、東京まででも2000円程度で行けます。電車の場合は、荷物を持ち運ぶ手間が増えますが、もう少し安いかもしれません。成田エクスプレスなどの特急を使う手もあると思います。そんな中でタクシーを使う方は、荷物が多い方か、一定以上の経費が使えるビジネスマンだと想定できます。荷物が多い場合には、電車に乗るのは困難ですし、バスも苦労するはずです。であれば最初からアルファードなどの大きめの車を見つけて荷物を積んでしまうほうが楽に移動できるわけです。


日本人の場合には、キャリーケース一つに荷物をまとめる場合が多いように思いますが、どういうわけなのかヨーロッパから来る方は、キャリーケースを一人で5,6個持っていることもあります。そういった場合には電車やバスでの移動は困難でしょう。東京駅あたりまでタクシーで移動する場合、料金は2万円程度です。海外のガイドブックにも東京のタクシーは高いと記載されているようですが、荷物が多くて3人いた場合には選択肢に入ってくるのではないでしょうか。他にも、ビジネスクラスで移動するような層は、タクシーで移動することに躊躇はないでしょう。ビジネスクラスのフライトは50万円以上するからです。そういった、通常生活しているだけでは出会うことがない、エグゼグティブをお客さまにできるのが空港という営業先です。


飲食店の数をみてみると、船橋市が400店、松戸市が350店、千葉市中央区が350店、柏市300店と埼玉県よりも、まとまっている印象です。そういう意味でも、埼玉よりも稼ぎやすい傾向はあるかもしれません。実際に営業したときにどの程度ロングがでるのかはわかりませんが、千葉県といえば東京ディズニーランドがあります。この周辺から空港まではバスも出ているとは思いますが、疲れ果ててタクシーを使うお客さまもいるかもしれません。


 神奈川県のタクシードライバーは稼げるのか


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最後は神奈川県をみてみましょう。令和4年の平均収入は、月収30万1200円、年収にすると361万4400円です。コロナ禍の影響がまだないと想定できる令和元年については、月収32万6400円、年収391万6800円でした。令和元年において東京と比較した場合月収については6万7千円低い水準です。一方で千葉県および埼玉県よりは上の水準でした。東京以外で稼げるのは近県では神奈川県だといえます。


飲食店の数をみてみると、横浜市中区については約630店舗です。渋谷区の850店舗よりは少ないですが、かなり高い水準だといえます。横浜市については、西区に250店舗、港北区に220店舗、鶴見区に180店舗と、神奈川区に180店舗、青葉区に150店舗、南区に130店舗と、市全体でいうと1740店舗です。新宿区が1250店舗であることを考えると、横浜市がどれだけ大きな存在であるかがわかります。もっとも横浜市の面積は437.4㎢もあり、新宿区は18.23㎢しかありません。なので、密度を考えると比較するべくもないのですが、地方都市として考えた場合、横浜は非常に巨大です。


横浜の中心地や、野毛、関内、みなとみらいなどにある繁華街から移動するお客さまに乗って頂くこともできますし、昼間はビジネスタウンとして機能しているので、ずっと横浜にいたまま稼げます。他に川崎市、横須賀市、藤沢市も大きく売上が期待できます。他にも鎌倉市は観光地となっていますし、駅周辺から自宅までの足代わりにタクシーを利用する方が多いのだそうです。なので、単価は低くても連続して営業ができるので稼げると聞きました。


 まとめ


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  • 一番稼げるのは東京都だが、東京でものんびりとした営業をするドライバーは多い
  • 埼玉県は東京近郊の3県(千葉・神奈川・埼玉)では最も収入が低かった
  • 千葉県は、成田空港やディズニーランドの効果もあってか2番目であった
  • 神奈川県は、3県で最も高い水準であった


埼玉県、千葉県、神奈川県のタクシードライバーの収入をみてきました。統計資料をみる前は3県とも同じくらいかなと思っていたのですが、埼玉県だけが頭一つ低いという結果になったのは意外でした。他の2県よりも観光客が少ないことや、ベッドタウンとしての色合いもより濃いことが原因かもしれません。東京の中心部でタクシードライバーになるためには、地理試験に合格しなければいけないため、道を覚えるのがつらいので隣県でドライバーになるという方もいるようです。


実際に隣県でドライバーに話を聞くと「東京のドライバーなんてすごい!地理試験ありますよね!」というような反応されることがあるので、きっとそういう傾向もあるのでしょう。タクシードライバーは自分の売上で収入が変わる仕事であるため、地理を覚え、お客さんが現れそうなポイントを執拗に流していくことが求められます。売上に対するこだわりの大きいドライバーの比率も、平均収入の統計には表れているように思います。

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